2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K18131
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大坂 泰斗 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (70782887)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 強度自己相関測定 / パルス幅計測 / パルス時間波形制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では,X線レーザーパルスの時間波形の精密測定,制御および揺らぎ計測への応用を目的としている.本年度では,第一段階としてX線ストリークカメラでは測定不可能なフェムト秒領域のX線レーザーパルス幅の測定手法の実証を主として実施した.測定手法としては,可視光域で広く実施されている”強度自己相関法”によるパルス幅計測を採用した.本手法は本申請課題以前にすでに同研究グループにより実証されているが,長大な測定時間や精度不足等の問題があった.本申請課題では,ダイヤモンド単結晶を非線形媒質として利用し,第二高調波発生を信号としたバックグラウンドフリーな計測をターゲットとし,本年度においてその実証実験を実施した.強度自己相関法では測定対象とするレーザーパルスを自己相関器により2つに分割し,時間差を制御した後非線形媒質へ照射,非線形信号の時間差依存性を測定する.その際,各々の分割パルスが発生させる非線形信号がバックグラウンドとして計測されることで,測定精度の劣化をもたらす.通常,分割パルス間に大きな角度差を設け,各々のパルス単体では非線形信号が発生しないようにするが,角度差ゆえの時間分解能の劣化が懸念事項として挙げられる.X線第二高調波発生では,可視光域と比較し位相整合条件が2~3桁厳しく,非常に小さな角度差でもバックグラウンドを除去できるため,時間分解能の劣化なくバックグラウンドフリーな測定が可能となる.SACLAにおいて実証実験を実施し,10 keVのX線レーザーパルスに対してバックグラウンドをほぼ完全に除去し,自己相関関数の測定に成功した.また,X線分光器のエネルギー分解能を変えることで,X線レーザーのパルス幅が変化することも実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では,バックグラウンドフリーな強度自己相関法によるX線レーザーパルス幅の高精度計測を主目的としていた.本目的は問題なく実施され,世界で初めてX線レーザーパルスのパルス幅を高精度に計測することに成功している.さらに,次年度以降のターゲットであるパルス時間波形の制御にも踏み込むことができた.パルス時間幅とバンド幅との間にはフーリエ変換の関係があり,バンド幅を変えることでパルス幅を制御出来る可能性があるが,X線領域では実証されていなかった.本年度実証した,バックグラウンドフリー強度自己相関法により,X線分光器の種類(バンド幅)を変えることで,パルス幅が変化することも実証することができており,当初想定していた計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では,X線分光器を変えることで,パルス幅が変化することまで実証できている.しかし,本申請課題の目的はより精密な時間波形の制御であり,本年度ではそこまでの実証はできていない.より実験条件を最適化させ,X線分光器により時間波形の制御おもび安定化が可能であることを実証していく.合わせて,未だ有効な手法が実証されていない揺らぎ計測へとつなげるため,共同研究者とともに揺らぎ計測の実用化へ向けた基礎研究をすすめる予定である.
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Causes of Carryover |
購入予定であったダイヤモンド単結晶が,供給元の都合により入手困難な状況であった.その代替として,本年度ではシリコンメンブレンを購入した.差額分は次年度以降,より高度な測定環境の構築のために利用する.
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