2023 Fiscal Year Research-status Report
顕在化した遺跡である古墳が持つ顕著な文化財的価値とその現在的な利活用に関する研究
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22K20069
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
川畑 純 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (60620911)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 古墳 / 古墳群 / 文化財 / 文化遺産 / 整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的の遂行のため、各地方公共団体などが公表している古墳の整備や保存に関する報告書等の文献を収集し、各地で整備が実施された古墳・古墳群の情報収集を継続した。またその情報に基づき、必要と考えたものについては古墳の現地調査を実施した。 現地調査を実施したおもな古墳・古墳群としては角塚古墳(岩手県)、雷神山古墳(宮城県)、柳田布尾山古墳(富山県)、雨の宮古墳群(石川県)、能美古墳群(石川県)、宝塚古墳(三重県)、西条古墳群(兵庫県)、黒塚古墳(奈良県)、玉丘古墳群(兵庫県)、柳井茶臼山古墳(山口県)、三ツ城古墳(広島県)、城山横穴(福岡県)、田主丸大塚古墳(福岡県)、西都原古墳群(宮崎県)、生目古墳群(宮崎県)、唐仁古墳群(鹿児島県)などである。 現地では古墳の調査研究状況と整備状況の関連を確認し、必要に応じて記録等の作成をおこなった。現地での状況確認に際しては、古墳の築造時の情報に関わる遺構表示等だけでなく、古墳の築造後に古墳に加えられた様々な改変の履歴のうち発掘調査等によって判明したものがどのように整備の中で取り入れられているのか(またはいないのか)についての確認をおこない、研究目的を果たすための情報収集に努めた。 これら文献の調査に基づく情報の収集と現地調査による実態の確認、文献等にみられない(あるいは整備等に関する報告書などが刊行されていないものについての)実施状況に関する情報を合わせて、古墳の築造後の履歴が全体的な古墳整備の中でどのように扱われているのかのデータの取りまとめを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古墳の整備に関する文献調査・現地調査は概ね順調に推移しており、それらに関するデータの収集は、全体的な状況を推察するにあたっての一定城状況にまで及びつつある。またその作業を通じて今後調査を継続すべき事例が明確化できるなど、今後の研究の展望についても一定の所見を得つつある。 他方で、こうした古墳の整備状況や文化遺産的価値についてまとめ考察した先行研究がまだまだ不十分であることも明らかとなっており、本研究では当初想定していなかった成果報告書の刊行等を想定すべきとの所感を得ており、今後はそうした作業の要否を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
古墳等についての文献収集や現地調査については概ね一定の成果を挙げつつあるが、今後も継続的に現地調査を実施すべき古墳群もあることから、まずはそれらの調査を継続する。 一方で、現地調査の成果などをまとめた研究成果報告書の刊行の必要性が認識されており、今後はこうした報告書の刊行の要否を慎重に判断し、必要ならば研究成果報告書としてまとめることを検討する。
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Causes of Carryover |
本研究の進展により、古墳築造後の履歴を加味した今日的な文化財的価値を検討する前提となる古墳の整備状況の展開や研究史、現在の状況をまとめた報告等が不在であることの問題が顕在化した。古墳群現地の調査に基づくデータについては、そうした報告書等の形態で公表することで、今後の本分野に関する研究の一層の進展が期待できる。 しかし、そうした状況が判明し、報告書等の刊行の有効性が認識できたのが本研究の2年度目であり報告書刊行費用の確保やそれとバランスの取れた形での必要な調査の実施計画立案など改めての検討が必要となった。そうした計画に基づき、本研究成果をより効果的に次年度以降取りまとめ公表するため、次年度使用額の発生となった。 引き続き本年度実施できなかった古墳現地の調査や資料収集を実施するとともに、本研究の最も適切な成果報告の形を検討し、その検討によって必要と判断された場合には成果報告書の刊行等を行う予定である。
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