2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive analysis of a human-centered moral system through interdisciplinary studies in bioethics and animal ethics
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22K19961
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高江 可奈子 京都大学, 文学研究科, 研究員 (10849970)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 科学技術倫理 / 生命倫理 / 動物倫理 / 人間中心主義 / 種差別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生命倫理学と動物倫理学によって局所的に論じられてきた人間を中心とする道徳体系の問題を、両領域を横断的に捉えることで包括的に検討するものである。 生命倫理学と動物倫理学はそれぞれ異なる問題設定のもとで展開されてきているため、領域横断的な議論に向けた共通の土台を構築する必要がある。そこで2022年5月、その土台となる議論枠組みについて応用哲学会にて発表。そこでのフィードバックを参考にしつつ、科学技術が倫理的議論に与える影響という観点から生命倫理学と動物倫理学の議論を統合するという着想をもとに研究を進めた(研究遂行手順①と②にあたる)。その成果を2022年9月に日本倫理学会、12月に奈良先端大学院の講義にてそれぞれ発表した。前者の発表では、人間を中心とする道徳体系の問題を論じる上で欠かせない「種差別」の議論が科学技術の進展によってどのように変容するのかを検討し、後者では別々に論じられてきた生命倫理学と動物倫理学の議論を、科学技術の進展に応答する倫理的議論として整理・考察した。これらの研究により、両領域を横断的に捉える土台構築に向けた課題と見通しが明確になった。 以上の研究発表をもとに、2023年1月から現在んに至るまでは投稿論文の執筆に専念している。具体的には、領域横断的な議論体系に向けて、生命倫理学と動物倫理学の議論のほかに、技術哲学の議論を導入する必要があることが判明したため、技術哲学の議論(Mark CoeckelberghとPeter-Paul Verbeekの議論)を今までの研究成果と接合する研究を進めている。これにより、人間中心的な道徳体系の包括的な検討が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の手順は①領域横断的議論の展開、②生命倫理学と動物倫理学の体系的考察、③人間中心的な道徳体系の包括的検討の三段階である。そのうち、①と②の段階をおおむね順調に進めている。研究発表の成果および発表を通して得たフィードバックから、両領域を横断的に捉えるための課題と体系的考察に必要な議論をある程度明らかにできた。 京都大学における研究費使用に関する事務手続きの体制作りにやや時間を要したものの、事務員を一名雇用し関係を構築することができたので、今後の研究をよりスムーズに進めるための準備体制は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの研究発表の成果および発表を通して得たフィードバックをもとに、生命倫理学と動物倫理学に共通する問題設定を提示し、技術哲学者の議論(Mark CoeckelberghとPeter-Paul Verbeekの議論)を応用して問題の分析を試みる予定である。2023年4月に技術哲学研究会にて発表し、5月末までに投稿論文の素案完成を目指す。8月には京都大学にて研究会を開催し、論文のドラフトを発表する予定である。そこで得る知見とフィードバックをもとに、投稿論文を完成させ、秋頃に海外ジャーナルに投稿することを目指す。 海外ジャーナルへの投稿にあたっては、イギリスのオックスフォード大学上廣応用倫理センターのセンター長であったジュリアン・サバレスキュ氏からもフィードバックをいただく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で必要な書籍の価格が残額を超えていたため、次年度に回すことにしたため。
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