2012 Fiscal Year Annual Research Report
生身と霊験―宗教的意味を踏まえた仏像の基礎的調査研究
Project/Area Number |
23242010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有賀 祥隆 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (20133613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 和春 青山学院大学, 文学部, 教授 (60132700)
山本 勉 清泉女子大学, 文学部, 教授 (00150037)
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
武笠 朗 実践女子大学, 文学部, 教授 (30219844)
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (40168274)
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
津田 徹英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 企画情報部, 文化財アーカイブズ研究室長 (00321555)
川瀬 由照 昭和女子大学, 人間文化学部, 非常勤講師 (00541228)
瀬谷 貴之 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 研究員 (50443411)
海野 啓之 東北大学, 文学研究科, 助手 (80587759)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 美術史 |
Research Abstract |
年度当初の計画通り、1.彫像調査、2.伝承ならびに環境の調査、3、資料整理・蓄積及び次年度調査の準備、の項目ごとに調査研究をおこなった。 1.では、13件、25体の彫像調査をおこなった。主な調査地は、高知・雪蹊寺、山梨県立博物館、鎌倉国宝館、東京・塩船観音寺、奈良・白毫寺、宮城・珠光寺、宮城・小松観音堂、宮城・光明院、宮城・黒川神社である。調査対象の多くは、従来詳しい報告がない物件であり、収集した情報は報告書として公刊することで、学界に大きく寄与するものとなることが予想される。 2.では、5件の画像調査をおこなった。なかでも、鎌倉国宝館において、神奈川・光触寺の頬焼阿弥陀縁起ならびに頬焼阿弥陀縁起(模本)を調査し、身代わり阿弥陀として信仰された光触寺阿弥陀如来像についての伝承資料として有益な素材を得たことが特筆される。特に原本と江戸の模本との表現の差からは、時代ごとの仏像観を読み取ることができた。「絵画化された霊験」という関心からのアプローチは、本研究のテーマにとってきわめて有効であることが確認された。 3.では、(1)調査データをテキスト化してコンピュータへと入力した。(2)撮影した4×5判フィルム391枚を、高精細スキャナーを用いる業者に発注して、デジタルデータ化した。(3)テキストデータ、画像データを統合したデータベースの作成準備にかかった。(4)本研究のテーマに関わる調査物件をリスト化するために、日本全国対象に、地方出版になる文化財目録の収集につとめ、該当図書を購入した。以後、これをもとに、順次リストを作成する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の各調査地における、調査日時及び調査作例は以下のとおりである。 1,高知・雪蹊寺(2012.04.17、毘沙門天立像・善膩師童子立像・吉祥天立像)、2,山梨県立博物館,(2012.06.19、山梨・大善寺日光菩薩立像,月光菩薩立像)、3, 神奈川・鎌倉国宝館,(2012.06.24、荏柄天神社天神坐像)、4, 神奈川・鎌倉国宝館(2012.06.24、鶴岡八幡宮弁才天坐像)、5,東京・塩船観音寺(2012.07.01、千手観音立像)、6,奈良・白毫寺(2012.07.22、司命半跏像・太山王坐像・閻魔王坐像)、7,宮城・珠光寺(2012.10.13、阿弥陀如来立像)、8,宮城・小松観音堂(2012.10.14、千手観音坐像)、9,宮城・小松観音堂(2012.11.23、毘沙門天立像・不動明王立像、十二神将立像①・十二神将立像②・十二神将立像③)、10,宮城・光明院(2012.11.24、阿弥陀如来立像(本尊)・阿弥陀如来坐像(前立ち)・阿弥陀浄土図)、11,宮城・黒川神社(2012.12.02、薬師如来立像)、12, 神奈川・鎌倉国宝館(2013.02.16、建長寺千手観音坐像)、13, 神奈川・鎌倉国宝館(2013.02.17、光触寺,頬焼阿弥陀縁起・頬焼阿弥陀縁起(模本)・阿弥陀三尊図)、14, 神奈川・鎌倉国宝館(2013.02.18、円覚寺阿弥陀如来立像・観音菩薩立像・勢至菩薩立像) 以上のように、調査地は、四国、関西、関東、東北地方に及び、また年度当初から年度末まで、コンスタントに調査をおこなっている。調査物件も1年間の成果としては順当であるため、おおむね順調に進行していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の各項目においてそれぞれ調査研究を進める 1.彫像調査 (1)生身と仏像: 1)清凉寺式釈迦、 2)善光寺式阿弥陀、 3)生身阿弥陀(歯吹き阿弥陀を含む)、 4)聖徳太子像、5)祖師像、 6)その他の生身仏の各カテゴリーの該当像について順次調査を進める。(2)霊験と仏像: 1)長谷観音、 2)清水観音、 3)石山観音、 4)四天王寺観音、 5)各地の三十三所観音の各カテゴリーの該当像について順次調査を進める。 2.伝承ならびに環境の調査 (1)霊験仏伝承の調査: 1)用材、 2)造像者に特色ある霊験仏伝承を収集・分析するとともに、3)霊験仏伝承を描く絵画について順次調査を進める。(2)環境の調査: 1)霊験寺の地形、2)経塚の所在地について、順次現地調査を進める。(3)像への行為の復元:生身像への行為を記録する文書事例を調査し、人間と像との関わり方を明らかにする。 3.資料整理・蓄積及び次年度以降の調査研究の準備 (1)調査データのコンピュータ入力:現場での調書を、調査補助者が分担してデジタル化する。(2)撮影写真の分類整理、デジタルデータ化:撮影した4 ×5判フィルムを十分な設備を備え実績のある業者に発注してデジタル化する。(3)画像データを伴った、作品データベースの作成:現場で撮影したデジタル画像をベースとして、 HTMLによって検索可能なデータベースを構築する。(4)研究者用のブラウジングシステムの開発:研究者のニーズに配慮した検索項目を検討し、創造的な研究をサポート可能なデータベース構築の準備作業をおこなう。 (5)調査対象物件のリスト化:未調査物件で新たに調査対象とすべき作例を、県指定、市町村指定品を中心に捜索し、次年度以降の調査物件としてリスト化する。 4.報告書の作成 3年間の調査研究を集成した研究報告書を作成し、日本国内外の関係機関に配布する。
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Research Products
(15 results)