2013 Fiscal Year Annual Research Report
タイ・インドシナ諸国間の国境政治の多面的体系的解明:一次資料の相互比較を通じて
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23241082
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
村嶋 英治 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (70239515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 昌也 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (70127330)
笹川 秀夫 立命館アジア太平洋大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10435175)
難波 ちづる 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (20296734)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国境政治 / 東南アジア現代史 / 東南アジア国際関係 / 脱植民地化 / 東南アジア大陸部 |
Research Abstract |
今日の東南アジア大陸部の国境をめぐる状況は、経済的越境活動の活発化が見られる一方で、遺跡の帰属に関してタイ・カンボジア間に武力衝突が生じるなど、複雑さを増している。1世紀前の国境線出現に起因して生じた諸制度、政治活動、越境移民、紛争などを「国境政治」と総称すれば、国境政治に関する研究は今日的意義が極めて大きい。しかし、従来の研究は、国境の片側のみの資料に拠った片面的研究であり、しかも断片的である。 本研究の新しさは、既存研究の限界を克服するために、各国の言語・資料に通暁した専門家チームを組織し、諸公文書館資料を横断的、双方向的に調査照合し、かつ実地調査も行うことによって、1世紀に亘る東南アジア大陸部の国境政治に関して既存知識に大幅な追加・修正を加え、初めての体系化を試みることにある。 上記の目的のため、平成25年度において、村嶋英治研究代表者は、バンコクの国立公文書館・国立図書館等でチュラーロンコーン王時代の国境政治に関する一次資料を昨年に続き閲覧収集した。白石昌也研究分担者は、実地調査、インタビューの手法により、カンボジア・ラオス・ベトナムの国境政治の現情について調査し、多くの成果を発表した。笹川秀夫研究分担者は、カンボジアにおいて、国立公文書館において昨年実施した国境政治に関わる仏教関係の資料収集から更に、1940年のタイ仏印紛争、第2次世界大戦に関する資料に拡大した。難波ちづる研究分担者は、昨年度に続き、第二次世界大戦勃発直前にインドシナからフランス本国に送られた約2万人の労働者が戦後、祖国に送還されたが、この送還事業の具体的な過程や直面した困難を明らかにするために、フランス・エクサンプロヴァンスの海外領土文書館において関連する一次史料の追加収集を行い、その分析を進めた。 これらの調査に基づき、別項に記載するような研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、研究代表者、3名の研究分担者、1名の連携研究者等によって実施している。当初予定した、各の分担地域の調査(アーカイブ調査、インタビュー調査、現地調査等)は、計画に従って順調に実施されている。たとえば、バンコクの国立公文書館、国立図書館等における五世王期の関係諸資料、および1885年から1945年に至るタイ官報の閲覧と関係部分の複写は大部分を終了し、残る1年で完了できる見込みである。また、国境政治現況についても、カンボジア、ラオス、ベトナムに関し、本格的な調査を継続している。 その成果も既にいくつか発表したが、今後一層の調査研究の進展に伴い、更なる新成果を発表できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い下記の方法で研究を推進する。 1,各公文書館での一次資料の調査・収集、バンコク、チェンマイ、プノンペン、ハノイ、ホーチミンの東南アジアの各都市およびフランスの公文書館で、次のような資料収集調査を継続実施する。バンコクのタイ国立公文書館が所蔵する、本研究に関連する国境政治の資料は、大量かつ多岐にわたる。時代的には1 8 5 9 年から1世紀余に亘り、かつ外務省ファイル、内務省ファイルおよびチュラーロンコーン王以来の歴代国王官房ファイル等に分散している。村嶋英治は、本国立公文書館で、平成2 6 年度の夏期・冬期などに、筆写、複写、マイクロ化などの方法で、1 9 世紀後半から2 0 世紀初頭の国境政治に関する資料収集調査を継続実施する。加えて、イギリスの公文書館において関連資料を収集する。笹川秀夫研究分担者はプノンペンの国立公文書館で、夏期・冬期に一ヶ月半程度、第2次大戦期の資料調査を実施し、上記村嶋と同様な方法で資料収集を行う。白石昌也、難波ちづる両分担者は、夏期もしくは冬期に一ヶ月程度、ベトナムもしくはフランスの公文書館で調査に従事し、同様な資料収集を行う。 2,東南アジア大陸部で1 9 世紀末以降刊行された現地新聞、雑誌等をマイクロフィルム等により系統的に収集する。 3,国境地域の実態調査、代表者および研究分担者は、それぞれ関連地域の国境を、研究協力者の協力を得て実施する。村嶋は研究協力者等の協力を得て、1896ー97年に岩本千綱が踏査したタイ・ラオス・ベトナムの道筋を追跡調査する。白石分担者は、カンボジア・ラオス・ベトナムの国境政治の現況についても、現地調査を実施する。
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Research Products
(11 results)