2013 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋島嶼部におけるマイノリティと主流社会の共存に関する人類学的研究
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23251021
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70323219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 栄二郎 島根大学, 法文学部, 准教授 (10533284)
飯高 伸五 高知県立大学, 文化学部, 講師 (10612567)
桑原 牧子 金城学院大学, 文学部, 准教授 (20454332)
倉田 誠 近大姫路大学, 看護学部, 講師 (30585344)
安井 眞奈美 天理大学, 文学部, 教授 (40309513)
市川 哲 立教大学, 観光学部, 助教 (40435540)
丹羽 典生 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60510146)
柄木田 康之 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (80204650)
深山 直子 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (90588451)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文化人類学 / マイノリティ / 共存 / エスニシティ / 移民 / ジェンダー / 障害者 / 太平洋島嶼部 |
Research Abstract |
本研究は、太平洋島嶼部における多様なマイノリティと主流社会との共存関係を追究し、特徴を明確化したうえで、理論的に考察することを目的とする。ポリネシア、ミクロネシア、メラネシアの広範な地域を横断して集中的に実地調査を行い、民族誌資料を蓄積して分析し、議論を重ねていく。 本年度は、資料収集に加えて、研究会を積極的に開催した。風間は、フィジーにおけるキリバス系移民集住地区をとりあげ、エスニシティの混淆した状況を報告した。丹羽は、20世紀初頭、フィジーに渡航した日本人移民の記録を収集した。壊血病に倒れて定着に失敗したという記録の発掘を試みた。桑原は、フランス人夫妻がタヒチ人を養取する事例を収集し、文化的差異により生じる養子縁組の問題点を浮き彫りにした。倉田は、サモアで新たに障害者が発見されていく過程を明らかにし、障害者の能力概念が焦点化され、新たな生の統治が生じる事例を示した。市川は、フィジーに移住した華人の実態を明らかにし、ニューギニア華人との比較を試みた。柄木田は、ヤップ離島民が主島の交易相手との関係を利用しながらも、エスニック団体と巧妙に使いわける様態を示した。安井は、パラオ女性会議の焦点が、伝統的シューカンの再定義から性暴力禁止等の普遍的人権へと移行した点に着目し、女性の地位を再考した。飯高は、パラオ・沖縄県人の子孫間交流が、慰霊祭を契機に存続する事例を紹介した。また、ゲストスピーカーを招き、東アフリカ牧畜社会の紛争(佐川徹)、ケニアの障害者(吉田優貴)、ニューギニア高地の紛争(深川宏樹)、カンボジア少数民族(山崎寿美子)の事例と比較検討を行った。 さらに、京都人類学研究会との共催では、風間がバナバ人の事例を報告した。日本オセアニア学会関西地区例会との共催では、分担者の柄木田と深山がコメンテーターとして意見を述べた。公開開催のため、多くの参加者に研究成果の一部を報告できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度もまた、研究代表者・分担者は、それぞれ国内外における実地調査を遂行し、一次資料の収集・蓄積を行うことができた。また、本年度は、研究会を6回開催した。研究代表者・分担者が相互批評して議論を繰り返すことにより、多様な研究対象を扱いながらも、全体の理論的方向性が定まりつつある状況となっている。また、他地域の研究者を招いた研究会において事例報告を聞くことにより、太平洋島嶼部の地域的特性を浮かび上がらせることができた。同時に、太平洋島嶼部を越えた共通性を探る可能性が見えてきた。 さらに、京都人類学研究会、日本オセアニア学会関西地区例会と共催することにより、他地域を専門とする文化人類学者や大学院生等に対して、研究内容の一端を開示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度であるため、研究代表者・分担者のそれぞれが、これまで蓄積してきた資料を見直したうえで、分析・考察を行う。年度末までに、最終的な成果論文の執筆に着手することを目標とする。 まず、国内外での実地調査の継続によって、これまでに得られなかった重要な一次資料の収集を重点的に行い、蓄積資料を総合的にまとめる。さらに、文化人類学はもとより、社会学・心理学・現代思想等、諸分野の研究を咀嚼して、理論的検討を進めていく。秋季までに理論的方向づけのための研究会を開催し、年度報告会を冬季に複数回開催する。参加者は、相互批判を受けて自らの議論を適宜修正し、各自、成果論文の執筆に取り掛かる。
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Research Products
(24 results)