2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23242033
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
永原 陽子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90172551)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟屋 利江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00201905)
中野 聡 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (00227852)
鈴木 茂 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10162950)
難波 ちづる 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (20296734)
大久保 由理 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20574221)
今泉 裕美子 法政大学, 国際文化学部, 教授 (30266275)
浅田 進史 駒澤大学, 経済学部, 講師 (30447312)
眞城 百華 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (30459309)
石川 博樹 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (40552378)
溝辺 泰雄 明治大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80401446)
愼 蒼宇 法政大学, 社会学部, 准教授 (80468222)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植民地 / 植民地兵 / 移動 / 戦争 / 世界史 / アフリカ / 女性 |
Research Abstract |
研究第2年度にあたる2012年度には、1.先行研究についての共通理解を得るための研究会の開催、2.分担者・連携研究者・協力者による本課題にかんする事例報告のための研究会の開催、3.国内外での史料調査・収集の実施、4.文献資料の収集、5.以上にかんする成果の公開、を課題として掲げた。 1.については7月5日に研究会を開催し、セネガル出身のPierre Sane氏による“Racism: Durban and Beyond ”と題する報告を得た。近年のアフリカ各地での奴隷貿易・奴隷制や植民地主義の歴史をめぐる議論の中で、本研究のテーマであるアフリカ人の兵士や労働者等としての強制移動の現状についての理解を深めることができた。 2.については11月18日に研究会を開催し、研究協力者の上杉妙子氏(専修大学)による「イギリスのグルカ兵雇用に見る軍隊の民族化」と、同じく研究協力者の丸山淳子氏(津田塾大学)による「南部アフリカにおける脱植民地化と『ブッシュマン兵士』―アンゴラ・ナミビア・南アフリカを生きたブッシュマンの50年」の二つの報告を得た。上杉報告では、イギリス植民地主義と代表的な「兵士民族」であるグルカの歴史についての包括的な理解を得た。丸山報告では、植民地状況にある南部アフリカでの「ブッシュマン兵士」の植民地境界を越えての移動の事例についての紹介があり、植民地兵の移動にかんする歴史と現代の設定についての理解を深めることができた。 3.についてはドイツ連邦文書館、南アフリカ国立ケープ文書館、モザンビーク国立文書館、リスボン海外文書館、ガーナ国立文書館、山口県文書館等で文書史料収集を実施するとともに、エリトリア、コロンビア、沖縄で聞き取り調査を行った。 4.ではアフリカ各地にかんするものを中心に関連文献を収集し、5.ではウェブサイトならびに各自の論文・口頭発表の形で成果を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、東アジア=東南アジア間、アジア=アフリカ間を中心に、南北アメリカとアジアやアフリカの間をも含め、20世紀初めから第二次世界大戦後の脱植民地化期に1.軍人・兵士の移動を通じての戦争と暴力の方式(ゲリラ戦、無差別殺戮、性暴力、強制移送など)の他植民地への移転とそれによる植民地的暴力の世界的連結の実態、2.移動の経験と他植民地出身兵との遭遇が兵士の出身社会の政治過程や社会関係にもたらした意味、3.労働者・「売春婦」等の男女が兵士と密接な関係をもちながら植民地間を移動したことによる植民地社会の社会秩序の変容とそれが各地の脱植民地化過程に及ぼした影響、を比較史的に分析し、4.遠隔の植民地の住民が連鎖する植民地的暴力を共有したことが脱植民地化の世界史的過程にとってもった意味を明らかにすることを目的としている。 このうち、2012年度までに、植民地期朝鮮の警察・軍の徴募・動員、第一次世界大戦期の南アフリカ兵・労働者・女性の動員、第一次世界大戦期アンゴラからの労働者移動、第二次世界大戦期イギリス領アフリカ植民地からの動員、朝鮮戦争におけるコロンビア兵派兵、エチオピア内戦期を中心とするエチオピア=エリトリア地域の兵士移動などにおける移動の具体的な内容についての実証的な研究を進めた。そこでは戦争のための動員と労働のため徴募の連続性が重要な論点として浮かび上がるとともに、兵士・労働者の両者に伴って移動する女性の存在を重視することの意義が明らかになった。 以上を総じて、研究は第2年度までに順調に進展していると言える。第3年度以降は、それぞれの移動の事例が当該地域の社会変容や脱植民地化過程にもたらした影響の分析へと研究を進めるとともに、各事例の連関についての考察と比較検討を行い、植民地主義と脱植民地化を「帝国史」の枠組とは異なる20世紀の世界史の構造の問題としてとらえることが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり各自の分担する研究は順調に進展しているが、分担者が校務をはじめ多様な仕事を抱えていることから、日程を調整することがたいへん困難な状況にあり、第2年度はとくに、十分な回数の研究会を開催することができなかった。そのため、2013年度には、年度初めに1年間の研究会日程を調整して必要な研究会の開催を確保することとしたい。 第2年度までの達成点をさらに進め、植民地主義と脱植民地化をめぐる世界史の問題へと発展させるためには、共通のテーマに関心をもつ国外の研究者との交流がこれまで以上に必要である。これまでのところは分担者が個々にそれぞれの対象地域で関連研究者との交流を進めてきたが、それら個別の関心をまとめていくためには、内外の研究者が集まり議論を行う場を設けることが有益であり、第3年度にはワークショップの形で、第4年度にはシンポジウムの形でそれを実現する予定である。(第3年度についてはすでに2013年10月に国際ワークショップを計画している)。 また、研究会を補うものとして、ウェブサイトおよび電子メールによる史料についての情報交換、研究上の着眼点や方法に関する意見交換の機会をこれまで以上に活用したい。
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Research Products
(28 results)