2012 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋島嶼部におけるマイノリティと主流社会の共存に関する人類学的研究
Project/Area Number |
23251021
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70323219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 栄二郎 島根大学, 法文学部, 准教授 (10533284)
飯高 伸五 高知県立大学, 文化学部, 講師 (10612567)
倉田 誠 近大姫路大学, 看護学部, 講師 (30585344)
安井 眞奈美 天理大学, 文学部, 教授 (40309513)
市川 哲 立教大学, 観光学部, 助教 (40435540)
丹羽 典生 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60510146)
柄木田 康之 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (80204650)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 准教授 (20454332)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 共存 / マイノリティ / エスニシティ / 移民 / ジェンダー / 障害者 / 太平洋島嶼部 |
Research Abstract |
本研究は、太平洋島嶼部における多様なマイノリティと主流社会との共存関係を追究し、その特徴を明確化する。そのため、ポリネシア・ミクロネシア・メラネシアの広範な地域を横断して、各研究分担者が集中的な実地調査を行い、文献資料ならびに民族誌資料を蓄積して分析・考察を行う。 本年度は、代表者・分担者が継続して海外実地調査を行った。丹羽はフィジーにおけるバヌアツ系住民の居住地において面談調査を行い、貴重な情報を得た。柄木田は、グアムにおけるヤップ離島出身者の調査を行った。グアムで移民が客死した場合、遺体を本国に移送するために移民ネットワークを通じて献金を集積し、死者の親族を支援するという興味深い事例の情報を得た。飯高は、旧南洋群島のパラオにおける日本人とパラオ人との「ハーフ」の処遇について、埋葬地の場所に着目して調査資料を収集した。市川は、パプアニューギニアにおける中国系移民が、親族関係にある現地住民に取り込まれながら順応していく方策を検討した。桑原は、タヒチの幼児がフランス人に養取され、フランス本土に移住して成長するという、従来見落とされていた事象の追究を始めた。安井は、ソロモン諸島で開催された太平洋芸術祭にパラオ代表団とともに参加し、貴重な映像資料を記録した。さらに、パンフレットを作成するなど、パラオ女性代表の活動に積極的に参与した。 また本年度は、研究会を4回開催して議論を深めた。研究協力者として、ソロモン諸島の宗教研究を行っている石森大知氏(武蔵大学)を招き、宗教的マイノリティであるバハイ教の実態について報告してもらった。さらに、アボリジニ研究者の栗田律子氏(広島大学)ならびにニュージーランド・マオリ研究者の深山直子氏(東京経済大学)を招き、先住民マイノリティに関する比較考察可能な情報を提供してもらった。年度末には京都および東京において、分担者による調査報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・研究分担者は、それぞれ海外フィールドワークを遂行し、一次資料の収集・蓄積に努めた。平成24年度末には、分析のための準備を進めつつある段階である。また、平成24年度中に研究会を4回開催し、参加者の意見交換を深めることができた。ソロモン諸島の宗教マイノリティ、オーストラリア・アボリジニ、ニュージーランド・マオリの研究者を招聘して比較対象事例を紹介してもらい、考察の深化に役立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者ならびに各研究分担者は、引き続き海外フィールドワークを軸としながら、必要に応じて国内外において文献収集を進め、分析・考察のために、質の高い資料の蓄積に努める。また、新たにニュージーランド・マオリの研究を続けてきた深山を研究分担者に迎え入れる。深山は、これまで文献や文字資料の分析によって、マオリの法的位置づけや土地・資源に関する交渉の歴史的経緯を考察してきた。今後、文献収集のみならず、都市居住マオリの生活実態に関する実地調査を行い、一次資料の蓄積に努める。先住民マイノリティとして「可視的存在」といえるマオリを対象に加えることで、議論の深化を目指す。一方、研究代表者は、ややもすると拡散しがちな個別研究の視点を統合し、議論の方向性を収束させるべく、理論的研究を進展させる必要がある。また、諸資料を整理するために研究補助者を雇用する。加えて、今後も積極的に研究会を開催して個別研究の視点を高度化し、共同研究としての質を高めるよう試みる。
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Research Products
(23 results)