2023 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上地域農家世帯の所得変動要因と消費内容の変化の関係
Project/Area Number |
22K20604
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Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
尾崎 諒介 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 任期付研究員 (80965244)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 開発途上地域 / 消費行動 / 所得変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、開発途上地域の農村部における栄養不良状態改善に効果的に対処するための方法を考察するため、農家の所得変動要因と消費支出の関係性を整理し、特に栄養状態改善に寄与する財への支出に影響を及ぼし易い所得源の存在を検証することである。開発途上地域の農家は複数の所得源を有することが多く、各所得は発生頻度や安定性などにおいて異なる性質を持つと考えらえれる。複数の所得源の内、栄養改善に寄与する財への支出に影響を与えやすい所得源の存在を明らかにすることは、より効率的な政策設計につながる。
本研究では、世界でも特に栄養不良の問題が深刻であるマダガスカルにおいて、ヴァキナカラチャ県の稲作農家を対象に調査を二度実施した。各調査の際には研究代表者が渡航し、質問票のテストおよび調査員の研修を行った。さらに、既存のデータセットと統合することで、6年間におよぶ約550世帯の所得と消費に関するパネルデータセットを構築した。令和4年度に実施した調査内では、所得源間で特定の消費に異なる影響を与える要因の一つと考えられる心理会計(Mental Accounting)の存在を検証するための仮想的な質問を行った。令和5年度は、2月に家計調査の準備のため現地渡航した際、質問票のテストと調査員研修に加え、調査期間中に作付品目の変更を行った農家が多い村を訪問し、変更に至った経緯の聞き取りや、食事内容に関する変化のきっかけなど、捕捉情報を収集した。家計調査実施後、調査対象農家の所得変動、消費内容に関するデータを取りまとめ、解析を実施した。調査対象地域で特に不足している栄養素の供給源である肉・魚類の消費支出額に対する弾力性は、農業労働賃を除く農外労働所得と稲作によるコメ販売から得られる所得は正に有意である一方、コメ以外の作物生産による販売所得は有意とならない、など所得源による影響の違いを示唆する結果が示された。
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