2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会的排除としてのwell-being格差とソーシャル・キャピタルの研究
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23243070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
近藤 克則 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20298558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 尚己 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345705)
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
山崎 喜比古 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (10174666)
三澤 仁平 立教大学, 社会学部, 助教 (80612928)
鈴木 佳代 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 主任研究員 (90624346)
中川 雅貴 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 研究員 (80571736)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 健康寿命 / ソーシャル・キャピタル / 社会疫学 / 格差 |
Research Abstract |
格差社会とストレスと健康の関連について先行研究をレビューし,格差社会から健康格差に至る影響経路にはストレスフルなライフイベントのような個人レベルおよび不安定雇用や拡大する社会経済格差のような社会レベルの両者が含まれること,ソーシャル・キャピタルと相対的欠乏が社会レベルの経路に位置づくことなどを明らかにした(近藤克則).15,726人の横断データの分析では「自らの排除」の一形態として健診未受診/受診に着目した.受診者は高所得層では男性で1.57倍多かったが女性では有意ではなかった.「将来の楽しみ」は「ある」人の方が多く受診しており,オッズ比は男性1.25,女性1.45で,うつよりも強い関連を示した.高所得層で「将来の楽しみ」がない人よりも低所得でも楽しみが「ある」人の方が受診していることなどを明らかにした(芦田ほか).13,310人の高齢者を対象にした4年間の追跡研究では,死亡率が社会的排除状態では9~34%増え,他の関連要因調整後にも1.29倍多いこと,日本の高齢者全体では9,000~44,000人の死亡が社会的排除との関連が推定されることなどを明らかにした(Saito, et al).22,829人の縦断研究によって,保険料区分データを用いた分析では女性でも有意な健康格差を認めるが,低所得ほど無回答者が多いため,回答者のみを用いた分析では女性の健康格差が有意でなくなることなどを明らかにした(Hirai, et al). 上記の論文などから,回答者データの分析では健康格差が過小評価されること,日本人女性では健康格差が小さいことから健康格差の縮小は可能であること,個人レベルでは将来の楽しみを増やすこと,社会レベルではソーシャル・キャピタルを豊かにすることや教育・労働・所得保障政策など「すべての政策において健康の視点を」(WHO) 入れることが必要であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存データを用いた分析は順調に進展し,2013年の大規模調査についても,約25市町村から協力を得られる見通しが立てられた.
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Strategy for Future Research Activity |
1.既存データを活用した分析と,2.2013年度の大規模調査の準備・実施を行う 1.既存データを活用した分析 社会的排除が健康寿命や要介護リスクなどwell-being(幸福・健康)が損なわれるプロセスにおいて,どのように関与しているのかを横断分析と縦断分析を組み合わせて検討を進める.一方,well-being格差の是正策を探るため,社会参加による社会的サポート・ネットワークなどソーシャル・キャピタル関連指標やストレス対処能力SOCが健康保持と関連しているか,格差を緩和しているか,その関連の大きさはソーシャル・キャピタルの指標間で異なるのかなどの検討を進める. 2.2013年度の大規模調査の準備・実施 2003年度以降,保険者が介護保険事業計画を立案するために行う調査を兼ねる形で調査を共同実施してきた.2010~11年度も,他の研究費や保険者に負担してもらう費用を用いて合計31自治体の高齢者約11万人から回答を得ることができた.今年度,これらの自治体の多くが,第6期介護保険事業計画の立案に向けた調査を行う年度となるので,再び協力をお願いしてパネル調査を行う.その準備として,調査の必要性や意義を理解してもらうため,保険者向けの説明会を行う.その中では,保険者である自治体の関心の高い介護予防のためのコホート研究や生活圏域毎の介護予防ニーズと資源に着目した2010年度調査データの分析結果を自治体にフィードバックする.
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Research Products
(4 results)