2011 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞の維持と再発・治療抵抗性に関わる遺伝学的基盤の解明
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23249052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 誠司 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60292900)
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Keywords | 白血病 / 幹細胞 / 遺伝子変異 / エピゲノム / RNAスプライシング / 治療抵抗性 / 全ゲノム解析 / 再発 |
Research Abstract |
1)全エクソンシーケンスによる難治性白血病における治療標的変異分子の同定に関して、本年度、20例の急性骨髄性白血病(AML)について、全エクソンリシーケンスを行い、AMLにおけるRNAスプライシング因子(二次性AMLの約25%,Yoshida K,et al.,Nature,2011)、その他のエピゲノム制御因子を含む新たな遺伝子変異の同定に成功した(投稿中)。とくに、前者については、その機能的な解析も含めて、RNAスプライシングに関わる一群の因子の変異ががんで変異を来していることを初めてあきらかにした成果であり、世界的に極めて高く評価されている。 2)治療抵抗性・再発に関わる白血病の遺伝的多様性の解析については、初診時および再発時両方の試料が保存されているAML5例についてゲノムDNAを抽出し、全エクソン解析を行った。これらの解析結果からは、1)再発時にはしばしば初発時に認められる遺伝子変異に加えてあらたな遺伝子変異が付け加わること、従って変異遺伝子数の増加がみとめられること、2)一方、これまでの解析からは、初発時に変異が生ずる遺伝子と再発時に変異がみとめられる遺伝子には明確な特異性は認められないこと、また、再発時に出現する新たな変異はしばしば初診時に既にマイナークローンとして検出されることが明らかとなった。 3)220例のJALSG保存試料について高速シーケンサを用いた80遺伝子のターゲットシーケンスを行い、これまで白血病で報告されている遺伝子の包括的な解析を行った。今後の予後解析等を含めて臨床パラメータとの関連解析によって、白血病の再発や治療抵抗性に関わる遺伝子変異の同定が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)AMhのゲノム解析については、既に予定の30例のうち当初の計画を上回る20例について解析が完了し、新たな遺伝子変異が複数同定されている。 2)BarCodeシーケンスについてはJALSGコホート220例について80遺伝子を標的としたターゲットシーケンスが終了している。ただし、技術的な問題(サンプル処理の自動化システムのトラブル)から、変異のSangerシーケンスによる検証および予後を含めた相関解析は年度内に完了することができず、3ヶ月程度の遅れが生じている。 3)エビゲノム解析については、資金的な問題から今回の研究の主要項目として遂行することは不可能と考えられた。ただし、本年度の解析によって、エピゲノム制御に関わる新たな遺伝子変異が多数同定されており、白血病におけるエピゲノム異常が本質的にこれらのエピゲノム制御に関わる遺伝子変異による可能性が示唆された。このことは本分野における重要な発見であって、本研究の趣旨に成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)3年間の交付基準額の当初の申請の70%となったことから、研究計画の一部については変更が必要と考えられる。当初の申請で計画したA)B)C)の3つの項目のうち、C)の遂行については他の競争的資金の獲得を図ることとして、研究をA)B)に集約することが必要である。 2)A)については、現在の国際的な競争に鑑みてゲノムシーケンスの対象を急性骨髄性白血病(AML)に集約し、また治療標的となる変異分子の同定の感度を上げる目的で、全ゲノム解析を行う症例は5例程度にとどめ、全エクソン解析をできるだけ多数の試料について実施することとした。 3)また、再発例のみの解析では再発に重要な変異の同定が困難であると予測されることから、BarCodeシーケンスについては予後料行群も含めて解析する必要があると考えられる。 4)B)再発や治療抵抗性に関わる遺伝子をより多数同定するためには、当初計画した1例のみの解析では不十分である。そこで、少なくとも5例の再発例について全エクソンシーケンスを行うこととし、一方、再発例で同定された変異については、平均解析深度を当初計画した深度の10倍の10000を目標として実施する。
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[Journal Article] Novel splicing-factor mutations in juvenile myelomonocytic leukemia2012
Author(s)
Takita J, Yoshida K, Sanada M, Nishimura R, Okubo J, Motomura A, Hiwatari M, Oki K, Igarashi T, Hayashi Y, Ogawa S
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Journal Title
Peer Reviewed
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[Journal Article] Aberrant activation of ALK kinase by a novel truncated form ALK protein in neuroblastoma2011
Author(s)
Okubo J, Takita J, Chen Y, Oki K, Nishimura R, Kato M, Sanada M, Hiwatari M, Hayashi Y, Igarashi T, Ogawa S
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Journal Title
Peer Reviewed
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[Journal Article] Polycomb-Mediated Loss of miR-31 Activates NIK-Dependent NF-kap paB Pathway in Adult T Cell Leukemia and Other Cancers2011
Author(s)
Yamagishi M, Nakano K, Miyake A, Yamochi T, Kagami Y, Tsutsiuni A, Matsuda Y, Sato-Otsubo A, Muto S, Utsunomiya A, Yamaguchi K, Uchimaru K, Ogawa S, Watanabe T
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Journal Title
Cancer cell.
Volume: 21
Pages: 121-135
Peer Reviewed
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[Journal Article] Frequent pathway mutations of splicing machinery in myelodysplasia2011
Author(s)
Yoshida K, Sanada M, Shiraishi Y, Nowak D, Nagata Y, Yamamoto R, Sato Y, Sato-Otsubo A, Kon A, Nagasaki M, Chalkidis G, Suzuki Y, Shiosaka M, Kawahata R, Yamaguchi T, Otsu M, Obara N, Sakata-Yanagimoto M, Ishiyama K, Mori H, Nolte F, Hofmann WK, Miyawaki S, Sugano S, Haferlach C, Koeffler HP, Shih LY, Haferlach T, Chiba S, Nakauchi H, Miyano S, Ogawa S
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Journal Title
Nature.
Volume: 478
Pages: 64-69
Peer Reviewed
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