2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23240057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小川 園子 筑波大学, 人間系, 教授 (50396610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚原 伸治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90318824)
西森 克彦 東北大学, 農学研究科, 教授 (10164609)
坂本 敏郎 筑波大学, 教育イニシアティブ機構, 准教授 (40321765)
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Keywords | エストロゲン受容体 / 性差 / 社会的経験 / 社会認知 / 不安・情動性 / 扁桃体 / オキシトシン / RNA干渉法 |
Research Abstract |
個体の一生においては、各発達段階に応じてホルモンレベル変動とそれに呼応する脳内ホルモン受容体の発現が見られ、受容体に結合したホルモン作用は、脳構造の構築(形成作用)や脳の生理学的、生化学的機能の調節(活性作用)に関わることにより、様々な機能・表現型を持つ社会行動の性特異的、時期特異的な表出を制御していると考えられる。本研究の主要目的はこの様な脳内ホルモン機構と社会行動との関係を明らかにすることである。23年度の研究では、(1)社会行動の表出・変化の様相の包括的な測定を可能にする社会行動テストバッテリーを確立し、エストロゲン受容体(ERα、ERβ)、オキシトシン(OT)、オキシトシン受容体(OTR)遺伝子欠損(KO)マウスおよび新生仔、思春期に社会的経験を剥奪したマウスに適用し、発達の各段階に特徴的なホルモン変化と社会行動との関係を明らかにした。その結果、ERβ、OTやOTR遺伝子欠損により、社会的場面での不安傾向が高まり、他者との関係性形成の障害に繋がる可能性が示唆された。(2)性特異的な社会行動表出に関わる分界条床核主核(BNSTp)と前腹側脳室周囲核(AVPV)における性差形成に対する性ステロイドの作用機序を明らかにするため、ERα、ERβあるいは芳香化酵素のKOマウスを用いた定量組織学的解析を行なった。その結果、ERαおよび芳香化酵素を欠損した雄マウスのBNSTpとAVPVの体積とニューロン数は、雌マウスと同程度になっていたことから、周生期にはERαを介した芳香化アンドロゲンの作用がBNSTpとAVPVの性差形成に重要であることが示唆された。(3)OTR標識トランスジェニックマウスを作成し、OTRが社会行動や情動制御に係わる海馬、扁桃体、視索前野、外側中隔、嗅球、視床下部などのニューロンに特異的に発現していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災後の停電等による影響で研究の立ち上げにやや遅れが生じたものの、23年夏以降は、順調に研究が進展したと言える。基盤となる行動解析設備、実験マウスコロニーの整備も順調に進み、研究分担者との連携にも問題がない。当初予定していた、エストロゲン応答レポーターTgマウスを用いた解析についてのみ、脳内でのシグナルの検出精度の問題で遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的場面での他個体への興味、関心、不安、嗜好などを測定することのできる社会行動テストパラダイムを新たに開発・確立し、行動解析を進めた結果、エストロゲンによる社会行動制御基盤のひとつとして、ベータサブタイプのエストロゲン受容体(ER-b)を介した脳内オキシトシン系の調節作用が示唆された。従って、24年度に推進する研究では、その脳内機構についてのより詳細な解析が必要と思われる。しかしながら、現時点では脳内のER-bを検索するための抗体が存在しないため、新たな研究分担者の参加を得て、ER-bを標識したマウスを作製し、神経組織学的解析を推進するとともに、脳部位特異的なER-bの発現抑制が社会行動に及ぼす影響を評価していく計画である。
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