2012 Fiscal Year Annual Research Report
新奇Gサイクルの起動制御と新たな存在様式・作動原理の統合的解析
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23229001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堅田 利明 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10088859)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 生体分子 / G蛋白質 / Gサイクル |
Research Abstract |
本研究では、これまでに解析の進んだ既知タイプとは異なるG蛋白質、すなわち、GTP結合待機型G蛋白質(RasファミリーのDi-RAS、ArfファミリーのARL8など)とユニークな構造のマルチ・ドメイン型G蛋白質(ヘテロ二量体G蛋白質のRAGなど)を対象に、新奇Gサイクルの時空的起動制御と新たな存在様式・作動原理の解明に向けて、精製蛋白質標品を用いた生化学的解析、遺伝子導入やノックダウンによる細胞レベルでの分子生物学・細胞生物学的解析、さらにモデル生物の遺伝子破壊による個体レベルでの分子遺伝学的解析から統合的に研究を進め、以下の知見を得た。1.リソソームと後期エンドソーム、ファゴソームとの融合過程に介在するARL8の機能を解明するために、ARL8と相互作用する因子群を探索し、HOPS複合体の構成因子であるVPS41を同定した。さらに、線虫VPS41/VPS39の欠失変異体では、arl-8変異体と同様に、アポトーシス細胞を含むファゴソームが多数蓄積した。したがって、ARL8とHOPS複合体が協調的にリソソームとファゴソームや後期エンドソームの融合を制御すると考えられた。2.線虫のRagをコードするraga-1及びragc-1両遺伝子の欠失変異体を用いた解析から、Ragは食餌中の必須アミノ酸に応答した神経前駆細胞の活性化に介在することを見出した。同様の表現型を示す線虫変異体をスクリーニングした結果、哺乳動物のマイクロRNA miR-92オルソログであるmiR-235が、神経前駆細胞の活性化を負に制御することを見出した。さらに、miR-235の発現は飢餓時に亢進し、摂食によりインスリン経路依存的に抑制されることを解明した。3.cTAGE5/TANGO1複合体は、VII型コラーゲンを小胞体から分泌経路へと送り込む積み荷受容体として機能することを先に同定したが、この複合体がArfファミリーG蛋白質Sar1の活性化因子Sec12と相互作用し、VII型コラーゲンの分泌に関与することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で解析対象とした新奇G蛋白質群に関して、それらの新しい機能を見出した点は大きな進展である。特に、線虫Ragの介在する神経前駆細胞の栄養応答制御因子について、遺伝学的スクリーニングからマイクロRNA miR-235を含む複数の因子を単離できたことは大きな成果である。今後、これらの因子群とG蛋白質RAGの活性調節機構との関わりを生化学・分子生物学的に精査する予定である。他方、コラーゲン分泌に関与するArfファミリーG蛋白質Sar1の活性化因子Sec12については、当初本研究の解析対象外であったが、コラーゲン受容体にSec12が結合することを見出したことから解析を進め、その局在化制御に関して予想外の知見が得られて研究が進展した。また、共同研究から、Rac1の遺伝子変異がメラノーマの原因となっていること、さらに、その遺伝子変異によってRac1蛋白質のグアニンヌクレオチド交換反応が促進され、活性化型Rac1の量が増加することがメラノーマ発症の原因であることを解明した。このRac1変異は、Rasでよく見られる(G12V)GTP加水分解速度の遅延とは全く異なり、本研究で解析対象としたGTP結合待機型の様相を呈する新奇低分子量G蛋白質とも考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ARL8の活性制御因子群については、引き続き生化学的手法により同定を進める。既に培養細胞からFlagタグ付きARL8を精製しており、ARL8のグアニンヌクレオチド結合やGTPアーゼ活性の特性を変化させるものを、培養細胞やラット組織の抽出液から探索する。さらに、遺伝学的手法からも相互作用因子群の探索を行う。arl-8変異体は、特徴的なリソソーム・後期エンドソームの形成異常の表現型を示すので、それ指標に、エンハンサー・サプレッサーのスクリーニングや、各変異体の表現模写となる遺伝子のスクリーニングを行う。哺乳動物での解析に向けては、既にARL8a、ARL8bのヘテロマウスを作出している。予備的な解析から、ARL8bノックアウトマウスの樹状細胞において、ある種のToll-like receptorを介した炎症性サイトカイン・I型インターフェロンの産生が、顕著に減弱するという興味深い知見を得ている。したがって、その表現型に関して詳細な解析を行い、免疫システムにおけるARL8の生理的役割を解明する。また、Di-Rasについても、マウスには相同性の高い2種が存在することから、それらの機能的な差異についてノックアウトマウスの作出から解析を進める。 Ragの機能阻害や機能亢進が導く表現型に着目した遺伝学的スクリーニングは、多細胞生物において前例が皆無に等しい。したがって、線虫の神経前駆細胞の栄養応答に着目した遺伝学的スクリーニングから、Ragの新規調節因子を単離・同定できる可能性がある。これまでに遺伝学的スクリーニングで単離した因子の生化学的・分子生物学的解析を進めると共に、それと並行して線虫の神経前駆細胞の栄養応答に着目した遺伝学的スクリーニングも継続する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Active transport and diffusion barriers restrict Joubert Syndrome-associated ARL13B/ARL-13 to an Inv-like ciliary membrane subdomain.2013
Author(s)
Cevik S, Sanders AA, Van Wijk E, Boldt K, Clarke L, van Reeuwijk J, Hori Y, Horn N, Hetterschijt L, Wdowicz A, Mullins A, Kida K, Kaplan OI, van Beersum SE, Man Wu K, Letteboer SJ, Mans DA, Katada T, Kontani K, Ueffing M, Roepman R, Kremer H, Blacque OE.
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Journal Title
PLoS Genet.
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] rl8/ARL-8 functions in apoptotic cell removal by mediating phagolysosome formation in C. elegans.2013
Author(s)
Sasaki A, Nakae I, Nagasawa M, Hashimoto K, Abe F, Saito K, Fukuyama M, Gengyo-Ando K, Mitani S, Katada T, Kontani K.
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Journal Title
Mol. Biol. Cell
Volume: 24
Pages: 1584-1592
DOI
Peer Reviewed
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