2013 Fiscal Year Annual Research Report
アイソトポマーの計測・解析技術開発による物質循環解析
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23224013
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 尚弘 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60174942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
ダニエラチェ セバスチィアン 上智大学, 理工学部, 講師 (00595754)
豊田 栄 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30313357)
吉川 知里 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40435839)
山田 桂太 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70323780)
服部 祥平 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (70700152)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | アイソトポマー / 物質循環 / エタノール / 三種酸素同位体比 |
Research Abstract |
環境分子として重要であり、且つ生化学的にも重要な代謝物である炭素数2のエタノール、アセトアルデヒド、酢酸に着目し、その分子内炭素同位体分布を高精度に計測する方法を開発した。特にエタノールの分子内炭素同位体分布計測については、従来のようにエタノールを酢酸に変換することなく、また分子レベル計測を別に行うことなく、1回の計測で分子レベルおよび分子内炭素同位体比分布を計測できる方法を開発した。 一酸化二窒素(N2O)については、三種酸素同位体比を測定する新たな方法の開発に成功した。この方法は、マイクロ波放電を利用して微量のN2Oを分解し、得られるO2の同位体比測定を行う。5-40 nmolのN2Oを含む試料であれば、N2Oの分離・精製、分解反応、O2の分離・精製と安定同位体質量分析計への導入をオンラインで行うことができ、△17O値が約0.3‰の精度で得られる。 一酸化硫黄(SO)の光解離過程について行った厳密量子動力学計算により、質量依存分別(MDF)および質量非依存分別(MIF)現象を起こす基本的なメカニズムの解明につながった。この結果を基に仮説を立て多原子分子系への応用し,光反応におけるMDFおよびMIFを起こす可能性を,電子励起状態及び発生する可能性のある光の波長までをも予想することが可能になりつつある。今後,様々な分子に対し解明が進むきっかけを与える理論の構築に成功しつつある。 大規模火山噴煙を模擬したプルームモデルを用いて成層圏での大気化学反応を再現し、二酸化硫黄(SO2)の光励起反応によって引き起こされるMIFによって極域の雪やアイスコア硫酸の硫黄安定同位体比が変化するメカニズムの解明に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的に挙げた研究要素が当初目標に向けて順調に進展しており、3年間の成果として、57編の査読付き公表論文と127の国内外学会発表を行ってきた。 生体分子のアイソトポマー計測法開発および適用については、重要な代謝有機分子に関して、その分子内炭素同位体分布を高精度に計測する方法の開発に成功している。質量非依存分別及びクランプトアイソトポマーに関しても、硝酸や硫化カルボニル、CO2やメタンの新規計測法の開発に成功している。N2Oの分子内15N分布測定法については、世界の標準化に貢献している。 硫黄化合物の大気化学に対する新規アイソトポマー計測は、当初の目的であるバックグラウンド成層圏硫酸エアロゾルの起源を理解に対して、分析化学的手法・理論計算・模擬実験が相補的に未知点を明らかにし、結果としてCOSが成層圏硫酸エアロゾルの起源として同位体的に矛盾しないという結論を得た。また、SO2の紫外線吸収情報を、あらたに作成した火山噴煙硫黄アイソトポマーモデルに組み込んだことで、成層圏に噴煙が達する大規模噴火において、SO2の光励起反応による特徴的な硫黄同位体シグナルを作るメカニズムが解明した。 硫黄化合物の理論計算・モデルについて、当初は3原子分子以下の系について第一原理に基づいた理論的解明に加え、より大きな多原子分子系、例えば、硫酸(並進と回転も含む21自由度系)などへの応用が進んでいる。また、これまでは大気硫黄循環の研究に考慮されていなかった四種安定同位体の大気に影響する化学反応における同位体分別定数を、大気モデルに導入することにより成層圏硫黄アエロゾルの起源を見積もることができた。また、これまでに試されていないN2O生成・消滅過程を陽に含んだ海洋窒素循環モデルにさらにアイソトポマーを拘束条件として加える先端的な研究を行い、北太平洋においては一定の成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝有機分子については、C3有機分子への拡張を行うと共に、環境試料への適用を進める。N2O三種酸素同位体組成については、高感度化に取り組むと共に、成層圏大気試料を含む種々の大気試料へ適用し、三種酸素同位体組成を用いたN2Oの生成・消滅過程の解析や収支の定量化を試みる。また、N2Oのクランプト・アイソトポマー(15N15NO)計測法の開発に取り組む。硫黄化学種については、OCS硫黄同位体比計測法を実大気試料に応用し、季節変動や日夜変動しその変動要因を特定する。