2022 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的乳歯幹細胞モデルによる胆管障害症の病態解明
Project/Area Number |
22K19565
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山座 孝義 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80304814)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 聡一朗 九州大学, 歯学研究院, 助教 (10831985)
|
Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
Keywords | 乳歯幹細胞 / 胆管障害 / 胆道上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆管障害(cholangiopathies, CP)は胆汁排泄障害という共通の臨床症状を示す慢性肝疾患である。すべてのCPは進行性の疾患であるため、胆汁うっ滞や肝線維化を経て、肝不全をきたす。CPの中には原因遺伝子が明らかなものもあるが、未だ原因不明な疾患も数多くある。それゆえ、すべてのCPの発症メカニズムが十分に解明されていない。現在、疾患動物や多能性幹細胞(iPS細胞・ES細胞)によるモデル解析やトランスクリプトーム解析によってCPの原因・発症メカニズム解析が進められている。しかし多岐に渡るCPの原因・発症メカニズムを個々に解析するツールが十分得られていない点が最大の問題点である。 本研究の目的は「乳歯幹細胞を用いて胆道上皮細胞の分化誘導法を開発し、胆管障害特異的乳歯幹細胞による新規ex vivo解析モデルの開発」である。本研究では、乳歯幹細胞による胆管上皮細胞分化培養系の開発し、CPに由来する乳歯幹細胞を樹立し、CPの疾患の病因解析と治療法を確立するための足がかりとなる基盤研究を行う。 成体における胆管上皮細胞への分化機転に次の2つの経路が考えられる。①発生学的知見に基づいた経路、②肝細胞からの分化転換経路。これらの経路に基づき、2通りの培養方法を検討した。①の経路に基づいた培養方法では、組織学的解析において胆道上皮細胞マーカーであるCK19陽性細胞が認められた。②の経路に基づいた培養方法においてもCK19陽性細胞が認められ、平板培養において管腔様の形態形成が認められた。①②の経路に基づいた培養方法と同様に、次年度は遺伝子解析ならびに3次元培養による胆管形態の解析を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は①発生学的知見に基づいた経路および②肝細胞からの分化転換経路に基づき、2通りの培養方法を検討した。①の経路に沿った培養系において、組織学的解析によって胆道上皮細胞マーカーであるCK19陽性細胞が認められた。また、②の経路に沿った培養系においてもCK19陽性細胞が認められ、さらに平板培養において管腔様の形態形成が認められた。今後、①②の経路に沿ったそれぞれの培養系において3次元培養を試み、胆管構造の再現を目指す。 本研究の最終的な目的である胆管障害特異的乳歯幹細胞の分化培養による、胆管障害疾患の病因解析および治療方法の確立に向けて、胆道上皮細胞分化培養系の開発が進んでおり、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
胆管障害は胆汁排泄障害という共通の臨床症状を示す慢性肝疾患であり、胆道上皮細胞の機能異常にのみならず、胆汁の輸送が可能である胆管構造の形成異常が主要な発症メカニズムであると考えられる。したがって、胆管障害の発症メカニズムを解明するためには、胆管構造を形成しうる分化培養系を開発する必要がある。今後の研究の推進方策として、本年度の成果である①発生学的知見に基づいた経路および②肝細胞からの分化転換経路に沿った2通りの分化培養系を基に、3次元培養を用いた胆管構造の再現を目指す。また、胆管構造を形成する分化細胞の胆管上皮細胞分化マーカーの解析を行い、細胞レベルでの分化度を明らかにする。また、分化細胞のビリルビン輸送能・取り込み能を解析し、胆道上皮細胞としての機能を解析する。 十分な分化が確認された分化系を用いて、胆管障害特異的乳歯幹細胞の分化培養を行い、非疾患群の乳歯幹細胞と分化度を比較する。さらに、胆管障害特異的乳歯幹細胞の遺伝子発現解析ならびにエピジェネティック解析を行い、発症の原因となる因子の同定を試みる。
|
Causes of Carryover |
消耗品の納品が年度を跨いだために次年度使用額が生じた。消耗品は分化培養に使用するため、研究計画に大きな変更はない。
|
Research Products
(2 results)