2012 Fiscal Year Annual Research Report
共感から良心に亘る「共通感覚」の存立機制の解明、並びにその発現様式についての研究
Project/Area Number |
23242002
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 人間総合科学大学, 人間科学部, その他 (10011305)
座小田 豊 東北大学, 文学研究科, 教授 (20125579)
伊坂 青司 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (30175195)
尾崎 彰宏 東北大学, 文学研究科, 教授 (80160844)
山内 志朗 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30210321)
佐藤 透 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (60222014)
鈴木 光太郎 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40179205)
野家 伸也 東北工業大学, 共通教育センター, 教授 (80156174)
松井 克浩 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50238929)
小田部 胤久 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80211142)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 准教授 (20367725)
城戸 淳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90323948)
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
Keywords | 共通感覚 / 共感 / 良心 / 心 / 魂 / 構想力 / 美的判断力 / 主観的精神 |
Research Abstract |
9月16日(日)に、新潟大学新潟駅南キャンパス「ときめいと」において、公開研究会「心理と真理」を開催、啓蒙期において盛んに試みられた「心理学」や「人間学」の研究にあって、人間の「感性」や「心」に、知の基底が見定められていたことを多様な角度から照射することができた。 これを受けて12月23日(日)、東京・田町の「CIC」において、大阪大学の福田覚准教授、津田保夫准教授そして栗原で、啓蒙期の人間学の主唱者の一人、プラトナーについての集中的な研究会を開催、多大な知見を共有することができた。 2013年3月2日(土)、新潟大学新潟駅南キャンパス「ときめいと」において国際シンポジウム、「同一性を超えて」を開催、M・フランク教授、C・ヤメ教授、そして栗原で、感性と理性の同一性と非同一性をめぐって、論議を重ねることを通して、研究の国際発信を図るとともに、世界水準の担保を得ることができた。このシンポジウムを通して、「心」の同一性と非同一性との同一性について、認識を深めるとともに、広い展望を得ることができた。 2013年3月13日、ドイツ、ケルン大学・中央研究棟4013号室にて、栗原隆と座小田豊がドイツ語で研究発表を行い、これに対してクラウス・デュージング教授、および大橋良介教授からの指導を受けることができた。これを通して、多大な知見を得るとともに、研究水準の国際的な担保を得ることができた。 年度末に、本年度の研究成果をまとめた論集、『感情と表象の生まれるところ』(ナカニシヤ出版、2013年、234頁)を制作、刊行、外界の「認識」にあっても、あるいは「審美的な判断」に際しても、はたまた内発的な「感情表出」にあっても、その発生源として、あたかも虚焦点であるかのように「心」が想定されていることを多面的な角度から照射するとともに、「共感」や「絆」の中心にも「心」が想定されることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の根幹である「共通感覚」の基底を、「心」や「魂」に見定めることによって、概念史的な掘り起こしを試みる中で、思想史的な俯瞰を得ることができたのは大いなる成果であったといっていい。これにより、研究全体の進捗状況を評価することができるようになった。 「魂」ではなく近代的な「心」が自覚されるようになったのは、スコットランド啓蒙派の大きな業績である。これにより、認識論では主観主義的観念論の成立する余地が出てくるとともに、「共感」から「良心」さらには「審美的判断」へと輻輳する「主観的精神」の問題圏が明らかになった。本年度はそうした思想史的な転換点に、啓蒙時代の「人間学」や「心理学」の試みがあったことを確認することができたことが、研究の大きな成果であった。 とはいえ、そのあまりに膨大な文献を前にして、どれをどのように交通整理して、分析を進めて、思想史の基軸に据えるのかは、平成25年度に残された課題となった。とはいえ、平成25年度に解明するべきことを明確にできたことは一定の成果と言ってよい。 研究の道筋を明らかにすることができたのも、国際的な研究交流が予想以上に進んだことが大きな要因であった。M・フランク教授とC・ヤメ教授を招聘して国際シンポジウムを開催する中で、本研究を国際発信すること、および世界水準を担保することという課題を達成できたことは大いに評価できる成果と信じる。加えて、3月にケルン大学において、クラウス・デュージング教授との研究交流も、今後の研究方向を見据えるうえでも大きな意義と成果があったものと評価できる。 また、年度末に、共同研究の成果の一端を公開する論集、『感情と表象の生まれるところ』(ナカニシヤ出版、2013年、234頁)を制作、刊行することができたのも大きな成果ではあるが、これは予定されていたことなので、総じて「おおむね順調」と評価した次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
5月の「日本哲学会」で、研究代表の栗原が、「若きヘーゲルと心理学」というタイトルで一般発表を行うことで、見逃されてきた「心理学」や「人間学」での問題構制を照射することによって、重大な思想史の組み替えにつながることを提起する。 スコットランド啓蒙派の思想が、いかなる経緯を経てドイツに移入され、「観念」が「表象」と訳されることに象徴的に顕れているように、主観的観念論の誕生へと、経験論が大きな変容を被ったことを実地に検証するために、8月末に、エジンバラ大学とビーレフェルト大学そしてハンブルクにて調査を行う。 9月に新潟で、「公開研究会」を開催して、研究成果の社会還元を図るとともに、それぞれの研究成果を共有することを通して、共通認識の醸成と水準の底上げを狙う。 現在、Google Bookに、啓蒙期の「心理学」や「人間学」に関する膨大な文献が電子データとして公開されている。これらの文献を分析することを通して、啓蒙期にも試みられた「人間とは何か」「心の座はどこか」「心はどのように機能するのか」という研究は飛躍的に進んで、未解明だった問題の根底が明らかにされるものと期待される。文献研究は革命的な転換の時代を迎えている。それらの文献から、理性的な側面だけでなく、感性的な側面から人間を分析するべく、初期ドイツ観念論の問題に通じている、ジョージ・ディ・ジョヴァンニ教授、もしくはダニエル・ブレージール教授を11月に、新潟、東京、大阪などに招聘して研究交流を重ねることを通して、共同研究の世界水準を担保する。 平成26年3月に、栗原隆、座小田豊、城戸淳、山内志朗がそれぞれの研究成果を携え渡独、ケルン大学のクラウス・デュージング教授の指導を受けることを通して、研究の国際的な水準を担保するとともに、研究成果の海外発信をも図る。 なお、本年度の研究成果を、図書として刊行することを可能な限り追求する。
|