2012 Fiscal Year Annual Research Report
コンプレックスプラズマ中の帯電微粒子とプラズマの相互作用がもたらす物理現象
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23244110
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石原 修 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (20313463)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コンプレックスプラズマ / ダスト / 微粒子 / プラズマ / 相互作用 / 液体ヘリウム |
Research Abstract |
プラズマ中に微粒子が共存し、負に帯電したミクロサイズの微粒子は、プラズマ中にクーロン結晶を形成し、シース端で重力と電気力のつり合いにより浮遊させることができる。横浜国大の円筒状真空大型ガラス管YCOPEX(Yokohama Complex Plasma Experiment)装置を使い、管内に水平に置かれたステンレス板上にできるシース上に浮かぶ微粒子クーロンクラスターを形成し、大面積にひろがるクラスターを側面からレーザーを当てることにより可視化して、プラズマパラメータを変化し, 微粒子径や微粒子数を制御して, 高密度の微粒子からなるクーロンクラスターの形成を実現した。装置を傾け,重力を利用することにより,クラスターに流れを作り,ダスト音波速度以上の超音速流を作り出し,ポテンシャル障壁により衝撃波面(バウショック)を作り出すことに成功し、微粒子結晶中を伝わる波の格子波、ダスト音波について検証した。バウショック前面における粒子密度の測定から、ランキン・ユゴニオ理論と比較した。また分子運動論による粒子シミュレーションにより、バウショック形成の実験結果を再現できることを示した。結果は物理学会、スエーデンでの国際会議で発表された。また分子運動論のシミュレーションにより、コンプレックスプラズマ中でのダスト粒子による、1次元鎖形成、2次元ジグザグ構造、3次元二重らせん構造ができることを示し、格子モデルを用いて理論的に構造変化の起こる臨界条件を見出し、コンピュータ実験結果を説明した。これは米国プラズマ専門誌に発表されるとともに、スエーデンで招待講演にて紹介された。YD(Yokohama Dewar)装置による、液体ヘリウム蒸気中での微粒子の帯電量測定は、常温プラズマ中での帯電現象の理論予測とはかなり異なり、量子効果を考慮した理論を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)コンプレックスプラズマにおける常温実験研究は予想以上の成果を上げた。衝撃波面(バウショック)形成実験は分子運動論によるシミュレーションを使って実験の再現をすることができた。成功のカギは微粒子クラスターを2次元的に大きく広げて生成することができたこと、2次元的に浮上させた微粒子に重力効果を利用して流れを作ることができたことである。実験結果は物理専門誌フィジカルレビューレターに掲載された。 (2)分子運動論シミュレーションによるコンプレックスプラズマ中での2重らせん構造の発見は、予想以上の成果であると考えている。シミュレーションで見いだされた位相変化の臨界条件について、理論的に予測されたものと完全に一致することができた。この成果はプラズマ専門誌フィジックスオブプラズマに掲載された。 (3)極低温実験は微粒子の電荷の測定はできたものの、理論との一致はまだ見られない。実験結果、理論もまだ不十分なところで、最後の一年でさらに展開を図りたい。 (4)極低温実験装置で見出した、磁場中におけるクラスターの回転については、予想外の実験結果であり、理論的にもまだモデルすら構築できていないが、宇宙における銀河の回転との関連を思わせる結果で今後の展開を考えている。 (5)量子プラズマの定式化をウイグナー理論の延長として取り組み、古典理論では見いだせなかった新しい量子効果について議論した。プラズマ中の不安定性が量子効果を伴って新しく発生することを突き止めた。
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Strategy for Future Research Activity |
理論:コンプレックスプラズマの量子論的な側面について理論展開を試みる。これまで個々の微粒子の帯電量が、個々のプラズマ粒子が導電性微粒子表面に作り出す鏡像現象が、量子効果を生み出すことを考えたが、量子効果の巨視的な効果についても理論展開を図りたい。 出発点としてはウイグナーの理論によって量子プラズマの定式化を考え、量子プラズマ中での集団現象を古典的な現象と比較するところから初めて、コンプレックスプラズマに適用したいと考えている。定式化にあたっては、プラズマ中の波動現象が量子効果によってどのような変化を見せるか、特にプラズマ中の非線形現象に注意して理論展開を図るつもりである。 実験:実験的には大型YD2装置により液体ヘリウム蒸気中での微粒子帯電、液面上での微粒子クラスターの実現に向けてさらに実験を続ける。重い微粒子は液体ヘリウム中に沈み、電荷量がいかに変化するかを確かめたい。これまでには帯電微粒子が液体ヘリウム中では、帯電の符号の変化もみられているのでその理論も考察していきたいと考えている。小型のYD3装置を使って、液体ヘリウム表面での微粒子の挙動を詳細に調べる。液面の電子と帯電微粒子の相互作用に焦点を当てるつもりである。常温の実験では磁場中におけるコンプレックスプラズマの挙動を実験的にとらえ、理論モデルの構築を試みたい。特に新奇現象として見出した、渦巻き状回転ダストクラスターについての、理論構築を模索する。分子運動論シミュレーションによる実験結果の再現ができるかも試みてみたいと考えている。
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Research Products
(14 results)