2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on sperm allocation strategies in fishes with alternative male mating tactics: method development and empirical tests
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22K20666
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
近藤 湧生 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (10965099)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 性淘汰 / 精子競争 / 代替繁殖戦術 / 精子配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
雄が状況に応じて1回の配偶あたりの射精量を調節する戦略は「精子配分戦略」と呼ばれ、体内受精種で主に研究されてきた。しかし、理論モデルと実証研究の間に不一致が多く、詳細はまだ解明されていない。各雄の精子量が「精子配分戦略」の理解に非常に重要であるにもかかわらず、既存の技術では測定が難しかったため、体外受精種で複数の雄が関わる配偶における各雄の射精量は未だに不明である。本研究では、複数の雄が関わる配偶における各雄の射精量を定量化する新たな手法を開発し、繁殖戦略が異なる雄の精子配分戦略を解明することを目指す。 昨年度は、GFP(緑色蛍光タンパク質)を性細胞に導入したメダカの雄と通常の雄を雌と交配させ、水中で混合した各雄の精子を識別する方法を検討した。しかし、GFPが性細胞に導入されたメダカでは、体外に放出された精子1つ1つが蛍光顕微鏡で観察できなかったため、当初予定していた環境DNA技術を応用し、水中で混合した各雄の射精量を定量化する方法を試みた。 今年度は、環境DNA技術を応用するため、これまでの成果を学会などで発表し、文献調査や環境DNAの専門家と手法確立のためのプロトコルを相談した。現在、同じ集団内の個体を使って実験を実施する予定である。しかし、環境DNA技術で2個体の雄の精子を識別することが困難であることも予想される。その場合、先行研究で参考とされる、ミナミメダカとキタノメダカの異なる異性の交配による配偶子の環境中のDNA量の増加を定量した研究を参考に、近縁の個体群やミナミメダカとキタノメダカを使った水槽実験も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
繁殖戦略の異なるペア雄とスニーカー雄では、状況に応じて射精量が異なることが予想され、個体ごとの放精数の定量は精子配分戦略の理解には必須である。しかし、体外受精種で個体ごとの放精数を計数した例はない。そこで、複数雄を配偶させ、水槽内に放出された各雄の射精量を定量的に評価する新規手法の開発を模索した。 今年度は、環境DNA技術を応用するため、これまでの成果を学会などで発表し、文献調査や環境DNAの専門家と手法確立のためのプロトコルを相談した。現在、同じ集団内の個体を使って実験を実施する予定である。しかし、環境DNA技術で2個体の雄の精子を識別することが困難であることも予想される。その場合、先行研究で参考とされる、ミナミメダカとキタノメダカの異なる異性の交配による配偶子の環境中のDNA量の増加を定量した研究を参考に、近縁の個体群やミナミメダカとキタノメダカを使った水槽実験も検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
水中の環境DNAからメダカ属の近縁2種(ミナミメダカとキタノメダカ)を識別する手法や、水中の精子DNAの増加量を定量する研究が報告されている。この技術を応用する。まず、水中で混合した精子がどの雄のものかを識別するため、個体特異的な配列(マイクロサテライトやSNP)から個体識別が可能なプライマーを作成する。そのプライマーを用いて定量PCRを実施し、水中の環境DNAから各雄の射精量を推定する。この手法は、水中の精子の個体識別が可能な遺伝子領域を利用するため、モデル生物以外にも応用が可能である。さらに、この手法は雌の体内で混合した各雄の精子も識別・定量できるため、体外受精を行う魚類だけでなく、体内受精種を含む動物全般の精子配分戦略の研究手法の確立につながる。
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Causes of Carryover |
昨年度に実施したGFP遺伝子導入メダカにおける精子の蛍光識別実験は、予定通りに進行しなかった。そのため、当初予定していたもう1つのアプローチである、環境DNA技術を応用した精子識別実験を実施することに決定した。このため、それらの準備や各専門分野の研究者との研究計画立案に注力し、次年度使用額が生じた。
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