進学高校における探究学習の実証的研究：生徒の社会的課題に対する認識に着目して

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 22K20211
• Research Institution: University of Tsukuba
• Principal Investigator: 小原 明恵 筑波大学, 教育推進部, 助教 (40961199)
• Project Period (FY): 2022-08-31 – 2024-03-31
• Keywords: 探究学習 / 経験されたカリキュラム / 参与観察 / エスノグラフィー

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、進学校の高校における社会的課題を扱う探究学習を参与観察し、生徒がどのような事象を取り組む課題として設定し、その課題をどのような問題として認識していくのかというプロセスを明らかにすることである。2022年度に実施予定であった研究は、高校に調査協力依頼を行い、探究学習の授業の参与観察調査を開始することである。
2022年度には、まず、所属組織の研究倫理審査委員会に研究計画を申請し、研究実施の承認を得た。また、研究計画を一部変更し、探究学習の授業の参与観察調査を行う対象校を選定するための事前調査を行った。具体的には、調査対象候補の高校数校の教員に聞き取り調査を行うとともに、探究学習の成果の発表会や探究学習の授業の見学を行った。この事前調査の結果、進学校の中でも探究学習の具体的実施方法、その学校における探究学習導入の経緯や導入期間が異なることが明らかになった。この事前調査の結果をもとに1校を研究調査実施校として選び、調査依頼を行い、2023年度開始直後に調査実施の許可を得ることができた。
当初の研究計画にはなかった事前調査を行ったことにより、調査対象高校の探究学習の特徴がより明確になった。2023年度から実施している探究学習の授業の参与観察調査には、探究学習が社会的課題をどのように考える人材を育成しているのか、また、生徒の探究学習や社会的課題に対する認識が探究学習の実施にどのように影響しているのかを議論するための質的データを得られるという意義がある。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

以下の点で当初予定よりも遅れが生じている。
当初予定では、2022年度中に高校における授業の参与観察調査を開始する予定であった。しかし、2022年度は、「研究実績の概要」で記した通り、所属組織における研究倫理審査委員会において研究計画の承認を得ること、および、当初の研究計画にはなかった参与観察調査を行う対象校を選定するための事前調査を行うことに時間を要したため、高校における授業の参与観察調査を実施するには至らなかった。このため、「やや遅れている」とする。
ただし、高校への調査の打診は2022年度中に行い、2023年4月に高校から調査への協力を得ることができ、授業の参与観察調査を開始することができた。現在は、参与観察調査を順調に進めている。

Strategy for Future Research Activity

2023年度は、調査協力を得ることができた高校において参与観察調査を進める。調査対象校の高校生は、取り組む事象については昨年度までに決めている状態であるため、取り組む課題の設定プロセスについては観察が難しい。しかし、今後、高校生が問いを洗練させる中で、取り組む事象が絞り込まれていくことが予想され、取り組む事象が限定されていくプロセスを観察できる予定である。また、今後は、探究学習において高校生が調査、分析、論文執筆を行うプロセスを観察する予定である。加えて、同じ高校の異なる学科における探究学習との比較も予定している。
研究成果の発表としては、学会報告を少なくとも1回予定している。

Causes of Carryover

正式な参与観察調査を実施するに至らなかったため、旅費の支出が当初の予定よりも少なくなるとともに、録音データの文字起こしにかかる費用、研究協力者への謝金が発生しなかった。また、高校の地理歴史科、公民科教科書の購入を次年度に見送った。このような理由から、次年度使用額が生じた。
今年度は参与観察調査を実施するため、旅費や文字起こしにかかる費用の支出が見込まれる。また、高校教科書の購入を行う予定である。