2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを用いた難治性消化器疾患の病態解明と新規診断・治療法の確立
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23249043
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坪内 博仁 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60145480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都 浩文 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (20347058)
井戸 章雄 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30291545)
桶谷 眞 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50274816)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プロテオミクス / C型慢性肝炎 / HCV / AIM / 補体C4断片 / ヒト好中球ペプチド / 膵炎 / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
本研究では、プロテオーム解析法を用いて難治性消化器疾患と関連する蛋白を同定し、同定した蛋白の臨床的意義や病態との関連を明らかにすることで、診断法や治療法の臨床応用を目指す。特に、24年度は、肝疾患と関連する蛋白としてアポトーシス抑制因子(AIM)、補体断片、ヒト好中球ペプチド(HNP-1)を中心に解析を進めた。 肝生検を施行したC型慢性肝炎の血清AIM、レプチンおよびアディポネクチン濃度を測定し、肝生検所見との関連を検討した。肝線維化進行例(F2以上)は軽度例(F1以下)と比較して、血清AIM濃度は有意に高値で、AIMは肝線維化進行の独立した予測因子であった。一方、脂肪肝を認めるC型慢性肝炎症例ではレプチンは高く、アディポネクチンは低値であったが、AIMは差がなかった。また、HCV持続感染者の血清プロテオミクスで、補体C4の断片が血清中に増加していることを見出した。そこで、血清をアセトン沈降後、C4ポリクローナル抗体を用いてwestern blotを行うと、約17kDaのペプチドがHCV感染者血清中に多く存在し、HBV感染者や健常者血清中にはほとんど検出しなかった。さらに、抗ウイルス療法を施行したC型慢性肝炎患者の治療経過中の血清を解析すると、約17kDa のC4断片は著効患者では治療経過中に有意に減少するのに対し、無効患者では治療前と治療中で有意差はなかった。一方、HNP-1トランスジェニックマウスに肝線維化もしくは膵炎を誘導すると、肝線維化もしくは膵炎は増悪した。 以上のことから、C型慢性肝炎ではAIMは肝線維化と密接に関連すること、HCV感染患者血清中に認められた約17kDaのC4断片は、インターフェロン治療効果と関連し、抗ウイルス治療時の新しい分子マーカーとなる可能性があること、HNP-1は肝線維化や膵炎の増悪に寄与する可能性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、プロテオーム解析法を用いて難治性消化器疾患と関連する蛋白を同定し、同定した蛋白の臨床的意義や病態との関連を明らかにすることで、診断法や治療法の臨床応用を目指している。24年度までに、C型慢性肝炎ではAIMは肝線維化と密接に関連すること、HCV感染患者血清中に認められた約17kDaのC4断片は、インターフェロン治療効果と関連し、抗ウイルス治療時の新しい分子マーカーとなる可能性があること、HNP-1は肝線維化や膵炎の増悪に寄与する可能性があることを明らかにした。炎症性腸疾患での解析が不十分ではあるが、肝疾患などを中心に、プロテオミクスで同定したタンパクの臨床的意義を検討し、病態との関連も明らかにしつつあり、区分(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今までに、プロテオーム解析法を用いて難治性消化器疾患と関連する蛋白をいくつか同定しており、今後は同定した蛋白の臨床的意義や病態との関連を明らかにすることで、診断法や治療法の臨床応用を目指す。具体的には、下記の通りである。 1.AIMトランスジェニックマウス、HNP-1トランスジェニックマウスを用いて、AIMおよびHNP-1が難治性消化器疾患の病態にどのように関連するかを明らかにする。 2.AIMおよびHNP-1が臓器線維化とどのように関連するかを、in vitroおよびヒト由来試料を用いて明らかにする。 3.補体C4断片とHCVセリンプロテアーゼとの関連をレプリコンシステムなどを用いて、明らかにする。 4.炎症性腸疾患におけるHNP-1やフィブリノペプチドAの臨床的意義の検討を継続する。 5.同定した蛋白の濃度測定が診断法として有用かどうか、同定した蛋白の制御が治療へ応用出来るかどうかについて、検討する。
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