2023 Fiscal Year Research-status Report
核膜を場にした脂質代謝機構による核内脂性環境の調節機序の解明
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22K19499
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
森 雅樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10602625)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな脂質制御機構として特定した分子群を指標にイメージング解析を実施し、細胞内での分子輸送について解析した。脂質は中性脂質や脂肪酸をそれぞれ特異的に染色するBodipy色素やフォスファチジルコリンを染色する蛍光色素を用いた。その結果、グルコース欠乏や糖代謝経路阻害に際して特定された分子のすみやかな細胞内移行が惹起されることがわかった。プロテオミクスを使い、特定分子が物理的相互作用を行う標的分子をそれぞれの条件において網羅探索した。その結果として得られた物理的相互作用する候補分子のなかからタンパク質免疫沈降法を通じて個々に検証を行った。検証が得られた分子の1つは脂質の代謝酵素として活性を有するものであり、この酵素分子を対象とした機能阻害実験を行うことにより、新たな脂質代謝分子機構としての役割を解明する段階に進んだ。核内脂肪滴についてはSeipin/Bscl2などの分子がその産生に関わることが知られているが、生成機構の全貌は明らかにされていない。Seipin/Bscl2分子に非依存的に生成される核内脂肪滴の生成機構として、グルコース欠乏やリン脂質代謝酵素が関与する現象を同定した。本現象に伴って生じる変化は、細胞分裂の途絶であり、検証している分子機構が細胞周期制御と密接な関係をもつことが示唆された。このように核膜によって閉じられた核内空間は独自の相を形成しており、その内部では脂質代謝を含む鋭敏な反応応答が見られる。また核内の脂性環境は細胞周期制御と密接に関わっていることが示唆され、分裂期に消失・再構成する核膜によってどのように脂質環境が形成されるのかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定の実験計画は遂行できており、結果の解釈にもとづくさらなる展開に結び付けられている。今後、動物モデル解析系に進行するとともに、論文発表につなげる。
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Strategy for Future Research Activity |
検証を行っている分子をコードする遺伝子変異は小児の発達異常と関連するものであり、この分子が媒介する生体機能がどのようにして小児発達と関連するのか、主に神経機能調節や脳形態形成に着眼して解析を行う。本解析を進めることで、小児の成長発達と本分子との関連を明らかにする。
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