2011 Fiscal Year Annual Research Report
コンプレックスプラズマ中の帯電微粒子とプラズマの相互作用がもたらす物理現象
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23244110
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石原 修 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (20313463)
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Keywords | コンプレックスプラズマ / ダスト / 微粒子 / プラズマ / 相互作用 |
Research Abstract |
実験―シドニー大学のアレックス・サマリアン氏と宇都宮大の斉藤和史氏との共同研究で、横浜国大にある細長いガラス管を用いた装置(YD1)で、微粒子を含んだRFプラズマを生成し、シース上に微粒子クラスターを浮上させ、磁場をかけ、微粒子クラスターを中心付近にデイスク状に形成し、さらに管壁に沿ってもリング状にクラスター形成することができた。中心部と管壁のリングとのクラスターを磁場を変化させることで回転させることに成功した。これは渦巻き状銀河に類似の構造で、回転速度が速くなるにつれて中心付近のデイスクの渦巻きから腕が出て、デイスクとリングがつながっていく現象を見出した。まだ理論モデルは構築できるまでに至っていないが、磁場中のコンプレックスプラズマの挙動については未解明の現象が多く、今後の研究が待たれるところである。この新奇な現象についてはスエーデンの国際会議でユニークなコンプレックスプラズマ実験結果として報告された。YCOPEXと呼ぶ装置では中村良治氏との共同研究で、プラズマ中の微粒子の流れの問題、磁場中での個々の微粒子の挙動について調べた。極低温コンプレックスプラズマ実験は真銅雅子氏との共同研究で、液体ヘリウム表面の電子と帯電微粒子の相互作用についての実験を行った。物理学会にて結果が発表された。理論:コンプレックスプラズマにおける量子効果について、微粒子の帯電過程につて、微粒子周辺のプラズマ粒子が、導体微粒子の表面に作る鏡像がもたらす効果を理論的に解析して論文にまとめた。シドニー大学のセルゲイ・ブラジミロフ氏との共同研究で、量子プラズマの定式化をウイグナー理論の延長として取り組み、古典理論にない新しい量子効果について調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的な展開として、コンプレックスプラズマ中の微粒子の帯電量について、オーストラリアからの共同研究者と、量子効果について議論。議論を通して、プラズマ粒子(電子とイオン)が、導体微粒子の場合には表面近傍に近づくと、量子効果が顕著になり、巨視的な帯電量というところに大きな影響を及ぼす可能性があることを明らかにした。 さらに、コンプレックスプラズマにおける量子効果の巨視的なあらわれについての展開を図る端緒につくことができたと考えている。現在は量子プラズマにおける統計的な方程式系の構築を目指していて、それをコンプレックスプラズマの定式化にどう展開していくかというところまで、達成できたと考えている。 実験については極低温実験装置で見出した、磁場中におけるクラスターの回転について、予想外の実験結果であり、理論的にもまだモデル化すら構築できていないが、宇宙における銀河の回転との関連を思わせる結果で今後の展開を考えている。微粒子の渦巻き現象に関しては、磁場を不均一にして、その大きさを変化させることで実現できた現象であり、国際会議にて報告をすることができた。所期の目的に対しては、おおむね達成できて、結果はスエーデンの国際会議での招待講演はじめ、ポスター発表、国内でも物理学会での招待講演と共同研究者による口頭発表を多く出しており、目標達成は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論:コンプレックスプラズマの量子論的な側面について理論展開を試みる。これまで個々の微粒子の帯電量が、個々のプラズマ粒子が導電性微粒子表面に作り出す鏡像現象が、量子効果を生み出すことを考えたが、量子効果の巨視的な効果についても理論展開を図る考えである。 出発点としてはウイグナーの理論によって量子プラズマの定式化を考え、量子プラズマ中での集団現象を古典的な現象と比較するところから初めて、コンプレックスプラズマに適用したいと考えている。定式化にあたっては、プラズマ中の波動現象が量子効果によってどのような変化を見せるか、特にプラズマ中の非線形現象に注意して理論展開を図るつもりである。 実験:実験的には大型YD2装置により液体ヘリウム蒸気中での微粒子帯電、液面上での微粒子クラスターの実現に向けてさらに実験を続ける。重い微粒子は液体ヘリウム中に沈み、電荷量がいかに変化するかを確かめたい。これまでには帯電微粒子が液体ヘリウム中では、帯電の正負の変化もみられているのでその理論も考察していきたいと考えている。小型のYD3装置を使って、液体ヘリウム表面での微粒子の挙動を詳細に調べる。液面の電子と帯電微粒子の相互作用に焦点を当てるつもりである。常温の実験では磁場中におけるコンプレックスプラズマの挙動を実験的にとらえ、理論モデルの構築を試みたい。特に新奇現象として見出した、渦巻き状回転ダストクラスターについての、理論構築を模索する。分子運動論シミュレーションによる実験結果の再現ができるか試みてみたいと考えている。
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Research Products
(14 results)