2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23243042
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
青木 玲子 一橋大学, 経済研究所, 教授 (10361841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 貞男 一橋大学, 商学研究科, 教授 (00255952)
武藤 滋夫 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (50126330)
大和 毅彦 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (90246778)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 標準と標準化 / 特許 / 技術革新 / パテントプール / ライセンス / イノベーション / 国際研究者交流(仏、豪、台湾、蘭) / 国際情報交換(仏、蘭、英) |
Research Abstract |
青木らは、複数のパテントプール(PP)の内外企業が投資をした後、新PP結成が可能なモデルを構築・分析した。その結果、ネットワークの惰性がアウトサイダーの利益を増やしたり、PPに入れる可能性がアウトサイダーの投資喚起することなどが判明した。つまり、PPは長期的にも望ましいのである。また、Lerner & Tirole(2004)のPPモデルの拡張で、新特許が出現しても既存の契約を変更しない場合を分析した。特許が補完(代替)的であるとPPが不安定(安定)で、L&Tと逆であることが判明した。 長岡らは、公的標準を中心に、標準化団体毎の標準の技術分野別データを構築し、標準の改訂、代替、撤回などの頻度を分析した。日米独公的標準では、独が撤回の頻度が最高、日本は米国より改訂の頻度が高いが、代替の頻度は低いことなどが判明した。また、ブルーレイ標準化活動が、技術者の生産性に及ぼす影響を特許データを用いて検証し、標準化活動が中心的な発明者の生産性を低下させる可能性が示唆された。これは標準化活動が研究開発以外のタスクを中心的な発明者にもたらすためだと考えられる。また、標準化活動に携わった技術者へのヒアリングを行い、標準化活動の概要や影響を調査した。 武藤・大和らは、企業間での特許ライセンス交渉について,これまでの譲渡可能効用(TU)協力ゲームによる分析では明らかにできなかった一括支払い方式と生産高依存支払い方式の違いについて,譲渡不可能効用(NTU)協力ゲームによる定式化による分析を行い新たな知見を得るとともに、ライセンス価格設定による売買方式との違いを明らかにした。標準化団体結成行動については,まず,様々な経済システムにおける団体結成行動を詳細に分析した。次いで、標準化のケースに特有な性質を明らかにして、それを基に団体結成行動のモデルを構築するとともに、ゲーム理論の解を適用した場合の理論的結果とモデルに沿って実験を行った場合との違いを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青木らは、アウトサイダーとインサイダーがそれぞれ投資を行い、研究開発の成功・不成功によりPPが再編成され、立場が逆になるモデルの構築とシミュレーション分析に成功した。それによって惰性の強さや成功確率と投資との関係が把握できた。既存文献では、投資行動とPP構成のどちらかが外生的であり、内生化はPPと投資の長期的な関係と経済効率を理解するためにやらなくてはならないことである。また、既存研究で前提とされてきた、ライセンス契約の柔軟性が既存文献の分析結果にとって重要な仮定であることがわかった。しかも契約の改訂には時間と機械費用がかかり、ある程度硬直的で、現実的で重要であると考えられる。 長岡らは標準のデータベースを構築し、その記述統計を整備し、今後の統計的な分析への準備を進めることができた。また、標準文献の特許文献における引用についても試行的なアルゴリズムを開発することができた。とくに、分析に社会ネットワーク理論を導入するために、その理論や先行研究の調査に時間がかかったが、統計的な分析を行い、論文の骨格を固めることができた。 武藤・大和らは、ライセンス交渉に、TUだけでなく、NTU協力ゲームの定式化を新たに与えたことにより様々なライセンス方式における主体間の交渉の影響を詳しく分析できるようになった。また、標準化団体結成行動においても、さまざまな提携形成ゲームモデルを分析し、その結果の妥当性を被験者を用いて検証するための予備実験を行った。 また、4回の「標準と技術のライフサイクル、世代交代と周辺課題 国際ワークショップ」を開催して内外の研究者と報告と討論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
青木らは、平成25年度までの研究において、ライセンス契約の柔軟性が既存文献の分析結果の重要な仮定であることを、協力ゲーム的考え方を用い突き止めた。そのため平成26年度は、ライセンス契約が硬直的で新しい特許ライセンスを制限する場合を、さらに深く掘り下げる。また、平成25年度の既存企業が標準を支配している場合の新規参入モデルで、外生的だったスウィッチングコストを内生化する。内生化により、本アプローチの新規性である受け身の参入企業の含意を追及し、投資行動や参入阻止行動と惰性の関係を明らかにする。 長岡らは、標準のデータと特許データのリンケージを、技術分野(標準と特許)及び引用関係を利用して構築する。そのデータと、標準のライフサイクルについて既に構築しているデータを利用して、それが民間標準の存在、国際的な標準のレフェレンス関係、技術分野別の技術進歩のスピード等によってどのように影響されているかを分析する。 また、社会ネットワーク理論に加え、プロジェクト特性アプローチ(例えば、ゲートキーパーの役割)の先行研究を整理する必要がある。その上で、分析をより精緻化し、論文を完成させることを予定している。 武藤・大和らは企業のライセンス交渉については、本研究において進めてきたライセンス交渉の協力ゲームからのアプローチによる結果と、従来の価格設定売買ライセンス方式の非協力ゲームによる分析結果を基に、交渉によるライセンスの経済学的意味を一層明らかにする。標準化団体結成については、これまでの提携形成モデルを実験を通してブラッシュアップするとともに、将来のことを考慮に入れた先見的行動を各主体がとった時にどのような状態に到達するかについて、理論・実証の両面から分析を進める。 平成26年度はプロジェクトの最終年度であるので、大規模な国政ワークショップを開催して、研究成果を発信すると同時に批判と討論を通じて改良する。
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