2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科作物の発生・形態形成を司る制御機構の解明と分子育種への展望
Project/Area Number |
23248001
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 博之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192716)
|
Keywords | 中肋形成 / 護穎 / 発生・形態形成 / DL遺伝子 / G1遺伝子 / 苞葉 / 小穂 / イネ |
Research Abstract |
分子育種による品種改良を展望して,イネ科作物の発生と形態形成の遺伝的プログラムと分子機構を解明することを目的として研究を行った. 1.葉の中肋形成の鍵遺伝子であるDROOPING LEAF遺伝子の弱いアレルの表現型を,昂進あるいは抑圧する変異体のスクリーニングを行い,2つの昂進変異体と1つの抑圧変異体を単離した.また, DL 遺伝子の下流遺伝子を同定する目的で,P2 とP3 の中肋形成予定領域の組織をLMDで切り出し,ここから単離したRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った.dl-sup1 変異体より野生型で高く発現している175個の遺伝子を抽出し,そのうちの十数個の遺伝子について,in situ ハイブリダイゼーションなどによる空間的発現パターンの解析を行った. 2.小穂器官のひとつである護穎のアイデンティティーを決定するG1タンパク質と相互作用する因子の探索を行った.また,g1変異が抑圧された2重変異体 (g1 sug1) の表現型解析を行い,抑圧遺伝子sug1の効果を調べた.sug1 遺伝子をポジショナルクローニング法により単離することを目的として,Kasalath (g1) と g1 sug1との交配を行い,F2種子を得た.さらに,他のイネ科植物におけるG1遺伝子の機能を解明することを目的として,トウモロコシの G1オーソログのノックアウト候補を単離し,遺伝的バックグラウンドを調整するための交配を行った. 3.穂首苞葉が伸長した nl1 変異体の表現型解析を行った結果,伸長した苞葉は,葉の葉鞘の性質を持っていることが明らかとなった.また,苞葉伸長が見られる nl2 変異体など他の苞葉伸長変異体と較べることにより,NL1 遺伝子が苞葉の抑制に関する大きな効果を持っていることが判明した.さらに,ポジショナルクローニング法による NL2 遺伝子の単離を試み,候補を絞り込んだ.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DL遺伝子については,遺伝学的および分子生物学的研究が進み,中肋形成を制御する遺伝子ネットワークの構成因子を見い出しつつある.また,護穎形成については,g1 サプレッサー (sug1)の性質の一部を明らかにするとともに,遺伝子単離の準備を整えることができた.苞葉形成については,NL1遺伝子の作用を解明し,遺伝子の単離もほぼ完了しつつある.
|
Strategy for Future Research Activity |
DLの下流で機能すると考えられる遺伝子の空間的発現や形質転換体作製によるその機能の解明を行う.g1サプレッサーのマッピングを進め,遺伝子単離を目指す.NL2の候補遺伝子が確かにNL2遺伝子であることを確証するとともに,NL1などとの遺伝的相互作用を検討する.
|
Research Products
(6 results)