2013 Fiscal Year Annual Research Report
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23229005
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷口 克 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (80110310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 通成 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (20333487)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NKT細胞前駆細胞 / 転写因子 / iPS / 単一細胞PCR / RNA-sequence |
Outline of Annual Research Achievements |
1、新しいNKT細胞分化経路を発見 NKT細胞分化には、IL-7受容体、転写因子PLZFおよび情報伝達系SAP遺伝子が重要な因子である。これらの遺伝子欠損マウスでは今回発見したNKT細胞前駆細胞であるDN1ePは欠損し、DN1ePからのNKT細胞への分化能は完全に消失したが、胸腺内には僅かな数のNKT細胞が存在した。DN1eP細胞からDP経路を経ずにNKT細胞に分化できるIL-7受容体およびPLZF/SAP依存性の新しい分化経路が存在すること、これまでのDP経路と独立した経路であることを明らかにした。 2、DN1eP細胞はTh1型NKT 細胞の前駆細胞 DN1ePがTh1型NKT細胞の前駆細胞であることから、前駆細胞時点での機能獲得機序を明らかにするため、RNAseq法を用いた遺伝子発現のプロファイリングを行なった。発現量に変化のあった遺伝子の主成分分析では、DN1ePはTh1型NKT細胞に最も類似していた。CD1d分子で運命決定される前からすでにIFNg産生細胞への分化が決定づけられていることを示した。 3、DN1eP細胞の分化制御遺伝子の解析 DN1eP特異的に発現する遺伝子に対してshRNAを用いた機能阻害実験を行った。DN1ePで発現するRunx3, Ablim3、Foxs1, Hlf遺伝子などが分化に強く影響することが明らかになった。Runx3 欠損マウス(胎生致死)を用いたキメラマウス解析では、胸腺においてDN1eP細胞とTh1型NKT細胞数が80%抑制された。またTh1型NKT細胞のサイトカイン産生パターンはTh2型、Th17型に変化した。Runx3はNKT細胞前駆細胞のTh1型NKT細胞系列決定に重要な転写因子であることが示された。一方、Foxs1遺伝子機能の阻害実験では、NKT細胞数の著しい増加が観察され, NKT細胞前駆細胞の増殖制御を担う重要な遺伝子であることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者はNKT細胞には4種類の機能の異なる亜集団が存在し(PLoS Biology 10:e1001255, 2012)、異なる転写因子の発現によって機能が決定されていること(Nature Immunol.12:450-9, 2011)、定説であったDP分化経路は異なるTh1型の機能を持つプレNKT前駆細胞が存在すること、また、定説ではリンパ球機能は受容体が発現したあと、サイトカインなどの環境因子によって決まると考えられていたが、受容体の発現以前の前駆細胞で機能決定がなされていたことを発見した(Nature Immunol. Revised)。特にNKT細胞前駆細胞の発見と前駆細胞ステージでリンパ球機能が決定されているという発見は予想外の成果であり、リンパ球の機能決定に新知見をもたらす大きな発見といえる。 単一細胞RT-qPCR法を用いた特異性の高い細胞表面分子の決定からプレNKT細胞の濃縮が可能になり、網羅的な遺伝子発現データ解析と純度の高い分化が実験から、DN1ePプレNKT細胞がTh1型NKT細胞の前駆細胞であることを明らかにできた。 shRNAを用いた機能阻害実験からRunx3, Ablim3、Foxs1, Hlf遺伝子などが、DN1ePプレNKT細胞の分化に強く影響することが明らかになった。事実、Runx3 欠損マウスを用いたキメラマウス解析では、発見したDN1ePプレNKT細胞とTh1型NKT細胞数は80%減少し、サイトカイン産生パターンはTh2型、Th17型に変化した。Runx3はプレNKT細胞のTh1型NKT細胞系列決定に重要な転写因子であることが示された。一方、Foxs1遺伝子機能の阻害実験では、NKT細胞数の著しい増加が観察され, プレNKT細胞の増殖制御を担う重要な遺伝子であることを示唆し、前駆細胞系列決定に重要な働きをしていることが確認されたことは、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画において設定した2項目中、項目1については順調に推移している。項目2は、発見したプレNKT細胞およびNKT細胞の特異的発現遺伝子・分化/機能制御遺伝子に関して時系列的発現解析・エピゲノム解析を実施し、系列決定と機能獲得についての遺伝子レベルでの理解を目指すものである。本項目におけるエピゲノム解析に必要な細胞数の確保と少数細胞からの実験精度をあげるために、下記に示す解決方法に従い、追加実験を行う。 (a)サンプル供給量の克服:induced Leukocyte Stem (iLS) 細胞の新たな開発 造血幹細胞を遺伝子制御することにより、リンパ球系への分化能を保持したまま幹細胞を増殖させるiLS細胞誘導法を適用する。すでに樹立しているiPSまたはES由来NKTクローンマウスの骨髄造血幹細胞へ応用することで、NKT細胞への分化能を保有する造血幹細胞を大量に確保することが可能となる。 (b)エピゲノム解析高感度・高精度化:分子バーコードシステム・デジタルPCRの利用 エピゲノム解析を高感度に行うために、分子バーコード技術の開発を進めている。クロマチン免疫沈降法によって得られたDNA断片を増幅することによるChIP-Seq法の高感度化である。DNA断片ごとに異なるDNA配列(バーコード)を付与する分子バーコード技術を用いたデジタル定量法(Shiroguchi K et al. PNAS 2012)の導入によって増幅のバイアスを補正し、少量のサンプルからの定量的なエピゲノム解析法を確立する。これらの技術革新により、より精度の高いエピゲノム解析が可能となり、多くのiPS研究・再生発生研究に貢献することになる。 上記技術の導入・確立によって、NKT細胞分化における経時的なエピゲノム解析が可能となる。RNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析と合わせることによって、機能遺伝子の発現制御機構を解明できる。
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Research Products
(11 results)