2022 Fiscal Year Research-status Report
身体運動と繊毛運動による脳脊髄液・脳内間質液の流動を介する認知症・うつの抑制機構
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22K21268
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
越智 亮介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, リサーチフェロー (80965525)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Keywords | 運動 / 脳脊髄液 / 間質液 / 認知症 / うつ病 / 不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、運動が認知症・うつ症状を改善することが明らかにされているが、この運動の効果の分子機構は明らかにされていない。本研究は、身体運動時の頭部の動きにより制御される脳脊髄液・脳内間質液の流動に着目し、運動が認知症・うつ症状を抑制する分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 研究代表者が所属しているグループは、身体運動時の頭部の動きを再現する介入として、麻酔下に行う受動的頭部上下動を用いていた。しかし、麻酔が認知機能やうつ様行動を評価する行動テストの結果に影響することが分かったため、無麻酔にて介入できる系である受動的全身上下動を開発した。この受動的全身上下動は、高脂肪餌飼育モデルマウスにおける認知機能障害とうつ様行動、粉餌飼育モデルマウスにおける認知機能障害、及び身体拘束ストレスモデルマウスにおける不安様行動を軽減・抑制することを見出した。 また、脳脊髄液の動態を評価する方法の確立に取り組んだ。脳脊髄液の流動経路を探索するため、マウスの大槽内に蛍光デキストランを注入し、摘出脳観察と多光子顕微鏡を用いた脳ライブイメージングにて蛍光局在を追跡した。分子量3 kDと2000 kDの蛍光デキストランの動態を比較したところ、注入30分後に摘出した脳において、どちらのデキストランでも視床下部と大脳皮質腹側で血管基底膜への局在が観察されたが間質局在は3 kDデキストランでのみ認められた。これは、間質への脳脊髄液流入は単なる液体のbulk移動ではなく流動分子の径等に依存することを示唆する。加えて、脳ライブイメージングでも、マウス大槽内に注入した3 kD蛍光デキストランは大脳皮質背外側表層部の血管基底膜と間質にて認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
身体運動時の頭部の動きを再現する介入である受動的全身上下動が認知機能障害・うつ様行動・不安様行動を軽減・抑制する効果を見出し、使用する実験動物モデルの候補を絞ることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
行動テストにて受動的全身上下動の効果を認めた実験動物モデルにおいて、炎症と神経新生に関連する分子に着目した解析により、受動的全身上下動による介入の作用点となる脳領域・細胞種を同定する。また、同定した細胞種を培養し、物理的刺激実験を行い、炎症あるいは神経新生関連の分子の発現や活性を解析する。
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Causes of Carryover |
計画していた実験動物モデルの候補のひとつが準備できず、予定していた実験が本年度に実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度予算と合わせて執行する予定である。
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