2013 Fiscal Year Annual Research Report
漢字文化圏におけるわかりやすい法情報共有環境の構築
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23220005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松浦 好治 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特任教授 (40104830)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 法律情報 / 漢字文化圏 / 比較法 / データベース / 法令注釈 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 中国 台湾 韓国 |
Research Abstract |
(1) 国際連携による法情報の共有IT環境の構築 (a) 韓・台・中の法令とその英訳からなる文対応付き対訳コーパスを構築。(b) 日本法に関する情報の迅速かつ網羅的な発信のために「法令のあらまし」文書の文書構造化手法と翻訳支援手法の開発を推進。 (2) 高度な翻訳用辞書データの集積 (a) 日中韓台多言語法令用語対訳辞書(CJKT法令用語辞書)を構築。同辞書は、漢字文化圏の主要法域の法概念の意味と対応関係を横断的に可能にするもので、約13,000語の対訳辞書項目候補を抽出。(b) 英文官報から、法令用語日英対訳表現抽出手法の開発を推進。全2,802号に掲載の英訳法律全1,624本、および憲法施行前公布法律152本の和文につき、対訳コーパス(156,562文)を構築。 (3) 法令平易化技術の開発 (a) 4法域の法律専門家と協力して、特定のテーマについて理解するための法情報パッケージ(LawPack)を開発。このパッケージは、国際的な意見交換のためのウェブ上のフォーラムから構成するという原案をまとめた。(b) 「親権」をテーマとし、LawPackサンプルの開発を行った。台湾中正大学の研究協力者が開発を先行し、最新法令とその英訳、判例へのリンクも含む形となっている。 (4) e-legislation研究との連動 全国の自治体の条例・規則を横断的に活用できるデータベースに立法支援機能加えた「eLen」システムを全国の自治体に提供し、現実の利用に供した。全国1,790の自治体に対し、実利用団体は770団体。集めたデータは、全国の約9割(1,606団体)の自治体の全条例・規則である。これは982,796本の条例・規則を蓄積し、国内初で最大のデータベースである。 (5) 比較法研究者連携環境とIT支援 韓国法制処、法令情報管理院、台湾中正大学、中国人民大学と協働で作業を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の各項目について、予定通りの研究を進めている。ただ、法令平易化技術の開発については、当初予定していた作業(翻訳者のための法制執務の手引書)の作成などが、十分に進んでいない他、LawPackの作業を一定のテーマについて行い、それが法情報の平易化にどのように貢献するかという検討作業は、今後の課題となっている。個別に見れば、今後強化すべき研究項目はあるが、全体としてみれば、当初の計画に沿った作業を進めていると考える。 (1) 国際連携による法情報の共有IT環境の構築:(a) 韓国・台湾・中国各国の法令対訳コーパスの構築 (b) 「法令のあらまし」の国際的発信手法の開発 (2) 高度な翻訳用辞書データの集積:(a) 日中韓台多言語法令用語対訳辞書の構築 (b) 英文官報からの法令用語日英対訳表現抽出手法の開発 (c) 法令ターミノロジー構築手法の開発 (3) 法令平易化技術の開発:(a) LawPackの基本的構造の特定 (b) LawPack サンプルの提示 (c) 「平易化」の概念の検討 (4) e-legislation研究との連動:(a)韓国の立法支援システムの調査・報告 (b)全国9割の自治体の条例データベース開発・公開 (5) 比較法研究者連携環境とIT支援:(a)研究者が国際的に連携するためのIT環境を試作
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 国際連携による法情報の共有IT環境の構築:(a) 可能な範囲で4法域の法令情報の追加を行い、対訳コーパスの充実を図る。(b)「法令のあらまし」を使った実験を重ね機械翻訳による高信頼度、低作業コストな英訳手法の確立を目指し、定期的な国際発信に向けた体制整備を図る。 (2) 高度な翻訳用辞書データの集積:(a) 現在作成したおよそ13,000語に対して必要な見出しを追加し、4法域の法概念の意味上の対応関係の特定作業を進める。(b) 英文官報からの法令用語の抽出を進め、成果を多言語法令用語対訳辞書に利用する一方、法務省所管の日本法外国語訳プロジェクトにも供する。(c) 「重要な」法令用語を特定し、その成果を利用できる研究を進める。用語の相互関係、構造についても、研究を進める。 (3) 法令平易化技術の開発:(a) LawPackの基本的構造を共有する形で、特定テーマに関するパッケージの構築を進め、多言語法令用語対訳辞書との連動を推進する。(b) LawPackサンプルの有効性を検証し、パッケージのあり方について研究を進める。国際的なネットワークを通した需要に応える形で情報提供の仕組みの有効性を考察する。(c) EU翻訳総局や韓国法令情報管理院と連携し、法令文の平易化技術の現状を確認し、「平易化」の具体的な項目を確定する。(d)日本法令の外国語訳の電子化作業を継続し、日本の漢字法概念の変遷に関する情報として活用する研究を進める。 (4) e-legislation研究との連動:プロジェクトで収集する立法関連情報と法令情報とを接合させる手法の研究成果に基づいて、判例情報その他の必要情報を適切に集約することのできる環境について、具体化を図る。 (5) 比較法研究者連携環境とIT 支援:すでに構築した比較法研究者ネットワークをベースにして、比較法研究、実践のためのIT環境の充実に務める。
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Research Products
(17 results)