2011 Fiscal Year Annual Research Report
生成生物言語学に基づくヒトの言語能力の設計・発達・進化の統合的研究
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23242025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 耕司 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (00173427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 直樹 上智大学, 外国語学部, 教授
遊佐 典昭 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40182670)
池内 正幸 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (20105381)
辻子 美保子 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (00264705)
上田 雅信 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30133797)
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Keywords | 回帰 / 併合 / 内心性 / 対称性 / ブローガ野 / fMRI / 干渉効果 / 構造依存性 |
Research Abstract |
23年度は各研究チーム内における個人研究を中心に活動を展開し、次のような成果をあげることができた。 まず設計チーム内では、演算操作Merge(併合)の諸特性を、内心性、投射、合成性、自己埋め込み等との関連において精密に考察し、(i)述語一項構造、θ構造、選択等の深層構造特性と外的併合、(ii)演算子構造、談話構造等の表層構造特性と内的併合、それぞれの緊密な関係を一般化して示した。これを説明するため、素性分布の「対称性」の概念に基づいて、「言語計算は統辞体の対称性を目指して駆動される」という仮説を提案した。 発達チーム内では、まず母語獲得に関して、CHILDESコーパスを用いて主語は最初期から動詞句内に基底生成されることを示した。第二言語獲得においても構造依存性が機能していることを、脳科学的証拠に基づいて示した。脳機能イメージングに基づき、ブローカ野のうち弁蓋部(BA44)が領域横断的な階層構造の処理を司る一方、三角部(BA45)が言語に特定的な内心構造を伴う統語構造の処理を行う部位であることを指摘した。さらに数量詞のWh依存関係の処理に対する「干渉効果」を明らかにして、Wh句と数量詞が部分的に類似する形で作業記憶中に記録されていることを示唆した。 進化チーム内では、言語の生物学的および文化的進化について研究を進めるとともに、生物言語学・進化言語学の科学哲学的側面や方法論上の特性についても考察を加えた。まず認知考古学的証拠に基づき、石器作製等に見られる行動文法の併合の前駆体としての位置づけを強固にし、UGの出現年代を従来よりも早い13~15万年前とする仮説を提示した。また英語の二重目的語構文の発達に注目して、その進化メカニズムを論じた。方法論的考察としては、反証主義と妥当性の基準が言語進化研究にとって共に有効であることを示し、これらを勘案した比較研究の重要性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度は個人研究を中心に行い、各メンバーが多数の優れた研究を発表した。設計チームでは、併合と言語表現の内心性の関係について考察を進め、外的併合と内的併合が示す体系的差異を「素性分布に基づく対称性」という概念によって捉え、内心性への最も興味深いアプローチを追究することができた。発達チームでは初期言語発達に関する実証的研究を行い、脳神経科学からのデータを用いながら言語進化に関する新しい知見も得られた。進化チームでは言語の生物学的進化・文化的進化について、新たな知見を多数蓄積した。プロジェタト全体としても、24年3月に京都生物言語学会議(主催)とEVOLANGIX(共催)の2つの国際学会を開催し、研究成果を国内外に広く発信するとともに、分野全体の活性化に大きく貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は前年度の各個人研究の成果に基づいたチーム研究を推進する。設計チームは上述の提案をより精密化して、人間言語を構成している真の基本演算とは何かという根本的問題に正面から取り組む。今年度秋の国際シンポジウムにおいて、チーム全体として実質的な提案を示す予定である。発達チームは前年度の自己ペース読文課題による日本語の干渉効果についての実験結果をさらに発展させて仮説の精緻化を図る。また依存関係を形成する際の統語素性の機能の詳細と、その作業記憶への影響を理論的・実験的に明らかにし、併合とラベリングの関係についても脳科学からの検証を検討する。進化チームは回帰・併合の創発と、その前駆体についての研究をさらに進め、またAgree等の他の統語操作にも同様の考察を拡張する。考古学や人類学等の関連他領域の成果をも勘案しながらの研究とする。今年度秋の国際シンポジウムでもその成果の一部を報告する。
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Research Products
(59 results)
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[Journal Article] 進化生成言語学とは何か2011
Author(s)
池内正幸
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Journal Title
KLS 31 : Proceedings of the 35th Annual Meeting of the Kansai Linguistic Society
Volume: 31
Pages: 253-262
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