2012 Fiscal Year Annual Research Report
文明移動としての「仏教」からみた東アジアの差異と共生の研究
Project/Area Number |
23242036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新川 登亀男 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50094066)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
川尻 秋生 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70250173)
大橋 一章 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80120905)
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
大久保 良峻 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30213664)
河野 貴美子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386569)
工藤 元男 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60225167)
高橋 龍三郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80163301)
森 由利亜 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30247259)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 韓国益山 / 中国太原 / イギリス / アメリカ / 舎利 / 石窟 |
Research Abstract |
第一は、研究メンバーによる定例研究会を7回、実施した。この定例研究会は、地味なものであるが、本研究の日常的な基盤をなすものである。第二は、2012年7月14日、日韓合同シンポジウム「百済弥勒寺西塔の舎利奉安からみた『仏教』文明の東方移動」を早稲田大学で開催した。近年の百済故地寺院趾発掘調査のうち、弥勒寺の場合は最新の成果であり、舎利安置の金製板銘文も発見された。韓国の発掘関係者や研究者を招聘し、日本側の研究者との合同研究発表をおこなった。そして、このシンポジウムを基盤にして、2013年3月、本科研費による新川登亀男編『「仏教」文明の東方移動ー百済弥勒寺西塔の舎利荘厳ー』(汲古書院)を刊行した。執筆者は、ペ・ビョンソン、チェ・ヨンシク、ジュ・キョンミ、大橋一章、瀬間正之、稲田奈津子、新川登亀男の各氏。第三は、2012年9月11日~16日、中国西安・太原において仏教・道教遺跡遺物の調査をおこなった。太原では、天龍山・龍山石窟の調査と中国側との学術討論会が予定されていたが、日中関係悪化により、公的な開催は中止された。第四は、2012年9月29日、シンポジウム「畿内における飛鳥・白鳳寺院とその源流」を早稲田大学で開催した。若手研究者による当該寺院跡発掘の成果と課題を報告し合ったものである。第五は、2012年12月22日、国際シンポジウム「『仏教』は、なぜ東漸したのか」を早稲田大学で開催した。困難な課題への挑戦である。第六は、2013年1月26日、シンポジウム「中国占い文化の日本的展開」を早稲田大学で開催し、仏教と諸宗教・習俗儀礼との融合現象に注目した。 以上のほか、2012年10月17日には、イギリスの研究者を招聘して、仏教の身体論に関する講演が早稲田大学で開かれた。さらに、大学院生による日本の関連資料蒐集と整理がすすめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一は、近年判明した百済弥勒寺西塔の舎利安置と舎利銘文を手掛かりにして、日韓合同の学術交換が成果をあげた。東漸する舎利を核とした中国・朝鮮・日本地域の仏教文明の共生と差異を具体的に確認することができ、公表へとつなげた。 第二は、中国太原の天龍山仏教石窟の合同調査と学術交流によって、隋唐の基盤となる中国北朝の仏教文明に近づくことができ、朝鮮・日本地域との大きな差異も確認した。 第三は、仏教東漸シンポジウムにおいて、インド仏教と中国仏教との交錯した重層性や逆流現象を中国雲南省にみることができた。報告者は、ポール・グローナー、侯沖、南東信、宮﨑健司の各氏。コメンテーターは、吉津宜英、大久保良峻、川尻秋生、李成市の各氏。 第四は、シンポジウム開催によって、中国占い文化がどのように日本へ伝わり、仏教と融合したのかを問うことの困難さを自覚すると同時に、あらたな模索を促す契機を得た。報告者は、水口幹記、工藤元男、小林春樹、近藤浩之、山下克明、細井浩志の各氏。 第五は、イギリスの研究者、ルチア・ドルチェ氏からの提言により、仏教文明を身体とのかかわりでとらえる視座を得た。 第六は、基礎データー作成をすすめた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究をさらに進展させ、不十分なところを補強することに努める。その第一は、研究メンバーによる日常的な研究集会を着実に継続していき、相互理解と連携を保ち続ける。 第二は、これまで不足していたインド・東南アジア仏教文明の理解について研究協力を東京大学東洋文化研究所古井龍介氏、馬場紀寿氏らに求め、東アジア諸地域の仏教文明のありかたと比較検討しながら、さらにグローバルな視座を得たい。そして、中国仏教を相対化しながら、本研究課題のあらたなパラダイムをさぐっていきたい。 第三は、仏教と諸宗教・民俗儀礼などとの融合や交差について民間社会の現象に注目し、その適切な理解の仕方を具体的な事例に即して再考したい。 第四は、日本の仏教受容について、これまで曖昧であった史料分析の見直しをすすめ、考古遺物をも含めた史資料の正確な解析と再構成を新研究分担者の城倉正祥氏を中心に試みる。同時に、基礎史資料の蒐集と整理に努める。そして、以上の課題と成果を出来るだけ公表したい。
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Research Products
(46 results)