2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23244083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田沼 肇 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30244411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センダー, 准教授 (50361837)
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (90311993)
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Keywords | 原子・分子物理 / X線天文学 / 化学物理 / 太陽物理学 |
Research Abstract |
首都大では,多価イオンを生成するする電子サイクロトロン共鳴型多価イオン源のイオン引き出し電極を改良して,5kV程度の電位差でも効率よく引き出すことに成功した。また,気体標的との衝突実験槽を製作し,この中にイオン減速用レンズ系を設けることで,太陽風と同程度の速度にまで多価イオンを減速できるようになった。この装置に新たに購入した半導体検出器を設置し,電荷移行衝突後に多価イオンから放出される軟X線発光スペクトルを測定した。太陽風に含まれる7価の酸素原子イオン,5価の炭素原子イオンなどについて,水素分子およびヘリウム原子を標的として測定を行い,数百eV程度のエネルギー領域での発光を観測した。過去に測定例があった系については定性的に一致したが,検出器に余分なフィルターがない分,信頼性が遙かに高い結果が得られた。 半導体検出器を越える分解能での測定を行うため,電通大(中村)は分散型の軟X線分光器の開発を開始した。微弱な発光を観測するためには集光用のミラーが必須であるが,仕様の決定と製作会社の探索が困難であった。最終的にはシミュレーションの結果に基づいて円筒型の集光用ミラーを採用することにし,これを用いた新しい設計に基づいて部品の設計と製作を行い,年度内に仮組立まで完了した。 準安定状態の多価イオンを蓄積するイオントラップの開発は上智大(岡田)の担当である。イオン軌道シミュレーションの結果に基づいて,静電場のみでイオンの運動を制御するキングドン・トラップが本研究には最適であるとの結論に達した。トラップだけでなく真空槽やイオン導入レンズ系についても部品の設計・製作を行って,年度内に仮組立を完了して真空排気テストを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多価イオンビームの低速化と半導体検出器による予備実験は予定通りで,測定では予定以上に成果が上がった。分散型分光器の開発については,設計に時間を要したために予定していた予備実験にまで至らなかった。但し,イオントラップについては組立が完了したので,目標を達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
首都大・電通大・上智大の三カ所でそれぞれが平行して計画に沿って着実に装置開発を進めており,H24年度にはそれぞれの装置に関する予備実験が完了する見込みである。それぞれの進捗状況を把握して,議論しながら課題を推進するためのミーティングを適宜行っていく。 但し,震災と原発事故の影響による電力不足から,首都大では真夏の実験が事実上不可能な状態であり,これが大きな問題である。真夏でもシミュレーション,設計,解析などはできるので,効率的に研究が進められるように計画を立てる必要がある。
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