2023 Fiscal Year Research-status Report
Cross-disciplinary fusion of singular phenomena by singularity theory
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22KK0034
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐治 健太郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (70451432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 圭佑 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10830002)
高橋 雅朋 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (80431302)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2028-03-31
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Keywords | 特異点 / 波面 / 螺旋曲面 / 余階数2特異点 |
Outline of Annual Research Achievements |
波面の特異点の微分幾何学的研究に関して、標準形を与えることができたD4+および-特異点に対して係数の内在性を検討した。2次のジェットで定まる係数は両者ひとつだけであるが、どちらの特異点ともこの係数としての微分幾何的不変量が内在的であることを示した。これは第一基本形式の情報のみで表現できる座標を用いてこの係数を第一基本形式の係数のみを用いて書いた。この式は示唆的であり、今後の研究にも役立つと思われる。さらに、特異点曲線の角度を用いて幾何学的特徴づけを与えることができた。 また、回転面の平均曲率の研究を発展させて、螺旋曲面の研究を行った。螺旋曲面では曲率が1変数関数にならないため、与えられた曲率を持つ螺旋曲面の構成は容易でない。そのために特異点をもつ平面曲線を螺旋運動させてできる曲面の特異点と曲率の性質を検討した。特異点についてはそのような曲面は螺旋の平行移動方向に直交する平面の切り口に表れる曲線のサスペンション曲面となることがわかり、切り口の特異点を検討して、特異点をもつ曲線の曲率を用いて特異点の特徴づけを行った。 回転面のうち与えられた法曲率をもつものの構成問題の検討を行い、解くべき微分方程式はわかったが、積分する方法がまだ未解明であり、今後の研究課題として残っている。特異点をもつ場合のHeinzの定理の検討を行った。特異点をもつ場合は平均曲率はほとんどの場合発散するため、定理の定式化自体が自明でなく、これも今後の研究課題として残っている。 特異点をもつ場合のd'Ocagneの定理に関して検討を行った。ツバメの尾特異点等の特異点の標準形ができているものに関しては標準形の係数を不変量の代わりに使えるため、d'Ocagneの定理を検討しうることがわかった。さらに特異点を射影した際に得られる平面間の写像への理解も深まっており、これはすぐに着手可能な研究課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波面の特異点の微分幾何学的研究に関して、標準形があるD4+および-特異点に対して係数の内在性を証明できた。さらに、どちらの特異点ともこの係数としての微分幾何的不変量が内在的であることを、第一基本形式の情報のみで表現できる座標を用いてこの係数を第一基本形式の係数のみを用いて書くことができた。この式は示唆的であり、今後の研究にも役立つと思われる式を導出できた。さらに、特異点曲線の角度を用いて幾何学的特徴づけを与えている。また、螺旋曲面に関して、螺旋曲面では曲率が1変数関数にならないため、与えられた曲率を持つ螺旋曲面の構成は容易でないが、螺旋の平行移動方向に直交する平面の切り口に表れる曲線のサスペンション曲面となることを示し、切り口の特異点の特徴づけを与えた。この特徴付けは切り口に表れる曲線の曲率を用いて与えられ、曲線の性質をよく言い表したものになった。 回転面のうち与えられた法曲率をもつものの構成や特異点をもつ場合のHeinzの定理は発散している平均曲率と曲面の大きさとの関係をどのように扱うか、ツバメの尾など特異点をもつ場合のd'Ocagneの定理は射影をしたときに表れる特異点集合の性質を標準形の係数を用いて書き、平面間の写像の理論を応用する、など多くの研究課題を挙げ、道筋を検討することができた。D4+および-特異点の係数の内在性を証明できたことに加え、現在本研究課題は始まったばかりであることから、今後多くの研究を生む素地を作ることができたことは大きな進展であるといえる。 これらのことから本研究課題は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究課題を達成するために曲面に現れる特異点の微分幾何的研究を中心に研究を行う。そのために当初の計画に従い、まずはツバメの尾特異点のd'Ocagneの定理の検討を行う。ツバメの尾に対して特異点が表れるような射影の仕方は正則曲面とは違って任意の方向への射影で特異点が表れる。さらにもともとあるツバメの尾に接続しているカスプ辺以外にも射影によって特異点が発生することがある。これらの特異点の曲率を計算してツバメの尾の標準形の係数で書くことを考える。そのうえで幾何学的意味を検討してどのような形のd'Ocagne型の定理が成り立つかを明らかにする。また、射影の仕方によっては余階数2の特異点が表れる可能性がある。その場合は接続している折り目特異点の幾何的性質を検討してこの場合もどのような形のd'Ocagne型の定理が成り立つかを明らかにする。さらに、動く特異点に対しても動く特異点の標準形が最近得られたことが報告されているため、その標準形を用いてd'Ocagne型の定理を検討する。動く波面の特異点に関してはまだ波面であるという性質をどのように各成分関数に反映させたらよいのかが未解明であるが、通常曲面に表れる動く特異点の標準形を参考にしながら波面の特異点の場合の標準形を与え、この場合もd'Ocagne型の定理を始め、様々な微分幾何的性質の変化を調べる。 またいくつかの変換で正則曲面から特異点をもつ曲面、特に波面が表れる場合がある。波面にいちばんよく現れる特異点はカスプ辺であり、カスプ辺に対して定義される基本的な不変量は、もとの曲面のその変換に対する特別な性質を表していると考えることができる。これらは研究代表者と研究協力者のMartinsが長年研究してきたものであり、様々な技術の蓄積がある。若手研究者の育成を兼ねてこれらの計算を国際共同研究として実施する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために予定していたよりも海外渡航が行えなかった。休止されていた研究集会が復活してきており、次年度には多くの研究集会が開かれることがわかった。さらに、研究協力者である学生達が成長過程であり、もう1年待ってしっかり結果を出してから国際研究集会で発表しさらに教室セミナーのようなより少人数のセミナーで黒板を用いた発表を行うほうがより効果が高いと考えられ、出張の多くの部分を次年度に回すことにした。また、今年度はValenciaとWarszawaとSanyaで大きな特異点に関する国際会議がある。これらに参加し成果発表を行う。一部の出張者は教室セミナーのようなより少人数のセミナーで黒板を用いた発表を追加で行う。また、S. J. Rio Pretoを訪問し、Martins氏、Santos氏らと、可能であればSao Carlosを訪問し、Tari氏、Ruas氏、Tito氏らと曲面の特異点の微分幾何的性質の分岐に関する黒板を挟んでの直接の研究討論を行う。Sanyaでは枠つき曲線曲面の専門家が多くいると思われるため、この話題の研究発表を行い、参加者と今後の研究の方向性について討論と情報収集を行う。
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Research Products
(11 results)