2011 Fiscal Year Annual Research Report
共感から良心に亘る「共通感覚」の存立機制の解明、並びにその発現様式についての研究
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23242002
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 人間総合科学大学, 人間科学部, 客員教授 (10011305)
座小田 豊 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20125579)
尾崎 彰宏 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80160844)
伊坂 青司 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30175195)
小田部 胤久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80211142)
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Keywords | 共通感覚 / 良心 / 共感 / 気分 / 感応 / 情念 / 感覚 / 感性 |
Research Abstract |
本研究課題に関しては、年度初めより共同研究を出版するべく、研究会活動を重ねてきた。9月3日には新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」で、栗原隆が「同一性と連続性」、鈴木光太郎が「ヘッブ『行動の機構』について」などを発表、共同討議を重ねた。11月23日には新潟大学東京事務所で、栗原隆が「世代と感覚」、伊坂青司が「人間の悪と神の愛」を発表するなど、出版に向けて研究会を重ねた。 科研費(基盤研究(A))での公開研究会も2回、2012年2月16日(木)に、新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」において、ビルケント大学のウルリッヒ・シュタインフォルト教授を招聘、「感性的なもの」の復権を目指すこの共同研究に対して、「理性」と「意志」の役割を重視する立場から講演していただいた上で、城戸淳そして宮崎裕助らと討議を重ねて、カント哲学の意義と限界を明らかにすることができた。2012年3月26日(月)にも、公開研究会を開催、栗原隆が、「Natur und Leben-Schellings "Ideenzu einer Philosophie der Natur" und derjunge Hegel」を発表、ベルリン自由大学のグンター・ゲバウアー教授が「Was heisst leidenschaftlich handeln?」を講演、改めて、理性に対する身体感覚の優位性を確認できた。 その結果、2012年3月に、ナカニシヤ出版から、栗原隆(編)『世界の感覚と生の気分』(全290頁)を刊行、「共感」や「良心」、「気分」や「感覚」を通して私たちに世界が開かれることを、明らかにすることができた。本研究課題を申請する際から動き出していた共同研究体制がうまく機能したのと、共同研究の蓄積が、初年度から結実したものと考えている。理性重視の近世哲学にあって、感覚の脈路を解明できたのも、近代科学によってもたらされた危機に直面している今、合理的な知を奉じる中で看過してきた「情念」や「思い」、「気分」そして「感覚」の豊かさを提示できた意義も大きいものと信じる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度から、研究成果を公刊することができ、その内容も、今後の研究展開にとっての基軸を立てることができた。また、外国人研究者を招聘しての研究会を重ねることで、研究成果の海外発信の基礎を構築したから。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「気分」や「感覚」、さらには「心情」の根源は何か、という問題を明らかにすることへ向かって、共同研究は展開される。所謂「心」の分析にもつながるだけでなく、イギリス哲学での「idea」が、ドイツ語に訳された際に「Vorstellung」となった経緯からして、「表象」の存立機制の解明に向かうことになる。 また、研究成果の国際発信の一環として、ケルン(ドイツ)で、クラウス・デュージング教授や、グンター・ゲバウアー教授らとともに研究会を実施し、ドイツ語で発表することを通して、研究水準の国際化を目指すことが、本年度の目標である。 研究会は、夏季、11月中旬そして年末に開催、研究成果の出版に向けて討議を重ねるとともに、2月に「日本ヘーゲル学会」の主催として、外国人研究者を招聘して、1780年~90年代に数多試みられた、哲学的人間学や経験的心理学の見直しと分析を図ることを通して、「気分」や「心情」そして「表象」の存立機制を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(32 results)