2011 Fiscal Year Annual Research Report
非意識下プロセスにおけるワーキングメモリの脳内機構:意識下と麻酔下との比較
Project/Area Number |
23240036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
苧阪 満里子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70144300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 節 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい教授 (10110785)
石黒 浩 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10232282)
浅田 稔 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60151031)
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70253242)
中江 文 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60379170)
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Keywords | ワーキングメモリ / 実行系機能 / 麻酔 / 意識 / 加齢 / 情動 / ロボット |
Research Abstract |
本研究では、非意識下におけるワーキングメモリの働きを、ワーキングメモリの脳内機構を明らかにすることから解明することを目標とした。ワーキングメモリは、一時的に情報を活性化状態で保持することに加えて、並行して処理をおこなう機能を持つ。この機能は、日常生活において頻繁に起こる二重処理に必要であり、高次認知を支える記憶システムである。特にワーキングメモリの中央実行系の働きは、加齢により減衰し、健全な社会生活を送ることを困難とする。 そこで、23年度は、まず意識下におけるワーキングメモリ脳内機構を、特に加齢による中央実行系機能の減衰過程について、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳イメージング研究法により解明した。実験手法は、中央実行系の機能を測定するリーディングスパンテストを用いて、その実行に伴う脳活動を測定した。その結果、高齢者は前頭葉を中心に活動増強が認められ、特に前頭前野背外側領域(DLPFC)の活動が顕著になることが確認できた。これは、研究代表者が過去に若年者について得た結果(Osaka et al., 2003, 2004, 2007)と一致する。しかし、高齢者は前部帯状皮質(ACC)の活動増強が微弱である傾向が認められた。 さらに24年度は、課題目標の焦点化に視覚イメージを用いる方略を適用させ、言語リハーサルとともに視空間的スケッチパッドのサブシステムを併用することにより、課題遂行時のワーキングメモリの機能を高める可能性があることを見出した。加えて、二重課題を用いて課題目標に不必要な情報を抑制制御するなどの実行系機能の強化を図ったところ、高齢者のACC活動が増強する結果を得た。この結果から加齢により注意の制御機能の脆弱化が認められるものの、注意の焦点化と抑制制御の働きを高めることにより、中央実行系機能が強化できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度は、高齢者のワーキングメモリ課題遂行時の脳活動の特徴について、当初の計画通り検討できた。24年度には経頭蓋直流刺激を用いた実験を実施し、その成果は2013年の神経科学会や国際学会で発表予定である。また麻酔による実験計画も、予備実験を終了して25年度の実施に向けた準備を整えている段階であるため、予期していた以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、麻酔深度を調整することにより、意識レベルがワーキングメモリ遂行に及ぼす影響を検討する実験を実施する計画である。実験の性質上、実施回数と参加者数が制限されることが予想できるため、少人数での検討を行ない、個人データを綿密に分析することにより、意識レベルの変化に伴う特徴を明らかにする計画を立てる。また、高齢者とともに、ワーキングメモリの働きが問題になる幼児、児童についても、行動実験を中心に、中央実行系の発達の過程を探索する計画である。さらに、ロボットの動作を用いた実験も行い、意図の認知過程がワーキングメモリの中央実行系の脳内機構に働きかける可能性を探索する計画である。
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