2011 Fiscal Year Annual Research Report
新奇Gサイクルの起動制御と新たな存在様式・作動原理の統合的解析
Project/Area Number |
23229001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堅田 利明 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (10088859)
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Keywords | シグナル伝達 / G蛋白質 / Gサイクル / ゲノムプロジェクト |
Research Abstract |
本基盤研究(S)の初年度においては、既知タイプとは異なるG蛋白質群、すなわち、1)従来の刺激依存性GDP-GTP交換によるコンホメーション転換型とは異なるGTP結合待機型G蛋白質(申請者らが先に同定したArfファミリーに属するArl8、RasファミリーのDi-Rasなど)、2)低分子量Gドメインに加えて別の機能領域も有するユニークな構造のマルチ・ドメイン型G蛋白質(ArfファミリーのArl13b、二量体型Ragなど)について生化学、分子生物学、細胞生物学的な検討を加え、以下の知見を得た。 1.線虫Arl8欠失変異体を用いた解析から、Arl8欠失変異体ではアポトーシス細胞のファゴサイトーシスによる分解除去に遅延が生じることを見いだし、Arl8が、後期エンドソームに加えてファゴソームとリソソームの融合に必須の役割を果たすことを明らかにした。2.Di-Rasの生化学的性状を解析する目的で、成体ラット脳からDi-Ras2の部分精製を行い、Di-Ras2がsmgGDSとヘテロ二量体を形成して、細胞質画分にも存在することを明らかにした。また、精製リコンビナントタンパク質を用いた解析から、Di-Ras2のグアニンヌクレオチドに対する結合親和性がsmgGDSとの相互作用により低下することを明らかにし、smgGDSがDi-Ras2の活性制御に関与する可能性を見いだした。3.線虫Di-Ras欠損変異体の解析から、神経筋接合部において、Di-Rasが神経細胞からのアセチルコリン放出に促進的に機能することを見いだした。4.N末端側のArfドメインに加えて、Coiled-coil及びPro-rich配列を有するユニークなG蛋白質Arl13bは、繊毛に限局して繊毛内物質輸送系に介在するが、Arl13の繊毛局在性が、ゴルジ体でのN末端側パルミトイル化修飾とC末端側に存在するRVEP配列の両者に依存することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の解析対象である低分子量G蛋白質Arl8やDi-Rasに関して、それらの新しい機能を見出した点は大きな進展である。この知見は、リソソームとファゴソームの融合制御の分子メカニズムや神経伝達物質の分泌機構の理解に役立つと考えられる。また、RVxPモチーフがゴルジ体以降で繊毛への選別輸送シグナルとして機能する可能性を見出したが、この知見は繊毛への膜タンパク質の輸送機構の解明に貢献すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
低分子量G蛋白質ARL-8に関して、その活性制御因子を含めた結合分子に関する知見は少なく、それらの同定が今後の重要な課題の一つである。またArl8の後期エンドソーム・リソソームへの局在化機構を明らかにすることも、Arl8の機能を考える上では重要な課題である。Arl13bのRVxPモチーフによる選別輸送機構を解明するためには、RVxPモチーフを認識する因子の同定が重要であり、アフィニティーカラムや共沈降実験などにより、その同定を目指す。さらに、Di-RasとsmgGDSの複合体に関わる構造学的な解析も進める。
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Research Products
(17 results)