2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における階層意識と格差の連関変動過程の実証的解明
Project/Area Number |
23223002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉川 徹 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (90263194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 忠彦 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (10247257)
浜田 宏 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40388723)
轟 亮 金沢大学, 人間科学系, 教授 (20281769)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 階層意識 / 格差社会 / 社会調査 / 実験シミュレーション / 時点間比較 |
Research Abstract |
大阪大学研究拠点(研究代表者、研究員、事務補佐員および大学院生の研究協力者)でプロジェクト全体を統括しつつ次のことを行った。 まず2010年に実施した面接調査(SSP-I2010)、2012年に実施したウェブ調査(SSP-W2012)について、最終確定データを作成し、プロジェクトメンバーに配布した。合わせて、これまでに実施した調査のコードブック・基礎集計表3冊を作成公開した。 研究分担者と特任研究員を中心に各拠点でデータの分析を進め、研究成果を発表した。その数は「SSPプロジェクト」という50名の体制の研究グループ全体で、著書2件、学術論文12件、学会報告30件である。 この他、ウェブ調査を新たに1回設計実施し(SSP-W2013)、数理実験拠点では、2度にわたり実験データ収集をしている。このほかに新しい調査技法(CAPI法)による職業コードプルダウン選択のシステム開発のために、ウェブモニターによる質問項目回答試行テストを1回実施して、データを分析可能なかたちに整理した。 2012年12月25日と26日には公開シンポジウムを開催し、既存データの分析結果の情報交換を行った。この他に個別のワーキンググループによる分析研究会を計4回開催した。これとは別に、研究分担者・連携研究者などによる研究方針のディスカッションの機会を全国で計3回設けた。そして、2010年に実施したSSP-I2010調査の解析結果を主軸としてメンバーによって一般書籍を分担執筆する準備を進め、出版社との調整などを行ない刊行実現の目処を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の目的は、(1)既存の社会調査データの解析、(2)新たな調査・実験データの収集、(3)新しい大規模調査の設計である。 このうち(1)既存データの解析、およびその結果の報告については予定どおりに研究が遂行されている。最新の社会調査データの解析により、総中流がいわれた時代から現在までに漸次的に人びとの社会階層的地位についての認知度が高まってきたという、格差社会の進行を裏付ける結果が得られている。 (2)新たな調査・実験データについても、計画通りデータが蓄積されている。このうちウェブ調査と数理実験の成果はすでに論文として公表されはじめているので、順調に目標が達成されていると評価できる。 (3)新しい大規模調査の設計については、情報機器環境の激変に対応して、従来半世紀以上継続されてきた、個別訪問面接調査における質問票使用(ペーパー・アンド・ペンシル法)を、最新情報端末を利用したCAPI法に改めることをこの年度から発想したため、研究計画に変更があった。平成24年度はその下調べを行ったが、新しい調査手法を2015年の大規模調査までに確立できるかどうかについては、この先にさらに時間をかけて検討する必要がある。かりにこれが実現しなかった場合は、旧来の手法を踏襲することになり、そうなると、おそらく、日本の本格的な社会調査における、最後のペーパー・アンド・ペンシル法調査になってしまうだろう。しかし調査を当初の計画通りの方法で実施することは、十分に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年2月に実施予定の第1回SSP調査の対象者設計、項目設計、とりわけCAPI法の確立を今後の最優先課題とする。現在、CAPI法の確立のための調査システムを構築し、それを全国のウェブ・モニターに試行してもらい、結果をフィードバックする流れを作っている。今後はこれを繰り返すことにより、一層の開発を進める予定である。調査技法の開発については、他の研究課題で得られた知見や海外の状況なども積極的に参考にしていく。 これまでの調査計量研究の成果の公開については、とくに一般の人にも理解できる報道や書籍を発信することを心がけたい。
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