2015 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーの分子機構の解明と細胞生理学への統合
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23000015
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大隅 良典 東京工業大学, フロンティア研究機構, 栄誉教授 (30114416)
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Project Period (FY) |
2013 – 2016
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Keywords | オートファジー / ATG / タンパク質分解 / ユビキチン様タンパク質 / 膜動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は平成15年度から、継続して進めて来た特別推進研究の第3期に当たる。代表者は一貫して酵母を用いてオートファジーの分子機構、とりわけオートファゴソーム形成に関わるAtgタンパク質の機能解明を進めた。さらに酵母の優位性に基づきオートファジーの生理的意義を解明するための実験系の立ち上げを進めた。主な成果は以下の通りである。1. オートファジー誘導の初期過程、Atg1複合体形成の詳細を明らかにした。その過程で中心的な役割を担うAtgl3のC-末の天然変性領域内にAtg1、2つのAtg17の結合領域を同定した。複合体の結晶構造解析からその結合が、Torキナーゼによるリン酸化のよって制御されることを明らかにした。また2つのAtg17結合部位は、5者からなるAtg1複合体をさらにPASに高次集積させ、膜形成に必須であることを明らかにした。N-末のHORMAドメインがAtg9と結合能を有し、Atg9小胞を呼び込むことを明らかにした。2. オートファジーに必須なユビキチン様反応産物Atg12-Atg5がAtg8の脂質化反応に関わるAtg3の構造変化を誘導することにより促進する機構を明らかにした。3. 高温耐性酵母、K. marxianusのAtgタンパク質を同定し、S. cerevisiaeとの相補性を解析し、構造解析などにおける優位性の分子基盤を明らかにした。4. オートファジーによって大量のRNAが液胞内で分解されることを明らかにし、その過程に関わる酵素群を同定した。この分解で生じる塩基の大半が細胞外に放出されることを見いだした。5. 選択的オートファジー関しても、マイトファジーにおけるAtg32の制御, 各種レセプターのHrr25などのキナーゼによる制御を明らかにした。6. タンパク質分解基質の網羅的解析手法の新規性の高い手法を確立しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一貫して申請者は酵母を用いてオートファジーの分子機構、とりわけオートファゴソーム形成に関わるAtgタンパク質の機能解明を進めて来た。さらに酵母の優位性を生かしたオートファジーの生理的意義を解明するための実験系の立ち上げを進め、研究は概ね順調に進展したと考えている。 1) オートファジー誘導の初期過程、Atg1キナーゼ複合体形成の詳細が明かになった。その過程の中心的な役割を担うAtg13のC-末の天然変性領域にAtg1、さらに2カ所のAtg17の結合領域を同定し、複合体の結晶構造解析からその結合が、Torキナーゼによるリン酸化の制御されることを明らかにした。Atg13は2つの結合部位でAtg17を架橋することによりさらに大きな複合体を形成することで膜形成が起こることを明らかにした。さらにN-末のHORMAドメインがAtg9と結合することで、Atg9小胞を呼び込むことを明らかにした。オートファジーによって大量のRNAが液胞内で分解されることをあきらかにし、その過程に関わる酵素群を同定した。液胞内の分解過程を明らかにした点と代謝に対する影響を初めて示すことに成功した。 2) オートファジーに必須なユビキチン様結合反応産物Atgl2-Atg5がもう一つのユビキチン様結合反応によるAtg8の脂質化反応をそのE3であるAtg3に結合し活性中心の構造変化を誘導することにより促進する機構を明らかにした。 3) 高温耐性酵母、K. marxianusのAtgタンパク質を解析し、S. cerevisiaeの相補性、構造解析などに関する優位性を明らかにした。実際その有用性を証明した。 4) 選択的オートファジー関しても、新規にリセプターを同定した。マイトファジーにおけるAtg32の制御, 各種レセプターがHrr25などのキナーゼによって活性が制御されていることを明らかにした。 5) オートファジーの過程で, 大量のRNAが分解されることをしめし、その過程に関わる酵素として、Rny1, Pho8などを同定した。またRNAは最終的に塩基にまで分解され, それらは大半が細胞外に放出されることを示した。 6) 以上の様に本研究計画の最も重要な課題であったオートファゴソーム形成の誘導の初期過程の解明に関しては、大きな進展があった。我々が提唱したオートファゴソーム形成を担うPASは、各ステップが因子の修飾などによって動的に制御されており、かつ複合体がさらに集積することが必須であることを示すことができた。この成果は追加実験を行い、レフェリーコメントは全てクリアしたので、近々に論文として公開できると考えている。第二の柱として設定した生理的な解析はやや論文の公表が遅れているが、現在の逐次論文として公表する作業を進めており、新規性のある成果となると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
