2013 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初代星誕生から銀河系形成期における恒星進化と物質循環
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23224004
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
青木 和光 国立天文台, TMT推進室, 准教授 (20321581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 正行 北海学園大学, 工学部, 客員教授 (00111708)
冨永 望 甲南大学, 理工学部, 准教授 (00550279)
茂山 俊和 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70211951)
野本 憲一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授 (90110676)
小笹 隆司 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90263368)
須田 拓馬 国立天文台, ハワイ観測所, 研究員 (90374735)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 超新星 / ダスト / 銀河系 / 金属欠乏星 / 化学進化 |
Research Abstract |
これまで推進してきた銀河系ハローの金属欠乏星の探査・組成解析を拡充する新たな観測計画を立案し、観測時間の確保を進めた。一方、銀河系ハローを形成する種と想定されている小さな星の集団の生き残りである可能性が指摘されている、星の数の少ない超低光度矮小銀河の観測研究に取り組み、その一つである「うしかい座I」が全体としては均一な化学組成比をもつことを確認し、銀河系ハローの素材としての特性を備えていることを明らかにした。矮小銀河の星の効率的な観測のために進めているすばる望遠鏡高分散分光器への多天体分光機能の追加にむけ、ファイバーの入射・出射光学系の製作を行った。 金属欠乏星データベースを矮小銀河の星にも拡張し、天体の同定についての統一的な扱いを定義し、銀河ごとに化学組成その他の情報を取り扱えるシステムを構築した。 観測で調べられたそれぞれの金属欠乏星の元素組成を再現する重力崩壊型超新星の爆発モデルを構築し、宇宙初期に起こった初代星の超新星爆発の性質についてその統計的な性質を初めて制限した。その中で、金属欠乏星の元素組成の分布から超新星爆発の性質の分布を明らかにすることができる式を与えた。また、10太陽質量前後の星の進化と爆発を系統的に調べることにより、電子捕獲型超新星を起こす星の質量範囲を精密に求め、その爆発が暗い超新星に対応することを明らかにした。 ダスト形成については、形成時の化学反応を考慮した非定常ダスト形成過程の定式化を行い、様々なタイプの超新星爆発時でのダスト形成の是非、形成されるダスト量とサイズ分布のより精緻な計算とそれを用いたダスト進化研究を実施できる体制を整えた。 化学進化の研究においては、矮小銀河の星の重元素の系統的な測定がr-プロセスの起源についての仮説の検証になることを示した。これを実際にすばる望遠鏡による観測で検証する提案を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
矮小銀河の星の観測研究については、新規に矮小銀河の星の化学組成測定が行われ、論文として公表された。これに引き続く観測提案も提出しており、研究は着実に進められている。すばる望遠鏡高分散分光器への多天体機能追加については、当初予定より時間を要する箇所が生じたが、その箇所の製作は終了し、予定どおりの性能の装置を製作できる見込みである。 銀河系ハロー星の観測とデータベース整備については、多数の星について均質なデータを取得し、化学組成を決定した結果を論文公表した。このデータと、その追跡観測から得られたデータを用いた研究も進展し、論文公表も行っている。データベース整備は銀河系ハロー星について拡充されたのに加え、矮小銀河の星への拡張も予定どおり実施した。 初代星の進化と超新星の元素合成については、初代星の起こす超新星爆発を広いパラメータ領域に対して実行し、観測されている金属欠乏星に対応づける研究を完了し、論文公表した。初代星の進化および第2世代以降の星の進化・超新星についての研究も推進中である。また、大規模宇宙論的シミュレーションによって得られた初代星の初期質量関数に基づいて、初期宇宙の化学進化がどのように起こったのかについての理論予測を準備している。 ダストと小質量星形成については、超新星残骸におけるダストの形成・破壊を解明し、特に初代の大質量星の爆発後のガス雲中でのダストの熱進化計算を実施し、低金属量での小質量星の形成可能性の研究を進め、論文公表した。矮小銀河と銀河系ハロー形成については、これまでの観測研究で得られている矮小銀河の星の化学組成のうち、特に鉄より重い元素の組成に着目した研究が進展した。 これらの分担のもとで研究を推進するとともに、研究分担者で会合をもって内外の研究の進展を確認し、研究の方向性を検討し、今後の課題を明確化している。
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Strategy for Future Research Activity |
