2012 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢社会における社会的孤立を回避させるためのコミュニケーション・ツールの開発
Project/Area Number |
23240030
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
椎塚 久雄 工学院大学, 情報工学部, 教授 (20100307)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久野 節二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70136216)
大武 美保子 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361544)
内山 俊朗 筑波大学, 芸術系, 講師 (50334058)
庄司 裕子 中央大学, 理工学部, 教授 (30286174)
林 真理 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70293082)
橋爪 絢子 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (70634327)
|
Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2014-03-31
|
Keywords | 社会的孤立 / 高齢社会 / コミュニケーションツール / 代替現実ゲーム / スケールフリーネットワーク |
Research Abstract |
超高齢社会において高齢者の社会的孤立が大きな社会問題となっている現状をとらえ、この問題を回避させるためのコミュニケーション・ツールを開発することを目的として研究を進めている。まず、高齢者の世帯構造変化の要因および高齢者の社会的孤立と現代コミュニティの変容との関係を考え、長寿社会のQOL(生活の質)を向上させるための新たなコミュニティのあり方について検討を行った。その一つの方策として、地域コミュニティ形成の基盤をつくるために、スケールフリーネットワークを用いて、地域コミュニティネットワークを構成するための基本的な方法論として、代替現実によるネットワーキングゲームを提案し、具体的に実現するための基礎的なアルゴリズムを提示してる。代替現実ゲームは、最近心理学と結びついていることから、この種のゲームの実現は高齢社会にとっても意義のあることである。 この種のゲームに共通する4つの要素について注目し、現実社会(ゲーム)を楽しくする方法について検討を行った。つまり、代替現実の楽しみ方に焦点を当てて、コミュニケーションツールの可能性について検討している。 現実とゲームの狭間にはいろいろなものが山積されている。それを確認する意味でも、代替現実ゲームの有用性について明らかにしている。 代替現実ゲームをコミュニケーションツールのひとつにするための、それによって構築されるネットワークの構造を明らかにしなければならない。そのために、スモールワールド・ネットワークの視点から、社会的なネットワーキングの性質について検討した結果、特に、スケールフリーネットワークの構造が、ここで構築する社会的孤立を回避するネットワーキングのために有用であることを提示している。そのための具体的な代替現実ゲームを用いた、フリースケールネットワーキングの基礎的なアルゴリズムを開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高齢者の社会的孤立を回避するためのコミュニケーションツールに関する内容として、本研究では次の二つの視点から取り組んでいる。 (1)ネットワークのつながりの視点からの研究 (2)代替現実ゲーム(Alternate Reality Game:ARG)を応用したネットワーキングゲームの視点からの研究 上記(1)のネットワークのつながりの視点からの調査研究として、友人関係の次数分布が、平均的な正規分布型のネットワークと、べき乗則分布型ネットワークの二つに注目して、両者の持つ性質、特に孤立可能性の特徴について明らかになりつつある。特に、べき乗則分布のネットワークとして、本研究ではスケールフリーネットワークに焦点を当てて、高齢者全体の8割のつながりは、全体の2割の高齢者がハブ的な存在としての役割を担うことで、高齢社会全体の社会的孤立の率は、正規分布型ネットワークのそれよりも低いことが明らかになりつつある。従って、社会的孤立を回避するためには、高齢者全員を対象としたケアを行うよりも、2割の高齢者(あるいは行政)がハブ的存在となって的を絞ったケアを行う方が効率的である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.べき乗則分布型のネットワークとしての、スケールフリーネットワークが、正規分布型ネットワークより孤立に陥る確率が低いことを理論的な側面とコンピュータシミュレーションの両面から明らかにしていく。 2.孤立を回避することは外に出る機会を増やすことであり、しかもそれによって楽しくかつ報酬が得られるような、代替現実ゲーム(ARG)を応用したネットワーク構築ゲームの開発を試みる。 3.コミュニケーションを増進させるために、いわゆる「かわいい」キャラクタの役割が重要となることを実験的に試みる。 4.高齢者が社会的な関係を持つためには、コミュニティーに参加するモチベーションが増加することを、ファッションの視点から検討を試みる。 5.高齢者の心の問題を明らかにするために、いわゆる統計的な量的研究の枠組みを超えて、質的研究による「係わる知」の視点から検討を試みる。
|
Research Products
(13 results)