2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経伝達物質放出の修飾機構解明のための分子生理学的研究
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23220008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真鍋 俊也 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70251212)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 生体分子 / 脳・神経 / 遺伝子 / シナプス / 可塑性 / 海馬 |
Research Abstract |
(1)シナプス前終末におけるミトコンドリアの役割に関する解析では、薬理学的な予備実験の結果を確認するとともに、CA1領域のシナプス前終末特異的なミトコンドリア機能阻害マウスの作製を終了し、電気生理学的な解析を進めている。現時点では、海馬スライス標本のCA1領域における基本的なシナプス伝達機能について詳細な解析を進めているところである。 (2)シナプス前終末のアクティブゾーン蛋白であるCASTのノックアウトマウスの解析では、海馬スライスCA1領域の興奮性シナプスにおいて、CASTがグルタミン酸放出の基礎過程を調節していることが明らかとなった。具体的には、CASTが欠損すると、ひとつのシナプス小胞あたりに充填されるグルタミン酸量が増え、量子サイズが大きくなる。また、シナプスが持続的に活性化した際のシナプス抑圧がより大きくなり、これにはシナプス前終末内の初期エンドソームを介した輸送の異常が関与していることを明らかにした。この研究については、この段階で第一報を投稿しているが、今後も他のシナプスでの解析や個体レベルでの解析を含め、精力的に解析を進めていく。 (3)CaMKIIalphaとSTIMのシナプス前終末における機能解析では、電気生理学的なデータが得られつつあり、今後、さらに研究を進展させていく。一方、シナプス前終末での神経伝達物質放出を制御するSNAP-25の遺伝子改変マウスを新たに入手したが、この変異マウスではPKCによるSNAP-25のリン酸化が起こらなくなっており、海馬スライス標本CA1領域において、興奮性シナプス伝達の伝達効率が大きく減少しており、高頻度刺激後に観察されるテタヌス後増強が大きく亢進していることも見出した。今後もさらに研究を進め、神経伝達物質放出の修飾機構の詳細を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた遺伝子改変マウスの作製については、ほぼ予定通り進んでおり、それらの機能解析についても、ほぼ予定通りである。解析を予定していた遺伝子改変マウスだけでなく、本研究計画の目的達成に寄与する可能性が高い別の遺伝子改変マウスでも重要なデータが出つつあることも考慮すると、全体としては、概ね、予定通りに進んでいるものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を計画通りに進めるとともに、本研究計画に密接に関連した遺伝子改変マウスを複数種入手できたので、それらについても詳しい解析を進め、本研究の最終的な目的である神経伝達物質放出の修飾機構の詳細を明らかにしたい。また、電気生理学的および生化学的解析が大きく進んでいるCASTの解析については、それをさらに進めるとともに、論文発表を行って、情報発信を進める。
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