2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23243009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂元 茂樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (20117576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 明穂 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (00273954)
林、 美香 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (60362810)
玉田 大 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (60362563)
小寺 彰 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80107490)
浅田 正彦 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90192939)
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Keywords | 国際公法 / 訴訟化 / 司法化 / 国際裁判 / WTO / 国際投資仲裁 / 国際刑事裁判所 / 国際人権裁判所 |
Research Abstract |
本年度は、研究の方針についての共通意識を形成するために会合を行い、研究対象の確認や問題意識、研究の分担割当について検討を行った。また、綿密な討論を行い、国際法の「訴訟化」についての多様な見解について調整を行った。その成果は以下の通りである。 第1に、分析対象となる判断機関が多様である点である。ICJ等の司法裁判機関だけでなく、WTOや国際投資仲裁、人権裁判所、海洋法裁判所、刑事裁判所、環境分野の不遵守手続が想定された。また、他にも軍縮分野における審査手続や勧告的意見手続との比較を行うべきであることが明らかになった。加えて、人権裁判所や国内裁判所等との関係も問題になり得ることが明らかになった。 第2に、「訴訟化」分析において手続面の研究が重要であることが明らかになった。「訴訟化」の共通点として、手続法(手続的統制)の充実化が指摘された(具体的には、対審構造、上訴手続、手続の透明性、迅速性、平等性、公開性、第三者参加やアミカス手続など)。これらの要素が判断機関の判断の正当性や説得力を高めていることが想定される。 第3に、先例拘束原則の確立によって、紛争処理機関の判断が独自の重要性を有することが指摘された。国際法上は一般に紛争処理フォーラムの個別性が強く、個別事件も分断されており、先例拘束性が強くない。ところが、近年は仲裁判断でも先例「拘束」的な側面が強ぐ出されており、さらに、伝統的に先例拘束原則が否定されてきたICJにおいても「判例法」(case-law)が明示的に認められるに至っている。こうして、個別の単独の判断機関が徐々に判断蓄積によって独自の法体系を形成し、さらにそれらが相互影響を及ぼすことによって、国際法全体に大きなインパクトを与えていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国際裁判の「訴訟化」について研究代表者と研究分担者の間で綿密な意見交換を行い、議論の前提となる「訴訟化」概念や国際裁判の類型について掘り下げた議論ができた。また、本研究を通じて議論すべきテーマや論点についても広く見解を享有することにより、研究全体の方向性が定まったと言えるから。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、去年度に引き続き、研究全体の枠組み設定のための議論を何度か行う。とりわけ、分析対象として候補に挙がっている国際人権裁判所や国際投資協定仲裁など、「国際裁判」概念で捉えるためにはやや補足的説明を要するものが残っている。また、国際軍縮法においては「訴訟化」が進んでいないと考えられていたが、研究分担者の指摘により、一部には「紛争」解決又は処理のための対審構造が構築されており、ADRとして研究範囲に含められることが分かった。その他、理論的な分析の軸についても分担者の間で多くの議論が出ており、本年度はこの点の調整を要するものと思われる。
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Research Products
(31 results)