2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23224005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
有本 信雄 国立天文台, ハワイ観測所, 教授 (60242096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 徹郎 国立天文台, ハワイ観測所, 名誉教授 (90260017)
岩田 生 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (40399275)
田中 壱 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (70374890)
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 銀河天文学 |
Research Abstract |
1. MOIRCSの機能向上開発 常温試験用ASICと開発用マルチプレキサによる基本的読出しソフトウェアの開発を行った。エンジニアリング用検出器と読出しエレクトロニクスを調達するとともに、焦点面配置の概念設計を実施した。 焦点面機構の拡張による面分光導入については、焦点面部の追加冷却デュワーの設計、製作を実施した。この追加モジュールを含め、焦点面部が実験室で独立したデュワーとして試験を実施できる設計とし、実験室での試験用の設備の購入を進めた。面分光ユニットの開発については、ファイバーとマイクロレンズを用いた面分光ユニットの概念設計を進めた。この過程で、ノイズ低減を実現する新たなファイバーの導入可能性や、ファイバーへの入射・出射効率を向上させる新たな方式の検討を実施した。このファイバー式面分光ユニットについては光学系および機械系の基本設計を完了した。また、これと平行してより簡素なマイクロレンズ式面分光ユニットについても検討を行い、一部光学部品の試作試験を実施した。さらに、MOIRCSの運用安定性、基礎的性能向上を目指した検討を行った。 2. 観測的研究 MOIRCSの機能向上後に実施する観測計画の策定を、研究代表者・研究分担者・連携研究者による研究チーム内での検討のほか、外部研究者を含めたワークショップ等を通じて進め、主要サイエンスケースの検討を行うとともに、具体的な観測ターゲットの選定作業を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたMOIRCS機能向上計画にしたがって、(1) 検出器更新 (2) 面分光機能の追加 (3) MOIRCSの機能向上の三点に取り組んでいる。検出器更新については、検出器本体、読出し系の調達を進めると共に、MOIRCSへの組み込みのための焦点面機構の設計を進めている。面分光機能については、ファイバー式とマイクロレンズ式の面分光ユニットを平行して検討・開発している。これらの新規開発については、当初計画していた研究員として適切な人材を雇用することができず、主としてハワイ観測所エンジニアや外部エンジニアとの共同作業による検討、さらには日本国内の研究者の協力による検討を実施している。 観測的研究については、当初計画通り、MOIRCSの機能向上を果たした上で実施する観測計画の検討を、幅広い研究者の協力を得ながら進めており、主要な科学的課題の設定を行った。 以上により、開発研究、観測的研究の両面において、特に開発研究について一部に遅れがあるが、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
面分光ユニット開発については、ファイバー式のものと平行して、より簡素な構造であるMLA単体の面分光ユニットの開発を、面分光装置開発の経験を有する研究者の協力を得て進めている。既に基礎的光学設計を行い、一部部品を購入して性能の検証を開始した。国立天文台先端技術センター(三鷹)において試験を進め、完成後ハワイ観測所へ移送する計画である。 検出器部分の開発は、マルチプレキサと常温用ASICを用いた基礎的な試験を行ったが、今後冷却試験、動作パラメータの最適化とMOIRCSの制御ソフトウェアとのかみ合わせを遅滞なく進めていくためには、この作業に専属できるエンジニアが必要である。現在、海外機関に所属し、H2RGとASICの駆動の経験をもつエンジニアの本開発研究への参加に向けた準備を進めている。また、MOIRCSに新検出器とASICを取り付ける検出器ユニットの設計は順調に進行しているので、これを製作し、平成25年度内に検出器の交換に向けた準備を整えることを目標としている。 観測的研究については、研究計画を検討する中で、銀河内部の分解を行うために、「MOIRCSによる広視野の観測」と「補償光学による銀河の内部を分解した観測」を組み合わせた観測を行うという新たなアイデアが生まれた。広視野のMOIRCSと補償光学により高空間分解能を達成するAO188+IRCSに同じ狭帯域フィルタを装備し、MOIRCSで探査して検出された星形成銀河をIRCSで空間分解して、星形成がその銀河のどこで起きているのか、また銀河進化過程においてどこに位置づけられるものかを詳細に調べることが可能になる。この計画を実施すべく新たな狭帯域フィルタの製作と観測の提案を行っており、MOIRCS機能向上後の観測とあわせて推進する考えである。
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