2011 Fiscal Year Annual Research Report
中間組織の形成過程と経済的機能;アジアとアフリカに関する歴史的・理論的研究
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23243033
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
寺西 重郎 日本大学, 商学部, 教授 (70017664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 聖 日本大学, 商学部, 准教授 (40336699)
飯野 文 日本大学, 商学部, 講師 (00521288)
浅田 義久 日本大学, 経済学部, 教授 (70299874)
曽根 康雄 日本大学, 経済学部, 准教授 (00459851)
安藤 至大 日本大学, 総合科学研究科, 准教授 (80377126)
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Keywords | 市場経済化 / 近代化 / 自生的市場秩序 / 利益集団 / 個人の能力 / 非対称情報 / 契約の不完備性 / 個人間の信頼 |
Research Abstract |
平成23年度の研究は対象各国と国際比較及び理論的な意味での経済社会システムの近代化開始時点における中間組織の変容と役割を分析することであり、この問題についての基本的分析視角の統一に関して準備的作業を中心に行った。 研究の中心的対象は、個別的歴史研究・理論研究・クロスカントリー研究のいずれのグループでも近代化過程に関する市場経済システムの成立のインパクトとそこにおける中間組織の役割である。特に市場経済化のインパクトが個人の最適化行動と市場秩序のみにより解決しうるかどうか、が問題の焦点となる。ハイエクは、無知で貧欲で怠惰な個人であっても市場システムの中で活動すれば、自生的に秩序を形成すると論じが、多くの国は近代化以前において、それぞれの伝統的な経済社会システムを与件として持っており、近代化に伴う市場経済の成立はいわば外生的な衝撃である。個人の経済行動は伝統的な慣習や文化に縛られており、近代的な市場経済に適合したものとは必ずし言えない。個人が市場経済化のインパクトをどのように受け止め、個人の経路依存的能力と市場が要請する能力の間のギャップをどのように"自生的秩序"と中間組織が役割分担して解決したかが問題なる。第一に、中間組織は、ポジティブには、市場の情報的不完全性を補完しコーディネーションの失敗を補正する機能を持つ。しかしネガティブには、中間組織は独占的行動による市場失敗や利益集団行動を通じる政策のゆがみをもたらす。この二つの効果を所与の個人の能力に基づく自生的秩序の機能と比較することが今後の分析の焦点となる。第二に、中間組織の効率性は個人の能力とともに、個人間の知己関係の程度を所与として、個人間の信頼関係にも依存する、個人が相互に信頼関係で結ばれているときにはそうでないときに比べて中間組織形成は容易であろうが他方で中間組織形成の必要度も少ないと考えられる。市場経済化におけるこの二つの問題が問題の焦点となり、分析の出発点となることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択の決定が遅れたことにより、当初予定された作業はかならずしも十分になされてはいない。しかし中間組織の範囲及び定義と、基本的分析視角の統一という最も基本的は準備がほぼ完了したので、今後の研究の進行はスムーズであると期待される。また3グループとも基本的な先行研究のサーベイ作業はほぼ完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
近代化初期ないし市場経済化の時点だけでなく、市場経済化が進展する中での中間組織の分析を行う。個人の能力と個人間の信頼関係が、中間組織の形成・タイプと機能の仕方にどのようにかかわっているかを、3グループそれぞれの方法で分析する。対象とする問題は膨大であるが、メンバーそれぞれによる問題点の絞り込みが進んでいるので、十分な成果が期待される。
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Research Products
(4 results)