また、OCSが植物・微生物によって吸収・分解される系をラボスケールの模擬実験によって再現し、OCSの減少に伴う硫黄同位体比の変化から、同位体分別係数を決定し、その変動要因を解明する。また、チャンバー実験を用いた硫酸生成過程を模擬した系におけるその同位体特徴付けを行う。チャンバーから硫酸及びSO2を分けて回収する方法などの基礎条件は検討済みである。 硫黄化合物の理論計算については、動的相関効果を取り入れた完全活性空間二次摂動法(CASPT2)及び多配置参照配置間相互作用法(MRCI)を用い、より厳密な計算を行う。それにより光解離反応においてMIFを起こす波長領域を、正確に予測する。また、ZN-TSH法に基づく非断熱AI-SCMD法を用い、硫酸の光吸収断面積を決定する。さらに、同位体分別係数の理論的決定を目指す。 海洋N2O循環モデルに関しては、海洋試料についてのN2OおよびN2O関連物質の測定を行い、得られたアイソトポマーデータとこれまでに蓄積されている既存のアイソトポマーデータを用いて、嫌気環境における海洋N2Oアイソトポマーモデルの構築と全球への適用を行う。大気硫黄循環モデルに関しては、33Sおよび36Sを導入することによってMIFも考慮することで火山噴火を生じるときの影響を調べる。
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[Journal Article] Geochemical origin of hydrothermal fluid methane in sediment-associated fields and its relevance to the geographical distribution of whole hydrothermal circulation2013
Author(s)
Shinsuke Kawagucci, Yuichiro Ueno, Ken Takai, Tomohiro Toki, Michihiro Ito, Kazuhiro Inoue, Akiko Makabe, Naohiro Yoshida, Yasuyuki Muramatsu, Naoto Takahata, Yuji Sano, Taku Narita, Genta Teranishi, Hajime Obata, Satoshi Nakagawa, Takuro Nunoura, Toshitaka Gamo
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Journal Title
Chemical Geology
Volume: 339
Pages: 213-225
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Site-specific 13C content by quantitative isotopic 13C Nuclear Magnetic Resonance spectrometry: A pilot inter-laboratory study2013
Author(s)
Alain Chaintreau, Wolfgang Fieber, Horst Sommer, Alexis Gilbert, Keita Yamada, Naohiro Yoshida, Alain Pagelot, Detlef Moskau, Aitor Moreno, Jürgen Schleucher, Fabiano Reniero, Margaret Holland, Claude Guillou, Virginie Silvestre, Serge Akoka, Gérald S. Remaud
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Journal Title
Analytica Chimica Acta
Volume: 788
Pages: 108-113
Peer Reviewed
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[Presentation] Variation of atmospheric concentarations of I-131, Cs-134 and Cs-137 observed over eastren Japan: contribution of leakage from Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant and secondary emission from soil and vegetation.2013
Author(s)
Kazuyuki Kita, Rie Kasahara, Misako Tanaka, Kaori Sato, Hiroyuki Demizu, Yasuhito Igarashi, Masao Mikami, Naohiro Yoshida, Sakae Toyoda, Haruo Tsuruta, Mitsuo Uematsu, Shogo Hgaki, Atsushi Shinohara, Akira Watanabe, Hisao Nagabayashi, Akihiro Yokoyama, Masayuki Takigawa, Satoshi Sugawara, Kiesuke Sueki, Yuichi Onda
Organizer
European Geoscience Union General Assembly 2013
Place of Presentation
Austria Center Vienna( Austria)
Year and Date
20130409-20130412
Invited
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