金属欠乏星の観測とデータベース構築、およびそれに基づいた統計的な研究を推進し、銀河系ハローだけでなく矮小銀河にもそれを拡張する。また、それに対応する超新星爆発、ダスト形成、化学進化の理論研究を連携して進める。 銀河系ハローについては、本研究を含め最近の探査により、初代の超大質量星の爆発による元素合成の痕跡をとどめている可能性のある星や、鉄組成が太陽の1000万分の1以下の天体が発見された。これらの観測と本研究における超新星やダスト形成などの理論研究を踏まえて、あらためて銀河系ハローにおける超金属欠乏星の探査とそのフォローアップ観測を強化する。また理論研究において推進している、様々な非球対称性をもつ超新星爆発における元素合成計算を完了する。大規模宇宙論的シミュレーションによって得られた初代星の初期質量関数との比較から、個々の星だけではなく多数の星を用いた統計的な議論を通じて宇宙全体の化学進化へ制限を与える。 また、初代星およびその後に形成される小質量星の理解に不可欠な金属欠乏星連星の割合や性質と、連星系における元素組成の変化などの解明を進める。 矮小銀河の星については、化学組成のデータベースの公開を進めるとともに、矮小銀河の星と銀河系ハロー天体の相違点を洗い出し、初代星による元素合成と矮小銀河の天体との関係や、矮小銀河における化学進化の特色を明らかにする。ミニハローでの星形成・元素合成とその合体によって生じる矮小銀河や銀河系ハローの化学組成の特徴について、観測との比較を行う。また、すばる望遠鏡高分散分光器への多天体分光機能の追加を進め、観測準備を行う。 今後の観測で得られる多数の矮小銀河の星の元素組成を、理論研究によって用意された超新星爆発モデルデータベースと比較し、銀河系ハロー星に寄与した超新星爆発と矮小銀河の星に寄与した超新星爆発にどのような違いがあったのかを明らかにする。
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Research Products
(33 results)
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[Journal Article] Chemical abundances in bright giants of the globular cluster M62 (NGC 6266)2014
Author(s)
Yong, D., Alves Brito, A., Da Costa, G. S., Alonso-Garcia, J., Karakas, A. I., Pignatari, M., Roederer, I. U., Aoki, W., Fishlock, C. K., Grundahl, F., Norris, J. E.
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
Volume: 439
Pages: 2638-2650
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Transition of the stellar initial mass function explored using binary population synthesis2013
Author(s)
Suda, T., Komiya, Y., Yamada, S., Katsuta, Y., Aoki, W., Gil-Pons, P., Doherty, C. L., Campbell, S. W., Wood, P. R., Fujimoto, M. Y.
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters
Volume: 432
Pages: 46-50
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Chemical Analysis of the Ninth Magnitude Carbon-enhanced Metal-poor Star BD+44°4932013
Author(s)
Ito, H., Aoki, W., Beers, T. C., Tominaga, N., Honda, S., Carollo, D.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 773
Pages: 33 (17 pages)
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Evolution and CNO yields of Z = 10-5 stars and possible effects on carbon-enhanced metal-poor production2013
Author(s)
Gil-Pons, P., Doherty, C. L., Lau, H., Campbell, S. W., Suda, T., Guilani, S., Gutirrez, J., Lattanzio, J. C.
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Journal Title
Astronomy & Astrophysics
Volume: 557
Pages: A106 (12pages)
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Subaru/HDS2013
Author(s)
Aoki, W.
Organizer
10th Potsdam Thinkshop 2013 High Resolution Optical Spectroscopy
Place of Presentation
Potsdam, Brandenburg, Germany
Year and Date
20130528-20130530
Invited
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[Presentation] 高密度環境下で爆発した超新星SN2010jlの塵粒子生成と星周物質
Author(s)
前田啓一, 野沢貴也, D.K. Sahu, 美濃和陽典, 本原顕太郎, 上野一誠, G. Folatelli, T.-S.Pyo, 北川祐太朗, 川端弘治, G.C.Anupama, 小笹隆司, 守屋 尭, 山中雅之, 野本憲一, M. Bersten, R. Quimby, 家正則
Organizer
日本天文学会春季年会
Place of Presentation
国際基督教大学 (東京都)
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