2023 Fiscal Year Research-status Report
Unrevealing a coexistence mechanism and ecosystem evaluation of marine fishes using a metacommunity model and environmental DNA
Project/Area Number |
22K20672
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
西嶋 翔太 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (50805116)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 環境DNA / 多種共存 / メタ群集 / 占有モデル / 生物多様性 / 生態系評価 / トレードオフ |
Outline of Annual Research Achievements |
これほど多くの生物種がどのように共存しているのか?これは生態学における古くからの問いであると同時に、生物多様性からの恵みを持続的に享受するために取り組むべき重要課題の一つである。多種共存を促進する要因として、競争能力と定着能力のトレードオフがある。そこで本研究では、環境DNAと多種の競争能力と定着能力を推定可能なメタ群集モデルを開発して、海産魚類群集を対象に競争と定着のトレードオフの検出することを目的とした。さらに、メタ群集モデルを用いることで、環境DNAを用いた多種一括型の生態系評価の実施を目指している。 前年度(1年目)までに、リッジ回帰を組み込んだメタ群集占有モデルを開発し、東京湾でサンプリングと分析を行ったMiFishで取得された環境DNAデータに適用した。その結果、リッジ回帰を組み込まない場合に比べて、現実的なパラメータが推定され、予測精度も高くなることを明らかにした。この推定結果を用いて、各種の局所絶滅率と定着率を定量化したところ、両者の能力に明瞭な相関関係が見られ、トレードオフが海産魚類全般にわたって生じているという結果が得られていた。当該年度(2年目)では、FishBaseから各魚種の形質データを取得し、トレードオフに影響する要因を調べた。その結果、適性水温や栄養段階、体サイズといった要因がトレードオフの形に影響していることが示唆された。さらに、メタ群集モデルから求められる各種の占有率の平衡状態を基準とした生態系の健全性評価の手法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は局所絶滅率と定着率のトレードオフの形が種の形質によって左右されることを明らかにしたほか、環境DNAを用いた生態系評価手法の開発に着手した。これらの成果の一部について第71回日本生態学会大会においてポスター発表を行った。一定の進捗があった一方で、メタ群集占有モデルの推定精度の検証のためのシミュレーションについてはあまり進めることができなかった。そのため、当初は当該年度までの課題であったが、期間を延長しており、進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
メタ群集占有モデルに、環境DNAのリード数などの情報を共変量として使用し、モデルの改良を試みる。次に、開発したメタ群集占有モデルの推定精度の検証のためのシミュレーションテストを行う。これらのプロセスを経て改良したモデルを使用し、局所絶滅率と定着率の間のトレードオフの再解析を行う。さらに、トレードオフの形が生物多様性の維持に果たす役割について解析する。
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Causes of Carryover |
物品費として計上していたノートPCについては、予定していたシミュレーションを行えなかったため、購入しなかった。次年度に購入する予定である。残りの用途については、書籍等の必要な物品の購入や、論文投稿や掲載に懸かる費用として使用することを考えている。
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Remarks |
国際シンポジウムを開催するにあたって、ホームページを作成した。
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