2012 Fiscal Year Annual Research Report
膜超分子べん毛モーターの動的構造変換と機能発現の研究
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23247024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本間 道夫 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50209342)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | べん毛 / エネルギー変換 / モーター / イオン透過 |
Research Abstract |
本申請は、ナトリウム駆動型べん毛モーターのエネルギー変換ユニットである固定子におけるイオン透過時のダイナミックな構造変化と、回転子相互作用を解明することを目的としている。MotB (PomB)の膜貫通領域にはNa+結合部位として、高度に保存されたアスパラギン酸残基が存在する。このアスパラギン酸をアスパラギンに置換したPomB-D24Nは運動能欠損となるが、最近になって、PomA-N194D変異がこの運動能欠損を回復させることを報告した。このPomB-D24N/PomA-N194変異体の運動能は非常に弱く、より運動能の高い変異体の取得が試みられた (sp1, sp2, sp3, sp4)。これらの変異体は染色体上にup-motile変異があることが推察されたが、べん毛関連遺伝子に変異が見つからなかったため、同定することはできなかった。そこで、次世代シーケンサーを用いてゲノム解析を行い、up-motile変異を同定した。sp1とsp2についてゲノム解析を行ったところ、sp1、sp2ともにATP合成酵素のaサブユニットに変異が同定された(sp1はA214V、sp2はE174ochre)。ゲノム解析の結果と、Δa subunit株がup-motileになることから、ATP合成酵素のaサブユニットに変異が入ることで,運動能が上昇することを明らかにした。Na+低濃度において、Δa subunit株の遊泳速度は、NMB191株よりも50~80%速いこと、また、KCN存在下ではこの高い運動能が抑制されることから、up-motileの原因として、aサブユニットの変異により、FoF1ATP合成酵素が機能しないため、呼吸鎖により形成されるH+の電気化学ポテンシャル差が解消されず膜電位が上昇し、結果としてNa+駆動力が上昇すると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画について、若干の変更はあるものの、本年度は特にイオン透過能に関する研究成果をえることができ、この結果を論文にまとめて投稿している。固定子蛋白質の精製を行いインビトロでリポソームにその蛋白質を組み込み、ナトリウムイオンの透過能測定を行っている。条件検討を行い、まだ明確な結果は得られていないが、着実に測定に向けて進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
リポソームに精製して固定子複合体タンパク質をリポソームに再構成する計画は、複合体が安定に収量よく得られる必要がある。これに関して、コールドショックベクターを用いて、界面活性剤の濃度と種類を検討することで、大きく改善できた。おおむね順調に計画は進行しているので、大筋で、これまでどおりに進める。
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