2013 Fiscal Year Annual Research Report
アジア採集狩猟民児童~大都市児童の発育発達多様性と環境の相互作用、含む標準値作製
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23240098
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
大澤 清二 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 所長 (50114046)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民族別身体発達 / 南・東南アジア / 民族別発育 / 幼児 / 生育環境 |
Research Abstract |
通文明的な視点から、子どもの身体機能の発達の様相を知ることと、その標準値を目指して日本、東南アジア、ネパールに大規模な調査を行い、合計4万人について58項目(粗大筋運動機能、微細筋運動機能、生活技術能力)のデータを収集した。民族を分類すると、狩猟採集民としてモーケン(ミャンマー)と定住化が進むムラブリ(タイ)、高地に秘境的農業社会を作るナーガとネパールの高地民シェルパ、定住し人力による農業で生きるタイの山地民モン、カレン、ラフ、ミャンマーのカヤー、パダウン、カイン、ミャンマー深部シャン高原のシャン、カウ、コーカン、カムティーシャン、パオ、特異な農業を行うインレー湖の民インダー、タイとミャンマーの中山間地から低地に分布するヤカイン、タイヤイ、タイライ、そしてカーストによる垂直分布構造をもつネパールの高カーストのチェトリ、ブラーマンからコイリ、ヤダブ、低カーストのカミ、ムサハルである。一方都市化社会から農村という構造においてはミャンマーのヤンゴンと農村という視点でビルマ、モン、インド、漢人のデータを収集した。一方比較対照群として日本人(岐阜、千葉、山形、山梨)3千人のデータを収集した。このように本研究は世界的にも稀な大規模な身体発達データを集積し、今なおこれを継続中である。ここでは平地から高地に至る垂直分布的な位相をなす多様な自然環境下における子どもの発達の諸相を明らかにするとともに、狩猟採集民から都市民という文明的な遷移を視野に入れたスコープで発達を捉えることを試みている。今もデータ収集活動は継続しており、収集データは日本及び現地においてデータ整理・入力・解析をしている。解析結果は日本発育発達学会などで公表している。様ざまな環境下で人がどのように発達してゆくかをグローバルな視点から生態学的に検討しており、解析結果を日本発育発達学会などで発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象地域は南・東南アジアの広大な範囲に及び、ミャンマーでは外国人の立ち入りが禁止されている地域も含まれている。しかし、特別に政府の許可を得てこの調査は実施されている。モーケンやナーガ、パダウンなどの諸民族調査を現地で行っているのは現在、世界でも我々だけである。初期に目指した諸民族(ビルマ、シャン、モン、カイン、ヤカイン、ラフ、カレン、ナーガ、リス、ヤオ、パダウン、モーケン、ムラブリ、チェトリ、ブラーマン、シェルパ、コイリ、ヤダブ、カミ、日本、ほか)のデータをほぼ収集しており、総数は4万人に及んでいる。 それぞれの調査は特色のある地域において実施されており、民族ごと、地域ごとに調査の進展状況は若干の異同がある。しかし、総括的には研究の進捗状況は順調であると言える。大略的には、民族別、年齢別、性別に58項目のデータ整理・集計をする前段階として国単位で集計している。日本発育発達学会ではネパールと日本というような分類枠で子どもの発達状況を報告している。一方で、ムラブリ、モーケンといった狩猟・採集民に関してはその特殊性とデータサイズの小ささから、別途集計して日本発育発達学会で報告しており、現在それを論文としてまとめている。解析結果は日本発育発達学会などで公表した。また、発達調査の一部としてミャンマー各地のOD(起立性調節障害)の調査結果をまとめて論文として投稿し、平成26年度には既に3篇が学術誌、専門誌に掲載される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の諸民族データは広い地理的範囲と多様な民族のゆえに、同時に大量のデータを収集した後でも全ての民族について性別、年齢別に発達標準値を求める上で十分なサンプルサイズを確保するのは非常に難しい少数民族も存在する。例示すると、ムラブリなどは全人口が300人程度しかいないが、対するビルマやモン、シャンの人口規模は非常に大きい。従って、大民族の場合は問題は無いが、少数民族の標準値を推定する方法を考案することが1課題である。また、性別、年齢別にみると比較的に大きな人口集団であっても十分なサイズが得られていない民族もあるので、これらの補充的な調査をさらに継続する予定である。最終年度に向けて、これらのデータを民族別に整理集計し、世界に先駆けて標準的な発達の様相を明らかにし、年度末には日本発育発達学会で公表する。
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