2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23240044
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊元 幹太 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80362359)
元池 育子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (70347178)
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Keywords | モデル細胞 / ゲノムDNA / DNAの高次構造相転移 / 時空間秩序 / チューリングモデル / 遺伝子のスイッチング / リン脂質小胞 / 空間離散場 |
Research Abstract |
生命現象の動作原理を解明するため、分子・細胞・細胞集団の階層ごとの理論研究と、それと対照可能な実空間での人工モデル系構築による実験研究の両方を実施することを目標として研究を展開した。本年度は、細胞サイズ空間でのゲノムDNAの高次構造変化や、それにともなる、転写や発現などの活性の変化について、集中的に研究を行い、興味深い結果が得られた。具体的には、細胞サイズのリン脂質膜ミクロ液滴 (microdroplet) にゲノムサイズの大きさを持つDNAを封入し、細胞内環境を模した場に置ける、DNA分子の構造および機能(転写活性)の特異について調べた。DOPE膜で覆われた油中水滴細胞内では、スペルミン(4+)存在下すべてのDNA分子は凝縮状態をとり水相内に存在するが、Mg2+ (10 mM)を添加すると、DNAは膜表面に吸着し、伸展した構造へと変化することを見出した。さらに検討を進め、細胞サイズ液滴内のDNAの活性についても系統的な実験を行った。DNAの転写反応はリン脂質界面で脱凝縮したDNA分子上で、飛躍的に反応の加速効果を示すことが明らかとなった。さらには、翻訳反応を通してのタンパク発現が、ミクロ空間の内でon/offのスイッチングを起こすことや、リン脂質表面が著しい反応加速効果を示すことなどを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に研究が進展しており、いくつかの事項では予想外の現象を見出し、事前の計画を上回る貴重な成果が得られてきている。 1)ゲノムDNAの高次構造相転移と遺伝情報の自律的制御: これについては、細胞サイズのミクロ空間内では、ゲノムDNAがリン脂質表面と相互作用して、脱凝縮すること、さらには、脱凝縮に伴い、転写・発現活性が著しく上昇することを見出した。 2)実空間上のモデル細胞構築による細胞機能の理解: カリウムチャネルの配向性を制御して、非対称のリン脂質に分子膜からなる、細胞サイズ小胞に組み込むことに成功した。 3)多細胞系における時空間秩序の自己形成:空間一次元の空間離散系について、進行波が安定に静止パターンに転化するときの、数理物理的なメカニズムの解明が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、以下の3つの研究課題を並行させて相補的に進める。 1)ゲノムDNAの高次構造相転移と遺伝情報の自律的制御:多数の遺伝子の協同的なon/off活性制御の研究に取りかかる。 2)実空間上のモデル細胞構築による細胞機能の理解:これまでに構築した機能を使って、受動的輸送のみ行う静的構造としてだけでなく内外における物質・エネルギーの流れを積極的に利用する、時間発展可能な非平衡開放系細胞モデルへと展開し、細胞サイズの空間的・時間的特異性に関する研究に繋げる。 3)多細胞系における時空間秩序の自己形成:隣接する細胞同士の結合の非対称性と、細胞を離散場とみなすがゆえの、各細胞の内部状態に現れる非線形性が、次の器官形成への引き金となりうることを、数理モデルで示し、並行する実験で細胞配置に摂動を加えるなどの手法で実証を試みたい。
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Research Products
(9 results)