2021 Fiscal Year Annual Research Report
Chemodynamical evolution of galaxies explored by galaxy formation simulations and Subaru PFS
Project/Area Number |
21J00153
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平居 悠 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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Keywords | 矮小銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / 星団形成 / 星形成 / ダークマター / 元素組成 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、矮小銀河の化学動力学進化の研究を実施した。具体的な成果は以下の通りである。 (1) 個々の星を分解した銀河形成シミュレーション用星形成モデルの開発 本研究では、個々の星を分解した銀河形成シミュレーションを実施するための星形成モデルの開発を行った。スーパーコンピュータの発達により、銀河スケールから個々の恒星まで分解した銀河形成シミュレーションが可能となりつつある。一方、星形成過程を分解するには未だ質量分解能が足りず、適切な星形成モデルが必要である。本モデルでは、シミュレーション内で形成された星粒子に確率的に星質量を割り振る。ガス粒子からの質量を正しく星粒子に割り振るため、最大探索半径を導入した。このモデル用いて、分子雲からの星団形成シミュレーションと宇宙論的な矮小銀河形成シミュレーションを実施した。その結果、最大探索半径を星形成の密度閾値から予想される値より大きく設定した場合、仮定した星の初期質量関数を正しく反映した星質量分布を持つ星団・銀河が形成された。この結果には、星形成効率や星形成密度閾値は大きく影響しないことを確認した。本モデルを用いて形成した星団は、星団内に含まれる最も重い星の質量と星団質量の関係を再現できることが示された。本研究で構築したモデルを用いることで、個々の星を分解した銀河形成シミュレーションを実施することが可能となる。 (2) 矮小銀河の化学動力学的性質 本研究では、宇宙論的な天の川銀河形成シミュレーションを実施し、その周囲に存在する矮小銀河の化学動力学的性質についての研究を実施した。形成された矮小銀河のダークマター密度分布を解析したところ、質量の大きい矮小銀河ほど、中心付近の密度増加が緩やかなコア型の密度分布を持つことが示された。今後のすばる望遠鏡超広視野多天体分光器での観測との比較により、矮小銀河進化史の理解が大きく向上することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね予定通り矮小銀河の化学動力学進化の研究を実施できた。本年度構築した星形成モデルを重力・流体計算コードASURAに実装したことにより、個々の星を分解した星団・銀河形成シミュレーションを行うことが可能となった。本年度は、この星形成モデルを用いて個々の星を分解した星団・銀河形成シミュレーションを行うSimulations Resolving Individual Stars (SIRIUS)プロジェクトを立ち上げ、系統的な星団形成シミュレーションを実施した。これらの成果は一連の論文として出版されている。このプロジェクトは、2022年度以降も継続して実施する予定である。 天の川銀河形成シミュレーションもおおむね予定通り実施できた。計算を終えた銀河について中心銀河周囲の矮小銀河の化学動力学的性質について解析した。2022年度も引き続き解析を進め、論文にまとめる予定である。 当初は矮小銀河、天の川銀河共に複数の初期条件からシミュレーションを実施する予定だった。しかし、本年度は計算時間の都合上、解析まで実施できたのは矮小銀河、天の川銀河それぞれ1モデルにとどまった。異なる初期条件でのシミュレーションと、より高分解能なシミュレーションは現在実施中である。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在存在する矮小銀河と過去に銀河系に降着した銀河系構成要素の関係を明らかにする。本研究では、矮小銀河で形成され、現在は銀河系の一部になっている星に着目する。まず、AMIGA Halo Finder (Knollmann & Knebe ApJ 2009)を用いてこれらの星が形成されたハロー質量を解析する。続いて、これらの星を赤方偏移0まで追跡し、元素組成 (α元素、中性子捕獲元素)及び動力学的性質 (速度、角運動量、軌道運動エネルギー)を解析する。これにより、矮小銀河がハローに降着した時期・質量ごとに見られる特徴的な化学動力学的性質を示す。さらに、シミュレーションで得られた化学動力学的性質と銀河系での観測値を比較し、銀河系への矮小銀河降着史を再構築する。観測値は、元素組成についてはSAGA database (Suda et al. PASJ 2008)、動力学についてはGaia DR3 (2022年公開予定)を用いる。
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