オートファゴソーム形成に関する分子機構の解明には, これまでの研究で国際的にも一定の貢献をしたと考えている。今後さらに進めるにはかなりの陣容が必要であり、特別推進研究終了に伴う研究員の異動の結果、新たな研究室の立ちあげは容易でないと判断した。従って、これまでのような解析は研究室出身者が独立して研究室の主宰をしているので、一応の区切りとしたい。一方、高等動物系を含め、生理機能のさらなる解明が急務であると考えている。 生化学的な解析がリソソーム系に比して格段に大きな優位性をもつ酵母液胞の利点を生かして研究を進める。原点に立ち返って、いつ、なにが、どのように分解され、最終的な分解産物が代謝にいかなる影響を与えるかを解明することに集中する。いかなる栄養源の飢餓、ストレスによってオートファジーが誘導されるかを体系的に解明し、そのシグナル伝達系を明らかにする。オートファジーはタンパク質分解と考えられているが、実際には核酸、脂質、糖質もまた分解されるがその詳細は明らかでない。分解に関わる酵素系、分解産物、液胞からの輸送など課題は拡がっている。オルガネラの選択的分解に関しては近年その分子機構の一端が解明されたが、細胞質タンパク質のオートファジーによる分解過程、その特異性などは、殆ど手がつけられていない。そのための網羅的な解析方法の開発は重要な意味を持っており、現在その確立を急いでいる。
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[Journal Article] Bulk RNA degradation by nitrogen starvation-induced autophagy in yeast.2015
Author(s)
Huang, H., Kawamata, T., Horie, T., Tsugawa, H., Nakayama, Y., Ohsumi, Y., and Fukusaki, E.
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Journal Title
EMBO J.
Volume: 34
Pages: 154-168
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Atg13 HORMA domain recruits Atg9 vesicles during autophagosome formation.2015
Author(s)
Suzuki, S. W., Yamamoto, H., Oikawa, Y., Kondo-Kakuta, C., Kimura, Y., Hirano, H., and Ohsumi, Y.
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
Volume: 112
Pages: 3350-3355
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Bcl-2-like protein 13 is a mammalian Atg32 homologue that mediates mitophagy and mitochondrial fragmentation.2015
Author(s)
Murakawa T, Yamaguchi O, Hashimoto A, Hikoso S, Takeda T, Oka T, Yasui, Ueda H, Akazawa Y, Nakayama H, Taneike M, MisakaT, Omiya S, Ajay Shah, Yamamoto A, Nishida K, Ohsumi Y, Okamoto K, Sakata Y, Otsu K.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 6
Pages: 7527
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] The Thermotolerant Yeast Kluyveromyces marxianus Is a Useful Organism for Structural and Biochemical Studies of Autophagy.2015
Author(s)
Yamamoto H, Shima T, Yamaguchi M, Mochizuki Y, Hoshida H, Kakuta S, Kondo-Kakuta C, Noda NN, Inagaki F, Itoh T, Akada R, Ohsumi Y.
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Journal Title
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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