2011 Fiscal Year Annual Research Report
個体での組織構築・恒常性におけるRho-mDia経路の役割
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23229003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成宮 周 京都大学, 医学研究科, 教授 (70144350)
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Keywords | Rho / mDia / アクチン細胞骨格 / 恒常性 / 組織発生 / 細胞移動 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
本研究はmDia1,2,3のconditional KOマウスを作出し、Rho-Diaシグナリングおよび組織構築・恒常性への役割を明らかにすることを目的とし計画した。本年度は主としてmDia1/3-二重欠損マウス(DKO)についての解析を行い、神経系の組織構築、組織恒常性での機能を解析し、以下の成果を得た。mDia1/3-DKOは、miffy型歩行を呈する。これは、Ephrin-B3による正中線バリア構造の崩壊に加え、EphAによる軸索退縮が傷害され、脊髄介在・皮質脊髄ニューロンの正中線の交差異常が起因であることを見出した。またmDia1/3-DKOでは、大脳皮質と嗅球の抑制性神経細胞数の有意な減少を認め、これは、mDiaがもう1つのRho標的分子ROCKと協調し、アクチン動態を制御して抑制性神経細胞の移動に関わることを明らかにした。さらにmDia1/3DKOでは、神経上皮細胞の極性が崩壊し、アクチンのベルトとapical adherens junctionが障害され、発生脳全体で広範囲に脳室周囲異形成が誘導される。これは、mDiaによって誘導されるアクチン構造が、接着結合と神経上皮細胞の極性の整合性に重要であり、その損失により異所性増殖および神経幹細胞の分化を誘導することを見出した。その他組織での恒常性維持におけるmDiaの役割の解析については、T細胞の発生ならびに受精・精子形成における役割について検討を行っている。加えて、mDiaの新規細胞内情報伝達経路とその機能に関する研究を行い、mDia1の結合蛋白質Liprinを見出し、Liprinが、細胞内でmDiaのアクチン重合活性の抑制に寄与することを見出した。単分子蛍光偏光によりmDia1の可視化を行い、アクチン線維の螺旋周期構造に一致してその偏光の向きが振動することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、マウス個体を用いた解析を中心に展開するものであり、実験の精度・再現性を得るためには多くの個体が必要とされる。研究を計画する時点から、このことを予想し、目的とする遺伝子型のマウスを大量に作出する交配計画を実施しており、研究を順調に進めることが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られた結果を発展させるとともに、本年度と同様、全身性のmDiaの遺伝子欠損マウスを用いて、個体におけるRho-mDiaの機能解析を行う予定である。特に、これまでmDia2の個体での機能に関する報告がほとんどなく、遺伝子欠損マウスの表現型の解析により多くの知見が得られるものと期待される。加えて、脳の領域特異的にmDiaを欠失させたマウスを用い、Rho-mDiaシグナリングの行動に対する影響・関与について解析を進める。
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