2022 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホールに双対な量子力学系の探索:カオスとコンプレキシティの統合
Project/Area Number |
22J20343
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡辺 涼太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | カオス / ブラックホール / AdS/CFT |
Outline of Annual Research Achievements |
古典カオスの指標であるリアプノフ指数のアナロジーとして、非時間順序相関関数(OTOC)の指数関数的な時間依存性は量子論のカオスの指標と見做される。本年度は熱的なOTOCがよく定義されるための条件を動機づけとした共同研究を行い、非常に一般の物理系においてリアプノフ指数のエネルギー依存性にある上限が存在しなければならないことを予想した。ホログラフィー対応によれば、反ド・ジッター時空中のブラックホールの周りの粒子の運動は、境界のホログラフィックな量子論では熱的な量子状態に関する適当な演算子の相関関数によって表現される。とくに、ブラックホールの地平面近傍における重力赤方偏移の効果は、境界の量子論のOTOCの指数関数的な時間依存性に反映される。多自由度極限における熱的量子系のOTOCの指数には温度で決まる普遍的な上限があることが知られていたが、我々が予想した上限の適用範囲は多自由度を必要とせず、量子あるいは古典のどちらでも一般に成立すると期待される。実際に、我々が予想した上限はビリヤード系や非線形なポテンシャル系をはじめとする我々が知りうる限り全ての古典カオス系で満たされていることを確認した。また、多自由度の場合には我々の上限は温度で決まる既存の上限と無矛盾な形に帰着することが確認された。我々の上限は非常に一般の物理系で成立していることが期待され、逆にこのことは物理系が満たすべき基本的な原理となりうる可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カオスのエネルギー依存性に対する上限に関する研究がPhysical Review Dで出版することができたことに加え、具体的な量子系でのコンプレキシティの評価に関する研究が進行中であるため、当初の計画通りの進捗とした。
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Strategy for Future Research Activity |
量子系の複雑さの指標として近年提案されたクリロフコンプレキシティを具体的な量子系で評価し、ブラックホールの特徴づける上で重要な役割を果たすカオスとコンプレキシティの関係を明らかにすることで、ブラックホールのホログラフィックな記述のさらなる理解を目指す。
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Research Products
(2 results)