2012 Fiscal Year Annual Research Report
気候系に影響を及ぼす南大洋の二酸化炭素と揮発性有機分子に関する研究
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23241002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉川 久幸(井上久幸) 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (60344496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 昌彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (60359156)
亀山 宗彦 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (70510543)
笹野 大輔 気象庁気象研究所, 地球化学研究部, 研究官 (10462524)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / 二酸化炭素分圧 / 揮発性有機物(VOC) / 南大洋 / 温暖化 / 炭酸系 / 白鳳丸 / みらい |
Research Abstract |
本研究は、南大洋の二酸化炭素(CO2)および揮発性有機分子(volatile organic compounds, VOC)の大気-海洋間交換と、その変動要因(特に生物活動の影響)を解明することを目的としている。CO2は気候変化と海洋酸性化をもたらす原因物質であり、海洋生物への影響が懸念されること、VOCは生物活動により生成し、大気に放出されて大気酸化能やエアロゾルの生成などを通じて気候変化に関与する物質であることから本目的を設定した。南大洋は北極海とともに全世界の海洋に先駆けて酸性化の影響が現れると予想されている。その結果、生物相の変化が生じ、VOCの生成に影響を及ぼすことが考えられる。このことから本研究では南大洋における海洋観測により、①海洋表層の酸性化、すなわち炭素循環の実態を把握するとともに、②生物活動に伴うVOC放出・生成過程の解明を目指している。 平成24年度は、海洋地球研究船「みらい」(海洋研究開発機構)による南極海のオーストラリアおよびインド洋セクターの観測が12月から3月にかけて実施された(MR11-05航海)。この航海では、本研究で平成23年度から24年度にかけて開発した機器を用いて海洋二酸化炭素分圧とメタン分圧の連続観測データを得ることが出来た。海洋のメタン分圧の連続観測データが得られたのは世界でも例がなく、海洋メタンの分布と変動に関する新たな知見が期待される。また各層の採水点ではVOCの観測を船上で実施するとともに、海水試料を採取することが出来た。特に、これまで炭酸系データの蓄積がある昭和基地沖のリュッツオ・ホルム湾で集中観測を実施できたことは、南大洋における炭素循環変動解明の観点から大変有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成24年度は、海洋二酸化炭素分圧(pCO2)とメタン観測(pCH4)に使用するWS-CRDSを用いた計測器(Picarro G2301)を既存の海洋二酸化炭素分圧測定装置に取り付け、南大洋で観測を実施することが出来た。主に南大洋の南緯60度以南の南極大陸に近い海域において東経約30~170度の広範囲にわたり高分解能データの取得に成功した。また、本研究で構築した揮発性有機分子分析装置を用いて45観測点で表層水中のDMS及びイソプレンの測定を行い、さらにそのうち24点でDMS、11点でイソプレンの鉛直プロファイルの測定も行った。当航海で設定された全151観測点において炭酸系やその他の物理化学パラメータの鉛直分布も得られており、我々が得たデータの解析に用いることが可能である。それに加え独自にDMS及びイソプレンの測定を行った45点で植物プランクトン群集組成の指標となる色素分析・フローサイトメトリー用の試料や海洋メタン測定用の試料など、海水試料を多数採取した。 平成24年度は、海洋二酸化炭素・メタン同時計測が早期に可能となったため、「みらい」の北極海航海でも観測を実施することができた。このことから当初の計画以上に研究が進捗している状況であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、「みらい」による南大洋のオーストラリアとインド洋セクターの観測が12月~3月にかけて実施され、研究分担者の村田・亀山が乗船した。この航海においては、船上で取得した観測データ以外に、採水地点での炭酸系・VOC測定にかかわる各層観測海水試料を多数得た。これらの海水試料は「みらい」の日本帰港が3月28日であったため、各研究分担者が今年度化学分析を実施する。 本研究では平成24年度に南極海と同様に温暖化・酸性化の影響が危惧されている北極海において、海洋地球研究船「みらい」で海洋二酸化炭素分圧と炭酸系の海洋観測を実施することが出来た。両海域での炭酸系の分布と変動の比較については、将来的な課題として考えていたが、想定よりも早くデータを取得できたので、本年度中に結果を取りまとめる予定である。ひととおり海水試料の分析とデータの解析が終わった段階で、東京で分担者とその関係者が参加する小集会を開き、全体像の共有を図るとともに今後の課題について検討する。
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Research Products
(9 results)